鶏肉も長ネギも使っていない!? ユニークすぎる「室蘭やきとり」(北海道室蘭市)
室蘭やきとりは、1933年ごろに室蘭の輪西の屋台ではじまったといわれています。以来90年以上にわたり、室蘭で働く人たちを支える食文化として発展。人口に対するやきとり屋の店舗数は日本一という声もあるほどです。
室蘭やきとりの特徴は、なんと鶏肉を使わないこと! 驚愕ですよね。室蘭やきとりといえば、「豚肉」と「玉ネギ」の組み合わせなのです。
昭和初期までは、屋台で豚のモツや野鳥などの串焼きが多く食べられていたそうですが、徐々に鶏肉よりも安く手に入る豚肉が「やきとり」と呼ばれるようになったとか。
また、なぜ玉ネギ? と思いますよね。北海道は玉ネギの産地であるため、長ネギよりも安価で手に入り、豚肉と好相性なため、玉ネギが定着していったそうです。
さらにユニークなのが、室蘭ならではの「洋からし文化」がやきとりにも定着している点。やきとりに洋からしをつけて食べるのです。トンカツやおでんにも洋からしをつけるとか! なお、一般的におでんに添えるのは、和からしです。
そんな室蘭やきとりの元祖といわれるのが1937年に輪西町で店を構えた「鳥よし」。室蘭へ行く機会があったら、訪れたいお店です。
そのほかにも、秘伝のタレを使った老舗店や、独自の味を追求したお店などが点在しています。時間とおなかが許す限り、食べ歩きを楽しむのも良さそうですね。
ただしオーダーする際、鶏肉ではなく、豚肉の「やきとり」であることを忘れないようにしたいですね。
約50年前に考案された! 鉄板で焼き、串に刺さない「今治やきとり」(愛媛県今治市)
約50年前に、商売人が多く、せっかちで待つことが嫌いな気質といわれる、今治の人々を満足させるために考案されたのが、今治やきとりとされています。
今治やきとりは、一般的によく見られる「串付き肉を網の上で焼く」という方法ではなく、「鶏肉や野菜を鉄板の上で焼く」というものです。串に刺さない点も特徴的。
鉄板で焼くことで、鶏肉から出る脂で揚げられ、さらにコテで押さえることで蒸されて、火が早く通り、スピーディーな提供が叶うのです。
熱々の鉄板の上から、大きな鉄のコテで鶏肉を押さえて、ジュージューと焼くさまは豪快! 特に個性的なのは「皮焼き」。鶏皮のみを焼くお店もあれば、少し肉を残して焼くお店もあるそうです。そのため、お店によって食感や味が異なります。
さらにタレにも各お店独自のこだわりが。トロッとした甘辛しょうゆタレのほか、おろしタレやからしタレなどバリエーション豊富です。
なお、「皮焼き」に始まり、「せんざんき」で終わるのが、今治やきとり通の食べ方なのだとか。せんざんきは今治市の郷土料理で、下味をつけた唐揚げのことです。
今治市内には、やきとり店が約70店舗あります。店舗数だけ見ると多いのか少ないのかわからないかもしれませんが、人口あたりのやきとり店舗数はかなり多いといえるでしょう。かつては100店舗ほど、やきとり店があったそうです。
ぜひ鉄板でやきとりが焼かれる様子を眺めたあと、「早い・うまい・安い!」と評判の今治やきとりを堪能してみてくださいね。
豚のカシラ肉を炭火で焼き上げ、みそだれをつけて食べる「やきとり」(埼玉県東松山市)
戦後すぐに、これまであまり使われていなかった豚の「カシラ肉(豚のこめかみから頬にかけての肉)」を何とか活用できないかと考えた結果、誕生したのが東松山の「やきとり」です。やきとり店「大松屋」の初代が唐辛子入りのみそだれと焼いたかしら肉を合わせた「やきとり」を提供したところ、それが広まったといわれています。
東松山のやきとりの特徴は、豚のカシラ肉を炭火でじっくり焼き、辛味の効いた「みそだれ」をつけて食べること。やきとりにも塩味がついていますが、好みでつけられる「みそだれ」が味の決め手になっているのです。
みそだれは、白みそをベースに、唐辛子やニンニク、ごま油、みりんのほか、果物など10種類以上のスパイスをブレンドしてつくられるのが一般的。各店舗独自のこだわりの味があり、やきとりの食べ歩きも楽しいです。
炭火でじっくり焼かれたカシラ肉は、噛めば噛むほど味わい深く、一緒に串刺しされたネギと相性抜群。
また、東松山のやきとり店には以下の心得なるものが!
- 東松山のやきとり店の心得
- 味噌だれは直接塗るべし
- 串から外して食べるな。串についたまま食べよ
- 大騒ぎはするな
東松山市には、東武東上線「東松山駅」を中心に、約50軒のやきとりを食べられるお店があります。多くのお店が午後5時ごろに開店。テイクアウト専門のお店もありますよ。
こちらの「やきとりMAP」を参考に気になるお店を訪れてみてくださいね。
日本三大やきとりの街に選ばれた理由とは?
日本三大やきとりの街は誰が決めたのかわかっていません。しかし、いずれのやきとりも独自の調理法や食べ方、味つけがありインパクト大! そして、鶏肉を使っているのは「今治やきとり」のみで、「室蘭やきとり」と東松山市の「やきとり」は豚肉を使用している点も面白いですよね。
[参考]
農林水産省
おっと!むろらん|室蘭観光協会
今治市
東松山市
一般社団法人東松山市観光協会
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