
4つの宗教の聖地「カイラス山」の語源と神秘的な伝説

チベット自治区の南西部にある標高6,656mの「カイラス山」。南アジアに流れる大河、インダス川・サトレジ川・カルナリ川・ラフマプトラ川の源流はカイラス周辺です。
カイラスの語源は、インド人チベット学者サラト・チャンドラ・ダスによる、サンスクリットで水晶を意味する「ケーラーサ(kelāsa)」の発音がなまったという説がありますが、ほかにもいくつかの説があり、はっきりとはわかっていません。チベット人はカイラスを「カン・ リンポチェ(尊い雪山)」と呼ぶことが多いそうです。
また、4つの宗教によって聖地とされる理由は以下になります。
- チベット仏教・・・インドで成立した仏典に登場する雪山、宇宙の中心にある須弥山(しゅみせん)とみなされている
- ヒンドゥー教・・・シヴァとパールヴァティーが鎮坐する山、もしくはシヴァのエネルギーの象徴であるリンガとみなされている
- ジャイナ教・・・宗派を開いたひとりであるリッシャバが解脱を遂げ、涅槃に入った地
- ボン教・・・聖者トンパ・シェンラプが天界から降臨した地
そんなカイラス山には、11世紀に仏教修行者・吟遊詩人のミラレバが、ボン教僧と神通力を競い合い、登頂して勝利したという伝説が残っています。
時の流れが変わる!?カイラス山の不思議な噂

カイラス山には2つの湖があり、マーナサローワル湖は「生きている水の湖」と呼ばれ、悪天候でも湖面は荒れることがないほか、問題なくこの湖の水を飲むことができるそうです。癒やしと若返りの効果もあるとか。
一方のラークシャスタール湖は、「死んだ湖」もしくは「悪魔の湖」と呼ばれ、塩水で飲むことができず、常に湖面が波立っているそうです。そのため、巡礼者がこの場所を訪れることは禁止されているといいます。
上記の湖だけでも十分不思議に感じますが、下記の噂はややゾッとします。
カイラス山では、時折、時間の流れが異なり、まるで時間がスキップしたような感覚に陥ることがあるそうです。一部の巡礼者は、自身の髪の毛の伸び方から、カイラス山で過ごす12時間は丸2週間に相当すると気づいたとか。
そのほか、登っているはずが、いつの間にか下山していたりして、方向感覚が狂い、山を登ることができないというのです。
実際に1926年、登山家のヒュー・ラトレッジは北壁からの登頂を計画したが「まったく登ることができない」と判断。さらに1936年には、登山家・作家のヘルベルト・ティッヒーがカイラス山を登りましたが、山頂までたどり着けませんでした。
さらに下記のような噂も!
- カイラス山は人工物でピラミッドである
- カイラス山は7種類の光で空を何度も照らしている
- シベリア出身のクライマーのグループが、特定のポイントよりも先に到着したところ、急激に老化。そのグループの全員が1年後には死亡した
カイラスの巡礼路は訪れることができる

カイラス山には巡礼路があり、トレッキングができます。とはいえ、アクセスの悪さや、準備と高度順応に時間・お金がかかるのが難点。トレッキングのベストシーズンは、5月から9月にかけてです。
その時期に、ラサ〜獅泉河、獅泉河〜普蘭の間を往復するバスに乗車し、カイラス山の南の麓にある塔钦の村(海抜4,560m)へ。ここに滞在して、高度順応するのが一般的です。
また、国境通過証とチベット入境許可証の事前取得が必須。併せて、適切な服装や装備を用意したり、トレッキングに必要な食糧も準備しなければいけません。
カイラス山は、チベット仏教やヒンドゥー教、ジャイナ教、ボン教にとって重要な巡礼地。チベット仏教では、この巡礼路を108周した者は、即身成仏と見なされるそうです。中には五体投地をして巡礼するチベット人も! いったい、どれほどの気力と体力が必要なのでしょうか。想像するだけで圧倒されますよね。
カイラス山
阿里地区普兰县 邮政编码: 859512
[参考]
Anomalien.com
ダライ・ラマ法王日本代表部事務所
ニューズウィーク
Nepal Highland
中国旅行
「カイラスと伝説」津曲真一
[All photos by Shutterstock.com]

あなたが知りたかったことが、この記事で参考になりましたか?
Ayami ライター
都内在住のフリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。
【2月の祝日・連休・記念日一覧】今日は何の日?暦の上では春を迎えるけれど
Feb 1st, 2023 | TABIZINE編集部
1月1日は元日、5月5日はこどもの日、7月の第3月曜日は海の日など、国民の祝日と定められている日以外にも、1年365日(うるう年は366日)、毎日何かしらの記念日なんです。日本記念日協会には、2021年2月時点で約2,200件の記念日が登録されており、年間約150件以上のペースで増加しているそう。今回は2月の祝日・連休・記念日を一覧にしました。今日がどんな日なのか探してみてくださいね。
低GIで砂糖やハチミツの代わりに使える!デーツシロップって知ってる?【編
Jan 31st, 2023 | TABIZINE編集部ブログ
TABIZINE編集部員が、取材先やプライベートで気になった小ネタをお届けする編集部ブログ。今回は、フードイベント「TASTE OF AMERICA 2023」のキックオフで試食した中で気になったデーツシロップを紹介! 低GIでベジタリアン、ヴィーガン、ハラールにも対応、ナツメヤシの実が原料のシロップです。
【あの国はなぜ親日国なのか?】人口世界一!「インド」と日本の関係が緊密に
Jan 30th, 2023 | アンダルシア
世界には「親日」といわれる国や地域がたくさんあります。海外旅行をするときも、親日国を訪れると、なんとなく過ごしやすかったり、現地の人とのコミュニケーションがスムーズだったり、なんてことがないでしょうか? そこで、比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者が、なぜその国や地域が親日なのか、政治や歴史の背景から解説します。
【世界三大奇虫】見た目がグロテスクでも大人気の虫とは?日本にもいた!
Jan 27th, 2023 | 坂本正敬
世界を代表するとされるものを3つ取り上げて、「世界三大〇〇」と呼ばれるさまざまなものがありますよね。そこで、どんな事物がそういわれているのか調べてみました。あなたはどれだけ知っているでしょうか? 今回は、ちょっと気持ち悪い(と少なくとも筆者は感じる)「世界三大奇虫」について紹介します。
「凡例」の正しい読み方と意味、知っていますか?【正しい日本語解説Vol.
Jan 26th, 2023 | 熊本沙織
社会人になると、新しい言葉を使う機会が増えますよね。使い慣れていない言葉を無理に使い、大事な場面で恥をかいてしまった……。なんていう人も少なくないのでは? そこでTABIZINEでは、知っているようで意外と知らない頻出ワードを徹底解説! 今回は、読み方に迷う人が多い「凡例」ということばについて、日本語に関する著書も多数手がけている、国語講師の吉田裕子さんに解説してもらいます。
【実はこれが日本一】日本で最も「駅チカ」のお城は広島県に2つあった
Jan 24th, 2023 | 坂本正敬
日本一高い山は「富士山」、日本一大きな湖は「琵琶湖」、日本一高いタワーは「東京スカイツリー」など、有名な日本一はいろいろありますが、あまり知られていない、ちょっと意外な日本一を紹介するシリーズ「実はこれが日本一」。今回は、人気のテーマである鉄道とお城を組み合わせた日本一を紹介します。
【世界の立入禁止スポットvol.10】水銀の川が流れていた!? 謎のベー
Jan 22nd, 2023 | あやみ
かつて13の王朝が都を置き、都城としての歴史は通算1,100年以上にもおよぶ中国の「西安」。ここはシルクロードの起点でもあり、古代ロマンが息づいています。今回は、そんな西安の世界遺産「秦始皇帝陵」をクローズアップ! 発掘調査がなかなか進まず、立ち入ることができない地下宮殿の秘密にも迫ります。
【世界で最も平和な国ランキング】日本は何位?15年連続で首位を守り続けて
Jan 21st, 2023 | あやみ
オーストラリアのシドニーに本社がある国際シンクタンク「経済平和研究所(IEP)」が毎年、「世界平和度指数(GPI)」を発表しています。16回目となる2022年版では、日本が10位にランクイン! とはいえ、世界情勢が著しく変化した2021〜2022年。ロシアのウクライナ侵攻により、世界各国の平和指数にどのような変化があったのでしょうか?
【日本三大うどん】香川「讃岐」・秋田「稲庭」、もうひとつは?
Jan 20th, 2023 | あやみ
寒いシーズンは、温かいうどんが恋しくなりますね。また、気温が上昇し、暖かくなると冷たいうどんを食べてクールダウンしたくなるものです。そんなうどんは、日本のソウルフードのひとつ。トッピング次第でアレンジ無限大なのも魅力です。さて、「日本三大うどん」といわれているのは、香川県の「讃岐うどん」、秋田県の「稲庭うどん」、あともうひとつは何でしょうか?
「早急」の正しい読み方と意味、知っていますか?【正しい日本語解説Vol.
Jan 19th, 2023 | 熊本沙織
社会人になると、新しい言葉を使う機会が増えますよね。使い慣れていない言葉を無理に使い、大事な場面で恥をかいてしまった……。なんていう人も少なくないのでは? そこでTABIZINEでは、知っているようで意外と知らない頻出ワードを徹底解説! 今回は、読み方に迷う人が多い「早急」という言葉について、日本語に関する著書も多数手がけている、国語講師の吉田裕子さんに解説してもらいます。