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「まち」か「チョウ」か?町の読み方の傾向がわかる【日本東西・文化対決】

Posted by: 坂本正敬
掲載日: Aug 26th, 2022.

東西南北に国土が広がる日本では、西日本と東日本とで生活習慣や文化などが異なることもよく注目されますよね。日本各地を旅したとき、それぞれの地域で違う常識を知ることも、旅の楽しみのひとつではないでしょうか? そこで今回は、東西で傾向が異なる「町」の読み方について研究してみました。

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東京・大手町
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「まち」と「チョウ」には東西で傾向に違い

東京・歌舞伎町
Richie Chan / Shutterstock.com

いきなりですが、「町」を何と読みますか? 単体で読む場合は「まち」になると思いますが、地名として読む場合はどうでしょうか。

もともと「町」という漢字は、「T字型になった田のあぜ道」を意味すると漢字辞典に書かれています。まちの中の通路も「町」と書いたので、まちの意味が生まれたようですね。

しかし、この「町」という漢字、音読みでは「チョウ」とも読みます。中国語では「ting/ding」と発音するからでしょうか。漢字辞典には「テイ」という音読みも掲載されています。

ならば、この「町」を地名として使うとき、可能性としては読み方が複数生まれる形になります。

例えば、東京の「永田町」を「ながたちょう」と読むのに、大手町は「おおてまち」と読むように、可能性は2つになります。

弥生時代の呼び名となった、弥生式土器の出土地点(東京都文京区弥生)は、かつては「向ヶ丘弥生町」と言いました。この場合は「やよいちょう」です。しかし、JRの駅名として残っている東京都台東区の御徒町は「おかちまち」です。

どっちの読み方をすればいいのか、旅行者からすれば迷ってしまいますよね。

しかし、この「まち」「チョウ」問題も、あるレベルにおいては一定のルールがあるようです。

字(あざ)ではなく、基礎自治体の町名に限って言えばの話ですが、「まち」と「チョウ」には東日本と西日本で傾向に違いが見られるのです。

東日本は「まち」、西日本は「チョウ」

富山県・朝日町
富山県・朝日町(あさひまち)の様子

この「チョウ」と「まち」の違いについて、東海テレビと中日新聞が素晴らしい調査をしています。全国にある基礎自治体としての743の町名を、「まち」と読むか「チョウ」と読むか、片っ端から調べて整理したコンテンツが公開されているのです。

その結果を大まかに言えば、東日本は「まち」、西日本は「チョウ」の傾向がはっきりと見られます。

特に、東日本の1都3県と北関東、北陸の富山県と新潟県、南東北の福島県は全町名が「まち」で統一されていて、岩手県を除く東北も「まち」が優勢だとわかります。

一方、西日本の2府5県を中心に、北陸の福井県、岐阜県・愛知県・三重件の東海地方、島根県を除く中国地方、四国全域は全町が「チョウ」で統一されています。島根県も「チョウ」が優勢です。

要するに、東日本と西日本で「まち」と「チョウ」に違いがあるのですね。

地元の慣用に従う

高知県・四万十町
高知県・四万十町(しまんとちょう)の様子

「まち」と「チョウ」の東西文化圏の境界線については、石川県・長野県・静岡県が該当します。これらの自治体では「まち」と「チョウ」が混在し、日本の両端である北海道・九州もきれいには分かれていません。

地方自治法によると、

<地方公共団体の名称は、従来の名称による>(地方自治法第3条より引用)

と決められています。その「従来の名称」については、地元の慣用に従う(地元の習慣的な使い方に従う)形で決められてきたと、楠原佑介・責任編集『市町村名変遷辞典』(東京堂出版)に書かれているそうです。

さらに、石川県(本来「まち」が優勢な土地)の能登町(のとちょう)が、能都町(のとまち)・内浦町(うちうらまち)・柳田村の合併でできたように、市町村合併時の事情によって、慣用とは異なる名称が生まれるケースもあるようです。

上の石川県の場合、合併後が「能登町(のとまち)」だと合併前の「能都町(のとまち)」と混同してしまうとの意見が出たからですね。

ただ、こうした例外はあるものの、東日本、特に関東圏では「まち」で読み、西日本、特に近畿圏では「チョウ」読みをすれば、基礎自治体の名称については、基本的に外さないで済む状態になっています。

全国を旅する時、「まち」「チョウ」の読み方に行く先々で注目すると、旅の楽しみがまた増えそうですね。

[参考]
“町”は「まち」か「ちょう」か…調査して分かった東日本・西日本での傾向 境界線らしき川が長野にあった – 東海テレビ
<ユースク> 【町】読み方は「ちょう」「まち」どっち? – 中日新聞
地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号) – e-Gov
町の紹介 – 能登町
都道府県別市町村数(令和3年1月1日現在) 

[All photos by Shutterstock.com]

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坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。


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