セルビアの基本情報
ゴルバック要塞
正式名称は「セルビア共和国」で、ヨーロッパ南東部、バルカン半島に位置し、北はハンガリー、北東はルーマニア、東はブルガリア、南は北マケドニア共和国とコソボ、西はクロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロと接している内陸国です。2008年にコソボ自治州が独立し、現在のセルビアになりました。面積は7万7,474平方キロメートルで北海道とほぼ同じ大きさです。
北部はドナウ川、ティサ川、サバ川流域の肥沃な平野、中部および南部は山岳地帯で、モラバ川とその支流が峡谷を刻んで貫流しています。温暖な大陸性気候で、平野部はトウモロコシ、小麦、ヒマワリの栽培が盛んです。
©️Dragan Mujan / Shutterstock.com
人口は693万人(2020年)で、セルビア人が80%以上を占めるほか、ハンガリー人なども暮らしています。公用語はセルビア語ですが、ハンガリー語なども使われています。宗教はセルビア正教(セルビア人)、カトリック(ハンガリー人)がほとんどです。
セルビアの国旗の青・白・赤は「スラブ民族」を象徴。赤は「尊い血の犠牲」を、青は「澄みわたる空」を、白は「まばゆく輝く光明」を表しています。また、旗竿寄り中央には胸に盾を持った双頭の鷲と王家の冠が描かれています。これは19世紀末トルコから独立した王国の紋章と冠を復活させたものです。
国名は南スラブ系のセルビア人に由来。セルビアの語源は諸説あり、「人間」「仲間」を表す言葉だったという説もあります。
セルビアが親日なのは、旧ユーゴ紛争の際、欧米諸国が反セルビア的立場だったのに対し、日本は比較的、中立的な立場をとり、明石康氏が旧ユーゴ国連事務総長特別代表として紛争の解決に努めたり、緒方貞子氏が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)代表として難民や国内避難民の問題の解決に当たったりしたからだそうです。
加えて、第二次世界大戦後の日本の経済成長に対する尊敬の念や、日本文化や武道への関心が強いことも影響しているとか。
セルビアに行くには?
日本からセルビアへは直行便が就航していません。行き帰り最低1カ所で乗り換える必要があります。日本から首都ベオグラードへ行く場合、トルコのイスタンブールやドイツのフランクフルト、アラブ首長国連邦のドバイなどで乗り継ぎが可能です。
セルビアに入国するためには、ビザの取得は不要(90日以内の滞在の場合)です。2023年8月現在、パスポート残存有効期限は、セルビア出国予定日から最低でも3カ月以上が必要です。
セルビアの最新の渡航情報について詳しくは下記をご覧ください。
歴史的建造物が豊富! セルビアの複雑な歴史が感じられる「ベオグラード」
セルビア語で「白い町」を意味する「ベオグラード」は、サバ川がドナウ川に合流する三角地帯の標高約120m付近に位置し、古来、交通の要衝地として発展しました。
一番の見どころは「ベオグラード要塞」。最初の要塞はケルト人によって建造されましたが、2世紀にはローマ軍のキャンプ地に。ベオグラード要塞には何度も破壊・再建された、激動の歴史の痕跡が残っています。
18世紀前半に建てられた「スタンボル門」を越えると、第一次世界大戦、第二次世界大戦で使われた戦車が展示されています。さらに、戦車の向かいには中世の「拷問博物館」も! そのほか、2つの円形の塔に囲まれた「ジンダン門」や軍事教会として建造された「ルジツァ教会」など見どころ盛りだくさんです。
©️kirill_makarov / Shutterstock.com
約1kmの「クネズ・ミハイロ通り」もぜひ訪れたいスポット。カフェやレストラン、ショップが並ぶ開放的な雰囲気です。ルネサンス様式などの豪華な邸宅を見ることもできますよ。ショッピングセンターもあり、お土産探しにも、もってこいです。
ノスタルジックな雰囲気に包まれながら、食事を味わいたいのなら、石畳の道が特徴な「スカダルリヤ」へ。カフェやレストランはもちろん、伝統的な音楽を楽しめるお店もあります。セルビアのロールキャベツ「サルマ」や、ひき肉を細長く丸めて焼いた「チェバプチッチ」といった肉料理をぜひ味わってみたいですね。
聖サワ大聖堂
さらにベオグラードには、世界で最大級の正教会の大聖堂「聖サワ大聖堂」、フレスコ画が美しい「聖ペトカ教会」など、素晴らしい歴史的建造物がいっぱいです。
「セルビアのアテネ」と称えられていた、同国第2の都市「ノヴィ・サド」
セルビア北部にある同国第2の都市「ノヴィ・サド」は、ドナウ川左岸沿いに位置します。19世紀後半、ハンガリーで設立されたセルビア人のための文化啓蒙団体マティツァスルプスカが移設され、セルビア文化の中心地になり、出版、学芸、美術の分野で積極的な活動を行ったことで「セルビアのアテネ」と称えられていました。
そのため、この地域ではセルボ=クロアチア語、ハンガリー語、スロバキア語、ルーマニア語、ウクライナ語など多言語で公共の放送が行われているのです。
かつてオーストリア=ハンガリー帝国の南の国境に位置し、オスマン帝国軍の侵入を防ぐため、巨大な「ペトロバラディン要塞」を建造。この要塞はノヴィ・サドで人気の観光スポットです。現在は考古資料、中世から近代にかけての武器、装飾品などを展示するノヴィ・サド博物館になっています。要塞の上からはノヴィ・サドの街を一望できますよ。
アッパーダウンには「酔っ払い時計塔」と呼ばれるユニークな建造物も。その名の通り、この時計塔は正しい時間を示していません。長針と短針も反対になっています。さらに、アッパータウンは、ロウアータウンやドナウ川を見渡せるのも魅力です。
旧市街はオーストリア=ハンガリー帝国時代を彷彿させる建物が並ぶ美しいエリア。「自由広場」の周りには市庁舎やマリア教会などがあり趣があります。レストランやカフェも豊富で、優雅なひとときを過ごせそうです。ノヴィ・サド郊外にはワイナリーが多いため、ワインの試飲もおすすめ。
ベオグラードからノヴィ・サドへはバスで約1時間半です。
13世紀頃に放棄された都市遺跡「スタリ・ラスとソポチャニ」
セルビアには世界遺産が4つありますが、そのうちのひとつが、セルビア最初の首都である「スタリ・ラス」の郊外にある、要塞、教会、修道院からなる中世の記念碑群「スタリ・ラスとソポチャニ」です。1979年に世界文化遺産に登録されました。この都市は9世紀から10世紀にかけて建設されましたが、13世紀頃に放棄され、都市遺跡として今に至ります。
スタリ・ラスには、当時の王宮跡と推測される要塞の一部と礼拝堂が残されているほか、10世紀頃に建てられたセルビア最古の聖堂とされる「聖ペテロ聖堂」や、ロマネスク建築とビザンチン建築が融合した「ジュルジェビ・ストゥポビ修道院」があります。
また、スタリ・ラスの南西に位置するソポチャニには、1260年頃、セルビア国王ステファン・ウロシュ1世の命により建てられたセルビア正教会の「ソポチャニ修道院」も。
この修道院は、聖三位一体聖堂にあるフレスコ画「聖母の死」で有名です。セルビアに残るフレスコ画の中では最も美しい13世紀のビザンチン美術作品といわれています。
ソポチャニ修道院
13~14世紀の見事なビザンチン・フレスコ画が残る「ストゥデニツァ修道院」
セルビア南西部のラシュカ地方に位置する「ストゥデニツァ修道院」は、 1986年に世界文化遺産に登録されました。 12世紀、ネマーニヤ朝の始祖ステファン・ネマーニヤの命で建てられ、死後は王の霊廟になりました。
最盛期には13の聖堂群があったと伝えられていますが、現存するのは12世紀建造の聖母聖堂と聖ニコラス聖堂、14世紀建造の王の聖堂の3つです。これらの建物は、ロマネスク様式とビザンチン様式が融合したラシュカ派様式の傑作とされています。
©️N.M.Bear / Shutterstock.com
教会堂の内部には、13~14世紀の見事なビザンチン・フレスコ画が描かれていて、なかでもオスマン・トルコとの戦いで奇跡的に無傷だった「磔刑図」には注目です。
また、ステファン・ネマーニヤは象牙や貝殻で精緻な装飾が施された黒檀の棺に納められています。
セルビアで人気のスポーツは?
©️Dragan Mujan / Shutterstock.com
セルビアで人気のスポーツは、サッカー、バスケットボール、バレー、水球、テニスです。
また、2023年9月3日(日)から10日(日)にかけて、セルビアのベオグラードで「2023年世界ボート選手権」が開催されます。この選手権は、ボート競技の中では夏季オリンピックに次ぐ権威ある大会です。パリオリンピック出場枠、男女それぞれで57枠ずつが割り当てられます。
「パリ2024オリンピック」へ向けてどのような戦いが繰り広げられるのか気になりますね。
【参考】
外務省/チャレンジ41か国語~外務省の外国語専門家インタビュー~
[All photos by Shutterstock.com]