日光東照宮の神厩舎に掘られていることで有名な「見ざる聞かざる言わざる(見ざる言わざる聞かざる)」の三猿。
しかし、実は三猿のストーリー、8面にわたって掘られていることをご存知でしたでしょうか? 筆者は、数年前に訪れた日光東照宮にて、神厩舎の前にある説明書きで初めて知りました。母親が小猿の将来を見ている1面からスタートし、ラストは、成長した猿が母親になる、そしてまた一面にもどる。
そう、三猿とは、猿の一生を描きながら人の生き方を説いたものなのです。
1面 赤子の時期
母猿が手をかざして子猿の将来をみています。幼いころ小猿たちは、「悪いものは見ない聞かない言わない」と母猿から教えられます。母猿の願いを感じます。
2面 幼少期
3匹の猿が耳、口、目をふさいでいます。これが有名な見ざる聞かざる言わざるですね。好奇心旺盛な小猿たちですが、教わった通り、悪いものにはふれず良いことを受け入れて素直に育ってゆこうという幼少期。
3面 青年期
座っている猿の姿。独り立ちをしようと考えている猿がいます。考え事をしながら遠くの未来をみているような姿勢です。
4面 大人の時期
天を仰ぐ猿と青雲。立派な大人になろうとする心を描いているようです。右端に掘られた青い雲が「青雲の志」を暗示しているのだとか。
5面 大人の時期
下を向いている猿と、励ましている猿がいます。挫折を味わう猿、そしてそれを励ます猿を意味しているのだとか。苦しいときにはいつも誰かがそばにいるよというメッセージが聞こえてきそう。
6面 大人の時期
恋に悩み、物思いにふけっている猿の姿が描かれています。好きな気持ちが大きいほど恋は悩みます。それはきっとその人を大事に思う気持ちが大きいから。また、恋をすることによって、相手を思いやる心などを学びます。恋は成長を与えてくれます。
7面 大人の時期
手を差し伸べる猿と、荒波に見える波に乗っている猿。これは結婚した猿を描いているようです。女性に見える猿が荒波に乗っているように見えるのですが、これは、二人でこれから一生続く荒波も乗り越えなさいという教訓でしょうか。生涯のパートナーを得ることは、相手の苦難も一緒に受け止めましょうということですものね。
8面 大人の時期
物語の最後はおなかの大きな猿で締めくくられています。そして、ここからまた1面に戻るという流れです。
未来を夢見る青年期、そこには何も不安なんてなかったことを思い出しました。自分で決めて、選んだ人生、しかしいつか挫折に悩む大人の時期がやってきます。もうだめかな? とうつむき落ち込んでいるとき、助けてくれるのはいつも大事な友達や家族。やがて恋をして、一生涯の荒波をともに生きようと思う相手が現れる・・・。
人生の大きな流れは母親のお腹の中からはじまり、そしてまた、次の命をつないでゆくというものなのだなと感じました。三猿の壮大なストーリー、ぜひ触れにいってみてください。
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