世界で最も高い場所にある自然のトンネル
「中国の仙境」とも言われる張家界市をご存じですか?
張家界市とは、中国中部にある湖南省の北西にあります。武陵山脈を南に背負う形で40以上の少数民族が住む張家界市の管轄区には、武陵山脈以外にも険しい峰が幾つもあり、その一帯をまとめて「張家界」と俗称で呼んでいます。
たび重なる地殻変動と、風化に対して強い鉱物(石英)の存在で「天下の奇山」と称される景観が「張家界」には広がっており、1990年以前は、中国で最も貧しい地域の1つだったのにもかかわらず、観光地としてブレイクしました。
例えば、中国初の国立森林公園に指定され、世界自然遺産にも登録される武陵源風景区が、張家界市の中心部を挟んだ武陵山脈の向かいにあります。映画『アバター』の撮影地にもなりました。
一方で、張家界市のまち中にも近い武陵山脈の北縁には天門山もあり、山の中腹には天門洞というトンネルもあります。
世界で最も高い場所にあるその天然トンネルが今回の主題で、高さ約131m、幅約57mの「穴」が海抜1,524mの地点にあり、その穴を目指して世界中から観光客や冒険家が集まっているのですね。
数十人のウイングスーツジャンパーが死亡
通天大道
過去、その天門洞を目指して、さまざまな冒険家・アスリートが多種多様なアプローチを試みてきました。
例えば、天門洞に続く999段の階段を自動車で上ったプロドライバーも居ますし、天門洞に至るまで99回のカーブを描くつづら折りの長大な坂道(通天大道)で自転車ロードレースも開催されています。
エクストリームスポーツのイベントでは、ウイングスーツで機上からジャンプし、天門洞を通過する飛行チャレンジも行われています。
しかし、年間8000万人近くがコロナ禍前は訪れるくらい「張家界」がメジャーになり、エクストリームスポーツの挑戦者の数が多くなるだけ、事故の数も増えました。
AFP通信(フランス)によると、2016年(平成28年)の1年だけで、数十人のウイングスーツジャンパーが「張家界」で死亡したと報じられています。
アメリカの旅行媒体『TRAVEL+LEISURE』によると、もともと天門洞はトンネルではなく洞窟(どうくつ)だったみたいです。
しかし、洞窟の行き止まりだった側の斜面が崩壊し、奥行き60mのトンネルになったみたいです。その偶然生まれた景観が、命がけの挑戦者を世界中から引き寄せているのですね。
「天下一の壮観」
そもそも天門洞は、張家界市のまち中にある天門山ロープウエイからアクセスします。
始発駅「シティガーデン」から交通手段は3種類あって、
- 行きはロープウエイ→帰りはバス
- 行きはバス→帰りはロープウエイ
- 行きも帰りもバス
この中から旅行者が1つを選択する、あるいは(混雑時には)運営サイドが割り振りを行います。
1番では、ロープウエイで天門洞のさらに上にある台地の終着駅「スカイガーデン」まで上がります。そこから散策路に入り、長いエレベーターを降りて、天門洞を目指します。
天門洞からは、歩きづらい999段の階段を下りて(エレベーターにも別途追加料金で乗れる)、99回のカーブを描く坂道(通天大道)を通り、まち中までバスで下山します。
2番では、つづら折りの坂道をバスで上り、天門洞の下の階段まで行きます。999段を上って天門洞を楽しんだら、エレベーターでさらに上へ行き、台地を散策した後に「スカイガーデン」からロープウエイで下山します。
3番は、天門洞までバスで行き、バスで帰るルートですね。
いずれの場合も、かなりの距離を移動する上に、人気の観光地なので数時間単位の待ち時間が発生します。
しかし、「天下一の壮観」などの言葉どおりの絶景が楽しめるため、極めて高く国内外で評価されています。
広州・上海・南京・北京などの大都市から張家界空港へのフライトもあります。いつかの中国旅行ではぜひ訪れたい絶景ですね。
Sumeth anu / Shutterstock.com
[参考]
※ There’s an Actual Stairway to Heaven — With 999 Steps — in China – TRAVEL;LEISURE
※ Wulingyuan Scenic and Historic Interest Area – unesco
※ 偏偏喜歡你|張家界:想你時你在天邊,想你時你在眼前 – 香港商報
※ ハンガリーのスカイフライング選手が張家界天門山で墜落 – China Internet Information Center
※ 中国・天門山でウイングスーツジャンプ、カナダ人男性死亡 – AFP
※ 自転車ロードレースで選手が崖から転落して死亡―中国 – exite.ニュース
※ 999段の階段を駆けあがる!! 「レンジローバー スポーツ」のクレイジーな挑戦 – グーネットマガジン
※ 【張家界現地レポート】国内有数の景勝地、観光回復が進んでいる理由とは – Travel vision