クリントピア丸亀
燃やしてごみを処理する国
皆さんの家から、あるいは旅先で出したごみは、どのような形で処理されると思いますか?
多くの読者が恐らく、小学生のころに、社会科見学でごみ焼却場に訪れた経験があると思います。まさに、あの巨大なごみ焼却場で、生ごみを含むほとんどの可燃ごみが燃やされて処理されます。
「そんなの当たり前じゃない?」と日本人なら感じるかもしれません。しかし実は、当たり前ではありません。世界の国々と比べると、ごみ焼却場の数も、焼却で処理されるごみの割合の高さも、日本が世界一なのですね。
そもそも、ごみの処理は、埋め立て・捨てっぱなし(オープンダンプ)・焼却・リサイクルに大まかに分けられます。
世界銀行が発表する資料『What A WASTE 2.0』などによると、国土の広いアメリカやカナダなどは埋め立てを主に選択し、発展途上国では、オープンダンプ(捨てっぱなし)が主流で、日本のような国土の狭い国では、焼却やリサイクルが一般に進んでいます。
ただし、日本については、リサイクルが少なく、ごみを焼却して処理する割合が世界で突出して高い状況 となっています。具体的には、焼却の割合が80% ほど。
深刻な環境汚染を生む捨てっぱなし(オープンダンプ)ではもちろんなく、焼却技術にしてもレベルが高くて、焼却時のエネルギーを再利用もしているため、立派といえば立派なのですが、焼却一辺倒の処理の仕方も一方で問題視されています。
お隣の韓国のように、リサイクルが全く進んでいないからですね。
生ごみが実は問題
皆さんの中には「え、リサイクルを日本も結構頑張っているじゃん」と、思う人もいるはずです。プラスチックは「プラごみ」として出し、ペットボトルや食品トレー、缶、びん、牛乳パックなどを資源回収に回している人もたくさんいるのではないでしょうか。
しかし、生ごみについてはどうでしょう。可燃ごみの一部として生ごみを当たり前に出しているはずです。この生ごみを、お隣の韓国やドイツのようにリサイクルに回さず、燃やして処理してしまっているため、焼却率が上がり、リサイクル率が低いままにとどまってしまっているのですね。
例えば、韓国では、ごみの6割くらいがリサイクル、2割ちょっとが焼却となっています。日本では、リサイクルが2割ちょっと、残りはほぼ焼却です。
生ごみのリサイクルが世界トップクラスに進んでいる韓国では、家庭の生ごみが堆肥(たいひ)や飼料(家畜のえさ)に再活用されています。
生ごみは、水分量が多く、燃えにくいため、焼却効率を下げる要因とされています。このところ、資源の分別回収が日本でも進んでいるため、可燃ごみ全体に占める生ごみの比率が増え、世界最高水準の焼却技術をもってしても、燃焼効率が下がってしまっているそうです。
全国では、福井県池田町のような先進地域はあるものの、全国的に見れば、生ごみの回収はまだまだ定着していない実態があります。
その意味で、韓国やドイツなどに旅行に出た際には、生ごみを各家庭がどのように扱っているか、旅のついでにチェックしてみてもいいかもしれません。
日本にごみ焼却場が多い理由
ちなみに、どうして日本にこれだけごみ焼却場が多いのかといえば(2021年の段階で1,067施設。この数も世界一)、国土の狭さ、夏の暑さによる異臭問題を考慮して、高度成長期に国が推し進めたからです。
呼応するように、全国の自治体の側も、国の補助金を使ってごみ焼却施設を次々とつくりました。民間企業も参入して市場が拡大し、現在の「焼却大国」ができあがります。
当たり前に思っていても、世界では意外に当たり前でなかった、そんな学びを得るためにも、海外に出かけた際には、ごみの行方にもぜひ注目したいですね。
[参考]
※ What a Waste 2.0 – World Bank ※ 世界のゴミ焼却場の2/3が日本にあるって本当ですか? – 学研 ※ ごみ焼却施設が断トツに多い日本の不名誉 分別で家庭の生ごみ資源化を – 朝日新聞 ※ 一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について – 環境省 ※ 「生ごみは燃やすな」 焼却大国日本でごみ処理の専門家が唱える異議 – 朝日新聞 ※ 日本のごみ焼却処理は世界のスタンダードではない – ELEMINIST ※ Vol.1 生ゴミは”ゴミ”ではなく“畑の宝” – ELEMINIST ※ 参考資料2韓国の生ごみリサイクルに関する情報 – 環境省 ※ ごみの出し方 – 池田町
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Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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