憧れていた白川郷の景色
人にはそれぞれ「一度は行ってみたい所」、「一度は見てみたい景色」があると思います。筆者も、日本の絶景を綴ったカレンダーをめくった瞬間、心を奪われた景色がありました。それが「白川郷」です。豊かな自然の中に佇む合掌造り集落。憧れていた景色を求め旅に出ると、魅力満載の村だということが分かりました。そんな白川郷をよりディープに楽しめる観光スポットをたっぷりと紹介します。
「白川郷」へのアクセスはバスがおすすめ!
岐阜県・北西部に位置する「白川村」。合掌造り集落が世界遺産に登録され、国内外から観光客が訪れます。有名な観光地でありながら、アクセス方法を聞かれるとイマイチよく分かりませんよね。それもそのはず「白川郷」には電車が通っておらず、鉄道の駅はありません。そのため、都内からのアクセスは、名古屋、金沢、富山などに出てから、バスに乗り換える必要があります。
筆者は、名古屋駅から名鉄バスセンターで白川郷行バスへ乗り、そこから約2時間50分のバスの旅を選択。行き方はたくさんあるので、主要駅から発車するバスの時間帯や、何時頃に到着しておきたいかという予定を組んでから決めるのがいいかと思います。到着先は「白川郷バスターミナル」。帰りもここからバスに乗ります。
車やレンタカー、タクシーなどで行かれる方は少々注意が必要です。9時~16時までの間、世界遺産地区内に観光車両が入ることはできません。これは、集落内の景観保全と通行者の安全対策のため。観光車両は、「せせらぎ公園駐車場(有料)」へ駐車し、徒歩での観光となります。ちなみにこの駐車場料金の一部は、世界遺産の保存のために使われるのだとか!
【合掌造り編】重要文化財からトイレまで!? 必ず訪れたい合掌造り
それではさっそく「白川郷」の観光スポットを紹介していきましょう。なんといっても、「合掌造り」の家へ行ってみないことには、白川郷の観光は始まらないし終わりません。
この「合掌造り」の最大の特徴は三角形の屋根。手を合わせて合掌しているように見えることから、「合掌造り」と呼ばれています。ダイナミックな屋根の傾斜が、降り積もった雪を自然に落としたり、屋根裏部屋を養蚕のための作業場として活かすことができたりと、地域の気候と生活にぴったりと合う建築だったのです。
この地域すべての家が合掌造りだった時代の人は、初めてテレビを見たときに「日本中が合掌造りだと思っていた」と、かなり驚いたのだとか。今となっては笑い話ですが、事実を知ったときの衝撃は相当なものだったでしょうね。
必ずおさえたい! 最大規模の「和田家」
そんな村の中で、最大級規模を誇るのが「和田家」。国指定重要文化財にも指定されています。
江戸時代には、庄屋や番所役人を務めており、床下では火薬の原料となる焔硝を作っていました。また、各家々で作られた焔硝を取りまとめて、売買する権利を持っていた家となります。
そんな当時の暮らしを感じさせるのが、この小さな障子。見学者が出入りする大きな玄関は他にもありますが、実はここは正面玄関で、当時この家を訪れた武士や役人が出入りしていたのだとか。
また、2階、3階では養蚕も行っており、実際に階段を使って2階へ行くこともできます。
住所 岐阜県大野郡白川村荻町997番地
電話 05769-6-1058
開館時間 9時~17時
大人 400円 / 小人 200円
囲炉裏には今も火が灯る「神田家」
こちらは、江戸時代後期に石川県の宮大工によって10年もかけて作られた「神田家」。
「和田家」と同じく、主に養蚕と床下では焔硝作りが行われており、1階の囲炉裏には、今でも火が灯っています。モクモクと立ち込める煙は独特な香りをまとい、心地よさを感じます。
見学してると、こんな貼り紙が! そうなんです。今もなおこの家に住んで生活している人がいるのです。実際に見学してみると、しっかりとした家の造りに驚くはず。昔の知恵や工夫が、今でも活かされていることに感動しますよ。
住所 〒501-5627 岐阜県大野郡白川村荻町796
電話番号 05769-6-1072
開館時間 9:00~17:00 毎週水曜日定休(水曜日が祝日の場合は営業)
入館料 大人 400円 / 小人 200円(小)
まるで昔ばなしの世界のよう!「民家園」
合掌造りに魅せられたら「合掌造り 民家園」へ。ここは、県重要文化財指定の9棟をはじめ、全部で25棟の合掌造りを有する野外博物館です。
昭和43年(1967年)岐阜と富山の県境にあった「加須良(かずら)・岐阜県」、「桂(かつら)・富山県」の両集落は、集団離村により消滅しました。その建築物を移築しており、水車小屋やお寺の本堂などもかつてのまま。のどかでのんびりとしており、その風景は昔ばなしの世界そのもの! ひとつの村へ遊びにきたような感覚になります。
住所 〒501-5627 岐阜県大野郡白川村荻町2499
電話番号 05769-6-1231
入館料 大人 600円 / 小人 400円(小・中・高)
HP https://shirakawa-go.gr.jp/active/7/
ただの「道の駅」じゃない! 長居したくなる「道の駅白川郷」
白川郷インターチェンジを降りてすぐの場所には、「道の駅白川郷」があります。
一見普通の「道の駅」と思いきや、思わず「ここも!?」とクスッとしてしまいますが、なんとトイレまで合掌造り!
店内には、地元のお菓子や白川村で作られた食品や野菜などがズラリと並んでいます。しかしこの「道の駅」には、さすが白川郷!と思えるお楽しみが隠されているんです。それは、店内奥に併設された「合掌ミュージアム」。
移築した本物の合掌造り(旧手塚家)を、目の前で見ることができるのです!
「和田家」や「神田家」など、実際に家の中に入ることができますが、合掌造りの屋根の部分を、触れられるくらいの距離で確認できるのはここだけではないでしょうか。かなり迫力もあり、この地に住む人たちの知恵や工夫を目で見て学ぶことができます。しかも入場は無料。フラッと入ったつもりが、あちこち見入ってしまうほど充実したミュージアムとなっています。集落へ行く前の予習としておすすめですよ。
住所 〒501-5625 岐阜県大野郡白川村飯島411
電話番号 05769-6-1310
営業時間 お土産店/合掌ミュージアム 8:30~17:00
食事処 9:30~16:00
HP https://rs-shirakawago.jp/
【グルメ編】白川郷のおいしいものを最高のロケーションで!
旅の楽しみといえば、食事。「ここでしか食べられない特別感があるもの」をチョイスしたいですよね。白川村の郷土料理として外せないのが「すったて汁」。名前を聞いただけでは、どんなものか一切想像できないのも、ワクワクします。
「すったて」とは、大豆をまるごとすりつぶしてペースト状にしたもので、その語源は「すりたて」からきています。この「すったて」をおみそ汁に混ぜたものが、「すったて汁」の正体であり、古くから慶事の席などで食べられてきました。
旅の気分が盛りあがる!「ます園 文助」
さらに、この「すったて汁」をアレンジしたメニューも誕生しています。鍋の日本一を決めるイベント「ニッポン全国鍋グランプリ」に、初出場ながらグランプリを獲得したという「すったて鍋」です。
そんな新名物を、合掌造りの店内でいただけるのが「ます園 文助(ぶんすけ)」。本来は、庭先の湧き水を利用して育てた「いわな」や「ニジマス」など川魚料理のお店ですが、3日前までに予約をすれば、この「すったて鍋定食」を味わうことができます。
食べ方も少々独特。具材をグツグツ煮込むのではなく、お鍋の中に具材をすべて入れて、すったて汁を絡めるようにいただきます。
その味わいは、とろっと濃厚で体中に染みわたるようにやさしく、衝撃を受けたのは口当たり。例えるならポタージュのようで、今までに食べたことがない不思議な感覚です。お味噌と豆腐なので、ごはんとの相性も抜群。最後の一滴まで余すことなく楽しめます。
「文助」自慢のいわなの甘露煮はとても柔らかく、一匹まるごと食べることができます。お肉は飛騨牛で、お米は白川郷産のコシヒカリ。素朴でありながら新感覚の「すったて鍋」は、心の奥までもほっこりさせてくれます。
すったて鍋定食
価格 1,650円(税込)
住所 〒501-5627 岐阜県大野郡白川村荻町1915
電話番号 05769-6-1268
営業時間 9:00~21:00(LO20:00)
体験しないなんてもったいない!「遠山ごはんプロジェクト」
白川郷だからこそできる体験があります。それが、「遠山家ごはんプロジェクト」。なんと国指定重要文化財である「旧遠山家住宅」で、村内の老舗旅館や人気飲食店が特別に考案したというお弁当が食べられるプロジェクトです。
この「旧遠山家住宅」は、昭和43年の春までは家族の住居として使用されていましたが、それ以降は「旧遠山家民族館」として一般に公開されているため、施設内の見学もできます。この地は、土地が狭く平地に恵まれないことから分家することが難しく、長男一家を中心とした大家族になったのだとか。そのため家屋の規模も大きく、明治期には40人以上の家族がこの家で暮らしていたというから驚きです。
写真提供 岐阜県白川村役場
重要文化財で食事ができるというのは、まさに特別体験。また、いろりを使用して作る「すったて汁体験」もできるので、地元の食材や郷土料理を味わいながら、昔の人々の暮らしを想像してみるのも、旅の素敵な思い出になることでしょう。
住所 〒501‐5506 岐阜県大野郡白川村後母衣125
電話番号 05769-5-2062
入館料 大人: 300円 / 小人:150円
営業時間 4月~11月 9時~16時/12月~3月 10時~16時
休館日 水曜(祝日の場合は前日休)
遠山家ごはんプロジェクト
最小催行人数1名より可。
お弁当の注文は、来館当日7日前が期限です。
https://shirakawa-go.gr.jp/tours/11/
白川郷の伝統的食材をカジュアルに!「深山豆富」
「白川郷」の伝統的な食材に、縄で縛っても崩れないという「石豆富」があります。豪雪地帯であるこの地は、冬が来ると雪に閉ざされ厳しい環境の中を生活していました。そのため、保存がきき持ち運びもしやすい固い豆富が生まれたのです。
若いスタッフさんがテキパキと働く「深山豆富(みやまとうふ)」は、この「石豆富」の直売所です。お豆腐屋さんとは思えないほどおしゃれな店内はカフェも併設しており、ホッと一息つくこともできます。
実は、コロナ禍の影響や高齢化などの問題があり、2021年3月に一度閉店してしまったのですが、この伝統を絶やしてはいけないと、事業継承という形で再オープンを果たしました。
一般的な豆腐一丁に使われる大豆の量は約77g~90gのところ、この「石豆富」には、214gも使われており、ギュッと大豆のおいしさが詰まっています。そのまま食べるのはもちろんですが、焼いたり揚げたり煮込んだりと、色々なお料理に活躍するのも「石豆富」ならでは。
おからを使ったオリジナルのクッキー「まめなクッキー」もあり、そのパッケージはぬくもりがあってとってもキュート。伝統を守りながらも新しい風も吹かせていく……おいしい「石豆富」と若い力にパワーを分けてもらえるようなお店です。
住所 〒501-5501 岐阜県大野郡白川村大字保木脇260-14
電話番号 0577-54-1800
価格 石豆富:1丁・450円(税込)
まめなクッキー:1箱・324円(税込)
HP http://miyama-tofu.shirakawago.gifu.jp/
【宿泊編】合掌造りの家に泊まろう!
どこへ行っても、まるでタイムスリップしてしまったかのような「白川郷」。観光客にとっては、非日常だらけでワクワクが止まりませんが、この美しい景観が日常であり、それを守りつづけているのは、住民の皆さんです。
「白川郷」には独自のマナーがあり、住民生活のプライバシー保護のため、宿泊客を除き夜間の観光はできません。「せせらぎ公園駐車場」の利用時間も朝8時から夕方17時までとなり、それ以外の時間帯は、住民の皆さんのための時間になります。つまりは、宿泊すると「素」の白川郷を楽しむことができるのです!
今回お邪魔したのは、合掌造りのお宿「文六」。明るくやさしい女将さんが一人で切盛りしている民宿です。
玄関から1歩足を踏み入れば、思わず「ただいま」と言いたくなるような安心感に包まれ、お部屋にはこたつ。心安らぐ滞在が叶います。
さらにうれしいのが、食事がとてもおいしいこと! 地元の食材をふんだんに使用したお料理が並び、特に白米を口に入れた瞬間の衝撃は忘れられません。粒感がしっかりとしたお米は、噛めば噛むほど甘みが増し「あれ? 白米ってこんなにおいしかったっけ?」と、自分の中で時間が止まってしまったほど。2杯目に手が伸びてしまったことは、言うまでもありません。ちなみに、お米はお宿の長男さんが作っているそうで、品種は「あきたこまち」だそうです。
民宿というと、ホテルに比べて不便そうなイメージがありますが、お風呂は足が伸ばせるほど広く、Wi-Fiも完備。静かな宿で“あえて何もしない”が楽しいのも、白川郷だからかもしれません。
住所:〒501-5627 岐阜県大野郡白川村荻町892
電話番号:05769-6-1409
【絶景編】宿泊者だけの特権! 早朝散歩
先ほど説明したとおり、観光客を受け入れる「せせらぎ公園駐車場」の利用時間は朝8時から。その時間帯までは、静かで穏やかな村の朝を存分に楽しむことができます。ということで、おいしく健康的な朝食を済ませたら、早朝散歩へ! 「文六」からは、合掌造りの集落を一望できる「荻町城跡展望台」へ歩いていくことがきます。なだらかな坂が続くため少々息があがりますが、その坂を登ればご褒美とばかりに絶景が待ち受けています。
朝もやの中にくっきりと山肌が浮かぶ白山連峰とともに、眼下に広がる合掌造り集落は神々しく、その美しさに思わず言葉を失ってしまったほど。鳥のさえずりと頬をかすめる澄んだ空気が心地よく、宿泊したからこそ堪能できる贅沢な時間を過ごすことができます。
バスを降りた瞬間から、別世界へ来てしまったかのような景色が広がる「白川郷」。観光時間が決まっていたり、観光車両が入れない場所があったりと、普通の観光地とは少々勝手が異なりますが、滞在してみると、この大切な風景を守るために当然なことなのだと感じます。村内に流れる庄川や湧き水は清く透き通り、村の人々はどこまでもやさしく、とことんおいしい食べ物たち。1泊2日の旅で、心の中がどんどんクリアになっていく不思議な体験をしました。カレンダーで見た憧れの絶景はやはり美しく、すべての季節を見守りたいと感じる場所でした。
[Photos by koume]
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