Photo:YAMAGUCHI,Atsushi
世界の作曲家16人の作品を初演『松下 耕と世界 今を生きる作曲家の群像』
<松下 耕氏>Photo:YAMAGUCHI,Atsushi
合唱音楽の第一人者として、世界で活躍する松下 耕氏。彼の作曲した作品は世界でも広く演奏されています。今回、松下氏の還暦を祝い、世界で活躍中の作曲家16名が12の国や地域から集結。信仰・希望・愛・友情をテーマとした16の新たな合唱曲を作曲しました。
その初演となる演奏会『松下 耕と世界 今を生きる作曲家の群像』が、2022年10月14日(金)に開催。
演奏会では、松下氏が音楽監督を務める合唱集団「THE MET」を構成する6つの合唱団、「東京メトロポリタン合唱団(混声)」「メトロポリタン室内合唱団(混声)」「メトロポリタン声楽アンサンブル(混声)」「オルフェウス男声合唱団(男声)」「聖セシリア女声合唱団(女声)」「みなみ野キッズシンガーズ(児童)」が出演し、全曲松下氏が指揮を執り演奏されました。
多彩な歌声に魅了された第一部
Photo:YAMAGUCHI,Atsushi
【1】…de longinquo… 彼方より
作曲: György Orbán(ジェルジュ・オルバーン/ハンガリー)
東京メトロポリタン合唱団
【2】Tantum ergo 大いなる秘蹟
作曲: Ēriks Ešenvalds(エーリクス・エシェンヴァルズ/ラトビア)
東京メトロポリタン合唱団
【3】Lignum vitae 命の木
作曲: Rihards Dubra(リハルズ・ドゥブラ/ラトビア)
オルフェウス男声合唱団
【4】Fides, Spes, Amor, Amicitia 信仰、希望、愛、友情
作曲: John August Pamintuan(ジョン・オーガスト・パミントゥアン/フィリピン)
オルフェウス男声合唱団
【5】Four glances at the sky 空の4つのきらめき
I. Who has seen the wind?
だれが風をみたでしょう?
II. Eternity
えいえん
III. On a starlit night
ほしふるよるに
IV. O lux
幸いなる光
作曲: Vytautas Miškinis(ヴィタウタス・ミシュキニス/リトアニア)
みなみ野キッズシンガーズ
会場の東京オペラシティ コンサートホール タケミツ メモリアルは満員。プログラムは休憩を挟んで、第三部までとなっていました。
演奏会が始まると、第一部、最初の曲「…de longinquo…彼方より」の湧き上がるような歌声で、一気に音楽の世界に入り込めます。
無伴奏の作品「Tantum ergo 大いなる秘蹟」の、水に落とした絵の具のような声の広がりや、男性合唱曲「Lignum vitae 命の木」・「Fides, Spes, Amor, Amicitia 信仰、希望、愛、友情」の、静かに包み込むような優しい声など多彩な歌声が印象的でした。
組曲「Four glances at the sky 空の4つのきらめき」は、みなみ野キッズシンガーズによる演奏です。少年少女の透明感のある歌声は、この時期だけのもの。伸びやかな声に羨ましさすら感じます。
第二部は個性的な楽曲を満喫
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【6】Arise my love, my beautiful one 立て、恋人よ、美しいひとよ
作曲: Ambrož Čopi(アンブロジュ・チョピ/スロベニア)
メトロポリタン声楽アンサンブル
【7】Nativitas Mundi 宇宙の誕生
作曲: Urmas Sisask(ウルマス・シサスク/エストニア)
メトロポリタン声楽アンサンブル
【8】BATZUETAN 時には
作曲: Javier Busto(ハビエル・ブスト/バスク)
メトロポリタン室内合唱団
【9】Beati mundo corde 心の清い人々は、幸いである
作曲: Levente Gyöngyösi(レヴェンテ・ジェンジェシ/ハンガリー)
メトロポリタン室内合唱団
【10】Agnus Dei 神の子羊
作曲: Matteo Magistrali(マッテオ・マジストラーリ/イタリア)
メトロポリタン室内合唱団
第二部は個性的な作品が多く、合唱の可能性に衝撃を受けました。「Arise my love, my beautiful one 立て、恋人よ、美しいひとよ」では、静かに曲がはじまり、クライマックスに向けて体や手を叩くボディ・パーカッションと美しいソプラノ・ソロが! 身体全体を使った表現に惹き込まれます。
特に印象に残ったのは「Nativitas Mundi 宇宙の誕生」です。最初の銅鑼の音とともに、叫び声にも聞こえるような声。そのインパクトに、思わず目を見開いてしまいました。合唱でこんな驚きとワクワク感を感じることができるとは!
合唱の奥深さを感じた第三部
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【11】IGNIS CARITATIS 愛の火
作曲: Damijan Močnik(ダミヤン・モチュニク/スロベニア)
聖セシリア女声合唱団
【12】Psalmus XV 詩編第15番
作曲: Barna Szabó(バルナ・サボー/ハンガリー)
聖セシリア女声合唱団
【13】Every child has known God どの子も神を知っている
作曲: Ivo Antognini(イーヴォ・アントニーニ/スイス)
聖セシリア女声合唱団
【14】Aaronic Blessing アロンの祝祷
作曲: Paweł Łukaszewski(パヴェウ・ウカシェフスキ/ポーランド)
東京メトロポリタン合唱団
【15】A Mountain Spring 山の湧泉
作曲: Stephen Leek(スティーヴン・リーク/オーストラリア)
東京メトロポリタン合唱団
【16】Kyrie キリエ ミサ・ブレヴィス “クアトロ・ラガッツィ” -旅の日の天正遣欧少年使節 より
作曲:千原 英喜(ちはら ひでき/日本)
東京メトロポリタン合唱団
第三部も合唱の魅力を存分に感じることのできる作品が続きます。「Every child has known God どの子も神を知っている」では、優しい調べに気持ちがやわらかくなりました。この曲に出てくる神は、戒めることも、不思議な力を使うこともなく、”Come Dance with Me”という4つの言葉を、繰り返し口ずさみます。単純でありながら全ての人にも届くであろうこのフレーズは、心を安らかにしてくれました。
色々な声が重なり一つの曲にまとまっていくような「Mountain Spring 山の湧泉」。美しい山々や遠くの情景までもが目に浮かぶような演奏です。
コンサートを締めくくったのは日本を代表する作曲家、千原 英喜氏の作品「Kyrie キリエ ミサ・ブレヴィス “クアトロ・ラガッツィ” -旅の日の天正遣欧少年使節 より」。朗誦が組み込まれたこの曲は、まるで壮大なドラマを見ているかのようでした。
音楽は世界共通の言語
Photo:YAMAGUCHI,Atsushi
世界各国から届けられた新しい16曲の楽曲。音楽が世界の共通言語であることを感じることができました。声だけでこんなに豊かな音楽を表現できることにも脱帽! 松下氏はじめ、16人の作曲家、合唱集団「THE MET」の今後の活躍にも期待です。