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「まち」と「チョウ」には東西で傾向に違い
Richie Chan / Shutterstock.com
いきなりですが、「町」を何と読みますか? 単体で読む場合は「まち」になると思いますが、地名として読む場合はどうでしょうか。
もともと「町」という漢字は、「T字型になった田のあぜ道」を意味すると漢字辞典に書かれています。まちの中の通路も「町」と書いたので、まちの意味が生まれたようですね。
しかし、この「町」という漢字、音読みでは「チョウ」とも読みます。中国語では「ting/ding」と発音するからでしょうか。漢字辞典には「テイ」という音読みも掲載されています。
ならば、この「町」を地名として使うとき、可能性としては読み方が複数生まれる形になります。
例えば、東京の「永田町」を「ながたちょう」と読むのに、大手町は「おおてまち」と読むように、可能性は2つになります。
弥生時代の呼び名となった、弥生式土器の出土地点(東京都文京区弥生)は、かつては「向ヶ丘弥生町」と言いました。この場合は「やよいちょう」です。しかし、JRの駅名として残っている東京都台東区の御徒町は「おかちまち」です。
どっちの読み方をすればいいのか、旅行者からすれば迷ってしまいますよね。
しかし、この「まち」「チョウ」問題も、あるレベルにおいては一定のルールがあるようです。
字(あざ)ではなく、基礎自治体の町名に限って言えばの話ですが、「まち」と「チョウ」には東日本と西日本で傾向に違いが見られる のです。
東日本は「まち」、西日本は「チョウ」
富山県・朝日町(あさひまち)の様子
この「チョウ」と「まち」の違いについて、東海テレビと中日新聞が素晴らしい調査をしています。全国にある基礎自治体としての743の町名を、「まち」と読むか「チョウ」と読むか、片っ端から調べて整理したコンテンツが公開されているのです。
その結果を大まかに言えば、東日本は「まち」、西日本は「チョウ」の傾向 がはっきりと見られます。
特に、東日本の1都3県と北関東、北陸の富山県と新潟県、南東北の福島県は全町名が「まち」で統一されていて、岩手県を除く東北も「まち」が優勢だとわかります。
一方、西日本の2府5県を中心に、北陸の福井県、岐阜県・愛知県・三重件の東海地方、島根県を除く中国地方、四国全域は全町が「チョウ」で統一されています。島根県も「チョウ」が優勢です。
要するに、東日本と西日本で「まち」と「チョウ」に違いがあるのですね。
地元の慣用に従う
高知県・四万十町(しまんとちょう)の様子
「まち」と「チョウ」の東西文化圏の境界線については、石川県・長野県・静岡県が該当します。これらの自治体では「まち」と「チョウ」が混在し、日本の両端である北海道・九州もきれいには分かれていません。
地方自治法によると、
<地方公共団体の名称は、従来の名称による> (地方自治法第3条より引用)
と決められています。その「従来の名称」については、地元の慣用に従う(地元の習慣的な使い方に従う)形で決められてきたと、楠原佑介・責任編集『市町村名変遷辞典』(東京堂出版)に書かれているそうです。
さらに、石川県(本来「まち」が優勢な土地)の能登町(のとちょう)が、能都町(のとまち)・内浦町(うちうらまち)・柳田村の合併でできたように、市町村合併時の事情によって、慣用とは異なる名称が生まれるケースもあるようです。
上の石川県の場合、合併後が「能登町(のとまち)」だと合併前の「能都町(のとまち)」と混同してしまうとの意見が出たからですね。
ただ、こうした例外はあるものの、東日本、特に関東圏では「まち」で読み、西日本、特に近畿圏では「チョウ」読みをすれば、基礎自治体の名称については、基本的に外さないで済む状態になっています。
全国を旅する時、「まち」「チョウ」の読み方に行く先々で注目すると、旅の楽しみがまた増えそうですね。
[参考]
※ “町”は「まち」か「ちょう」か…調査して分かった東日本・西日本での傾向 境界線らしき川が長野にあった – 東海テレビ ※ <ユースク> 【町】読み方は「ちょう」「まち」どっち? – 中日新聞 ※ 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号) – e-Gov ※ 町の紹介 – 能登町 ※ 都道府県別市町村数(令和3年1月1日現在)
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Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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