世界で最も人気のリゾート地のひとつだった「ヴァローシャ」
キプロスのファマグスタ南部に位置するヴァローシャは、トルコがキプロスに侵攻する1974年以前は、一直線の海岸が広がる美しい観光地としてにぎわっていました。地中海を代表するリゾート地のひとつとして名を馳せていたのです。増加する観光客に対応すべく、次々に高層ホテルや高級ブランドショップ、レストラン、バーなどが建築されました。
1960年代から70年代初頭にかけての全盛期には、エリザベス・テイラーをはじめ、ラクエル・ウェルチ、ブリジット・バルドー、リチャード・バートといった世界中のセレブリティからも愛されるリゾート地に。
トルコのキプロス侵攻後に立入禁止になった
しかし、1974年7月15日にキプロスでギリシャ合併推進派によるクーデターが起こり、同年7月20日には、トルコ軍がトルコ系住民保護を名目に、キプロス侵攻を開始。ギリシャ系キプロス軍はラルナカへ撤退しました。
この時点で、トルコ軍は現在、民族的境界線となっているグリーンラインまで勢力をのばしていたのです。そのため、ヴァローシャのギリシャ系住民は虐殺を恐れて、パラリムニ、デリネイア、ラルナカなどの南部へ逃げ出しました。
そして、トルコ軍はヴァローシャ全域を掌握。周囲を金網で囲い、トルコ軍と国連関係者以外の立ち入りを禁止しました。
ヴァローシャの住民たちは故郷へ帰還しようとしたが……!?
ヴァローシャのギリシャ系住民たちは、事態が落ち着き次第、ヴァローシャへ戻ろうと思っていました。
1984年度の「国際連合安全保障理事会決議550」では、ヴァローシャは国連の管轄下に置かれ、元住民が再び定住することが要求されました。ところが、トルコのほか、大半のギリシャ系キプロス人らはこれを不公平だとして拒否したのです。
2022年現在、荒廃した無人のリゾートに
誰も住んでいないヴァローシャは、すべての建物の崩壊が進み、金属は腐食、窓ガラスは割れ、道路や壁には植物の根がはり、荒廃し続けています。
この地が、かつてのにぎわいを取り戻すことがあるのでしょうか?
2021年にトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は、「北部にあるかつてのリゾート地(ヴァローシャ)を再開する」と発表。ヴァローシャがリゾート地としてよみがえる可能性が出てきました。
とはいえ、トルコ以外からは国家承認を得ていない「北キプロス・トルコ共和国(北キプロス)」のグリーンラインにあるヴァローシャ。複雑な領土・民族・資源問題などを抱えているため、リゾート再開が実現するのは、まだ先になりそうです。
北キプロスに入国する際の注意点
2022年現在、北キプロスに入国することは可能です。ただし、独立国として国際的に承認されていないため、パスポートに北キプロス入国印を押されると、キプロス共和国に不法入国したとみなされて、南キプロスとギリシャに入国できなくなることも。なるべく北キプロス入国印は別紙に押してもらいましょう。
ヴァローシャ
参考:外務省/キプロス共和国
AFPBB News/トルコ大統領が北キプロス訪問、南北分断の固定化を主張
[All photos by Shutterstock.com]
Ayami ライター
フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。
【世界の美しい空港5選】旅をしなくても行ってみたい!テーマパークのような
Apr 30th, 2023 | 熊本沙織
世界に3,500以上あるといわれている空港。規模もデザインもさまざまな世界各国の空港は、それぞれが個性的で訪れる楽しみがありますよね。今回はそんな世界の空港の中でも、特に美しい空港を5つ紹介します。
【世界の立入禁止スポットvol.3】世界中のセレブに愛されたリゾート地〜
Oct 16th, 2022 | あやみ
世界のミステリアスで美しい立入禁止スポットをご紹介するこちらの連載。今回は、1970年当時に栄華を極め、世界中のセレブリティから愛されたリゾート地、北キプロスのヴァローシャをクローズアップ。この地は、1974年頃には立ち入りが禁止となり、現在は廃墟が並ぶゴーストタウンに。なぜこのような状態になったのでしょうか?
宮殿、遺跡、B級グルメまで!新旧の魅力に彩られたアゼルバイジャンの首都バ
Apr 8th, 2020 | Nao
南コーカサスに位置し、豊富なエネルギー資源によって発展を遂げつつあるアゼルバイジャン。首都バクーは近未来的な高層ビルやシルクロード時代の面影漂う旧市街が美しく調和。世界から注目を集める都市の一つです。今回は筆者が体験した、ジョージア(旧グルジア)から夜行列車で行く1泊2日のバクー旅をご紹介しましょう!
最先端のジョージアを堪能!料理も雰囲気もハイセンスなレストラン2軒【トビ
Mar 28th, 2020 | Nao
ロシアやトルコなどに隣接し、古くから独自の文化を育んできたコーカサスの秘境ジョージア(旧グルジア)。首都トビリシには歴史的な名所だけでなく、現代的でハイセンスなスポットも多く点在。新旧多彩な楽しみ方ができるのも魅力です。今回は地元のお洒落ピープルたちが集うレストランをピックアップ。最先端のカルチャーを感じてみませんか?
こんな大きな餃子見たことない!圧倒的なサイズ感を誇るジョージアの餃子「ヒ
Jan 18th, 2020 | Nao
中国はもちろん、ユーラシア大陸全体で食べられている餃子。国や地域それぞれに個性が光る餃子ですが、ジョージアのそれは驚くべき大きさとビジュアルを誇り、圧倒的なインパクトを放っているんですよ。今回はそんなジョージア版餃子「ヒンカリ」をご紹介!
想像以上にドラマティック!北欧タリンのクリスマスマーケットを現地ルポ【エ
Dec 17th, 2019 | 鈴木幸子
映画『アナと雪の女王』の舞台になったと言われるのはノルウェーの「ベルゲン」ですが、バルト三国のひとつ、エストニアのタリンのクリスマスマーケットを訪ねてみると、きっとこちらではないだろうかと思うほどファンタジーな世界が広がっていました。その夢のような様子を、TABIZINEライターが現地からレポートします!
【連載】ベストシーズンを迎える海外の旅先 <7月編 ジョージア>
Jul 1st, 2019 | 春奈
この連載では、1ヵ月ごとに、その月にベストシーズンを迎えるおすすめの海外の旅先を紹介していきます。第7回目となる7月におすすめの旅先は、コーカサスの小国ジョージア。日本ではまだまだ認知度が低いものの、バックパッカーのあいだでは沈没地として有名で、エキゾチックな町並みに雄大な自然、世界屈指の美食など、知られざる魅力が満載の秘境です。
【絶景動画】ロシア・グルジア友好のモニュメントがまるでスパイ映画!
Jun 20th, 2019 | 石黒アツシ
旧ソビエト連邦の一部だったグルジアがジョージアと名前を変えたのが2015年。そのロシア・グルジア友好のモニュメントが絶景なんです。美しい雪の世界に浮かび上がります。動画でお楽しみください!
【動画】足がすくむルクセンブルクのパノラマエレベーターの一部始終!
May 17th, 2019 | 石黒アツシ
ルクセンブルク大公国は日本の面積の0.007倍で神奈川県よりちょっと大きい程度、人口も56万人ちょっととでとっても小さい国です。その位置は、フランス、ベルギーとドイツの国境が交わるあたり。その首都ルクセンブルクで、恐怖の爽快パノラマエレベーターに乗りました!
【連載】ベストシーズンを迎える海外の旅先 <5月編 マルタ>
May 13th, 2019 | 春奈
ベストシーズンの旅先連載、5月におすすめの旅先は、地中海に浮かぶ島国マルタ。世界遺産の首都ヴァレッタをはじめ、絶景の宝庫であり、治安も良いマルタは、現在注目度上昇中の旅先。気候が温暖なので、少し早めの夏休みにもぴったりです。