荘厳にして広大、見応えある世界遺産「日光東照宮」
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誰もが知る歴史上の人物、徳川家康公を御祭神におまつりした神社である、日光東照宮。創建は1617年ですが、現在の社殿群は、そのほとんどが1636年に建て替えられたものです。
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パワースポットと言われるのも納得、突き抜けるように伸びる参道は、大きな石鳥居に向かって歩くだけでも清々しい気持ちになるほど、いい気が流れているように感じられます。
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これらの社殿群は1999年12月、「世界文化遺産」に登録されました。日光東照宮というと、極彩色の華やかなデザインや緻密な彫刻が印象的ですが、これらは単なるデザインではなく、信仰形態や学問・思想が表現されています。
【見どころ1】重要文化財「五重塔」は将軍三人の干支に注目!
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石鳥居をくぐってまず目に飛び込んでくるのは、左手にそびえる重要文化財の五重塔。多くの人がシャッターを切らずにはいられない存在感を放っています。
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五重塔を見上げるだけでなく、注目したいのはぐるりと彫られた十二支の動物。正面から見ると、左から龍、うさぎ、虎が並んでいるのがわかると思います。それぞれ初代将軍の家康(寅)、2代将軍の秀忠(卯)、3代将軍の家光(辰)の生まれ年の干支だとされているそうですよ。
【見どころ2】重要文化財「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿だけじゃない、実は猿は16匹
東照宮一有名なスポットといえば、「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿を思い浮かべる人もいるでしょう。しかし三猿は、実はご神馬をつなぐ厩(うまや)に彫られた彫刻で、8面に16匹いるって知っていましたか?
昔から猿が馬を守るとされているところから、こんな感じでいろんなポーズの猿が彫られているんです。猿たちにはそれぞれ、人間の一生が風刺されています。どんな人生の教訓がこめられているかは、「見ざる聞かざる言わざるでおなじみの三猿から学ぶ、知っておきたい人生の教え」をご覧あれ。
【見どころ3】国宝「陽明門」に「魔除けの逆さ柱」を探せ!
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日本を代表する最も美しい門のひとつ、陽明門。いつまで見ていても見飽きないところから「日暮の門」ともよばれています。
故事逸話や子どもの遊び、聖人賢人など508体の彫刻がほどこされ、本当に、ついつい細部まで見入ってしまいます。
門をくぐるときはぜひ天井にも注目!眼光鋭い、迫力ある龍が描かれていて、一見の価値ありです。
「魔除けの逆さ柱」もぜひ探してみてください。陽明門、実は柱のうちの1本が、逆さになっているんだそう。これは間違えてそうなったわけではなく、「物事は完璧であるとかえって魔が差す」との考えからわざとそうしたのだとか。見つけるコツは、地紋の向き。大きく彫られた植物や動物のデザインだけを見ていると、わからないのでご注意を。
【見どころ4】国宝「唐門」は寄木細工の彫刻が渋い
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小ぶりの門ですが、斬新な構造や手法がギュッと詰まった唐門。屋根は四方唐破風造り、門全体が胡粉(ごふん)で白く塗られ、柱や扉は東南アジアから輸入した寄木細工、台輪の上の彫刻は一本の木のくり彫り。御目見得(おめみえ:将軍に拝謁できる身分)以上の幕臣や大名のみこの門から昇殿できたそうです。
柱には唐木の寄木細工で昇龍・降龍の彫刻があります。この白い胡粉地に渋い木肌をいかした龍の彫刻、というところにノックダウン。極彩色の豪華絢爛な意匠も良いですが、神聖な場所ヘの入り口はあえてこの渋さ、というその美的感覚に心揺さぶられました。
【見どころ5】国宝「眠り猫」が小さすぎる
左甚五郎作と伝えられる、眠り猫。三猿と並んで日光東照宮の人気者です。牡丹の花に囲まれ日の光を浴び、うたたねをしているところから「日光」に因んで彫られたともいわれています。しかし、この眠り猫・・・
小さいんです!すごく!
そういえば小学校の卒業式の呼びかけで、「左甚五郎の眠り猫は、びっくりするほど小さかったです」と遠足の思い出を語ったことを思い出します。
この眠り猫のいる東廻廊の奥の坂下門も、小ぶりながら美しい門ですので、ぜひお見逃しなく。
慎ましい美しさの坂下門
ここから石段を207段のぼると、家康公の墓所がある奥宮です。
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この石段、マスクをしたままのぼるのは結構きつい・・・。途中、「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し 急ぐべからず」と看板があり、「たしかに」と納得して歩調を緩めました。回り道を楽しめる人生を生きたいものです。
【見どころ6】重要文化財【奥宮】、樹齢600年の叶杉も
御祭神徳川家康公の墓所。拝殿・鋳抜門(いぬきもん)・御宝塔があり、いずれも落ち着いた風情を醸し出しています。写真右手の御神木が、願い事をほこらに向かって唱えると叶うといわれている「叶杉」。叶杉の御霊わけとして叶鈴守も1体800円で授与されています。
眠り猫のお守りも、こちらで取り扱っています。
●眠猫守 開運招福 初穂料800円
【見どころ7】本地堂で鳴竜の声を聴く
堂内撮影禁止なので写真はありませんが、靴を脱いで本地堂に入り、数人のグループごとに鳴竜の天井画を見学できます。説明をしてくれる人が竜の下で拍子木を鳴らすと、鈴を鳴らすような反響音を聴くことができます。少しでも拍子木を鳴らす位置をずらすと、反響音は聴こえません。不思議ですね。
【見どころ8】御朱印は何種類ある?
現在は、コロナ対策として御朱印帳の預かりは中止。書き置きの紙朱印を初穂料500円で渡してもらえます。御朱印帳は記帳込みで2500円です。
ちなみに、こちらの御朱印のほか、世界遺産登録20周年記念御朱印、日光東照宮奥宮御朱印、本地堂(薬師堂)御朱印などもございます。
【見どころ9】権威の象徴!徳川家康の「家紋」
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家康の家紋は水戸黄門でおなじみの「三つ葉葵」。この「三つ葉葵」紋が、東照宮では意匠としてあちこちで見られます。
葵の紋は江戸時代を通じて朝廷(天皇)の紋章(菊、桐)をしのぎ、絶大なる権威の象徴として怖れられた。このため無断使用どころか、粗末に扱うことすら戒められ、数々の禁令(法律)が発せられている。理由なく葵の紋を使用した者が、厳罰に処せられた事例もある。
「大御所四百年祭記念 家康公を学ぶ」より引用
それほどの権威であった「三つ葉葵」が惜しげもなく意匠として使われている、そう思うとちょっと、贅沢な景観に思えてきてしまうのです。
【見どころ10】自分好みの意匠を見つける
意匠といえば、東照宮には、植物や動物、人々の様子など、美しく個性的なモチーフが溢れていて、自分好みのものを見つけるのもまた旅の楽しみ。
ここに挙げたのは、ほんの一例。あなただけのお気に入りを、ぜひカメラと心に刻んでください。
一日では見尽くせない、世界遺産「日光の社寺」
今回、改めて日光東照宮を見学し、その荘厳さと広大さ、見どころの多さに驚かされました。小学校の遠足で訪れたのときには気づかなかった奥深い魅力。極彩色の華やかさや、数々の動物の意匠の愛らしさだけでなく、あるところは燻銀のような渋さを放ち、あるところは苔むした静寂を醸し出しています。
何度訪れても、そのときどきの人生を映し出すような時間を過ごせるような気がしました。
さらに世界遺産「日光の社寺」には、日光山輪王寺、日光二荒山神社などもあり、奥日光には日光山中禅寺(立木観音)や日光二荒山神社 中宮祠などもあります。いつかまたゆっくりとこの地を訪れ、社寺を線でつなぐような旅をしてみたいと思うのでした。
そして、これからも人生に、旅心を。
参考「大御所四百年祭記念 家康公を学ぶ」
住所:栃木県日光市山内2301
電話:0288-54-0560(日光東照宮社務所)
拝観時間:4月1日~10月31日 9:00〜17:00、11月1日~3月31日 9:00〜16:00
※各期間とも受付は閉門30分前に終了。15:30以降の奥宮参拝は不可。
拝観料:東照宮拝観料 大人1,600円 小中学生550円 東照宮・宝物館セット券 大人2,400円 小中学生870円
音声ガイド500円(日本語 大人用/子供用・英語・中国語対応)
陽明門、三猿、本地堂(鳴龍)、眠猫、奥宮(家康公の墓所)、御本社(拝殿・石の間)などすべての拝観が含まれています。
※祭典・諸行事や修理工事等により一部拝観の制限される場合がありますので、事前にお問合せ願います。
東照宮大駐車場:普通車600円(1日に1台、1回分)
※普通車200台駐車可。
https://www.toshogu.jp
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