日本の世界遺産【6】相互扶助「結」の精神と営みが残る「白川郷・五箇山の合掌造り集落」

Posted by: あやみ

掲載日: Sep 14th, 2023

富山県庄川上流の五箇山、岐阜県白川上流の白川郷で見られる「合掌造り」の民家は、合掌するように組まれた叉首 (さす) でつくられていて、外観は茅葺で、屋根は高い切妻(きりづま)屋根、採光のために明障子が入れられているのが特徴です。今回は、日本の原風景である農村文化や生活を感じることができる「白川郷・五箇山の合掌造り集落」にフォーカス。概要や見どころのほか、行き方、周辺の人気スポット・グルメもご紹介します。

冬の白川郷
 


 

支え合う暮らしが育んだ日本の原風景「白川郷・五箇山の合掌造り集落」

秋の白川郷(岐阜県)
1994年に世界文化遺産に登録された「白川郷・五箇山の合掌造り集落」は、岐阜県の白川村荻町、富山県の平村相倉、上平村菅沼の3つの集落を指します。合掌造りの家が集団的に保存されている珍しい集落なのです。

世界遺産・白川郷(岐阜県)
岐阜県大野郡白川村の荻町地区は、大小100棟余りの合掌造りが数多く残っています。18・19世紀に建てられた民家が集中しているのです。茅葺きの合掌づくりの大きな屋根の下は3~5階からなり、1階は広い居室空間、2階以上は屋根裏部屋の寝室もしくは作業空間です。かつては1棟に数十人の大家族が住むのが一般的でした。

また、荻町地区は山間の田畑のなかに位置し、周囲を広葉樹林が囲み、民家は中央の谷筋の方向に平行して建ち並んでいます。そのため、急勾配の茅葺屋根と相まって、ユニークな集落景観を生み出しているのです。

岐阜県白川郷の風景
白川郷は本州のほぼ中央の山間部にあり、住民の多くは農耕、山林樹木の伐採・搬出、養蚕を生業としていました。民家内の屋根裏部屋では、養蚕の作業なども行なわれていたのです。

白川郷・合掌造りの屋根
©️Stray Toki / Shutterstock.com

さらに「結(ゆい)」と呼ばれる住民の相互扶助の営みがあり、屋根の蓑き替えなどを共同で行う慣習が残っているのも特徴的。合掌造り家屋は、豪雪地域という厳しい自然環境と伝統的な生活形態によって生まれたのです。

見どころは?

白川郷

岐阜県白川郷の秋の風景
白川郷の一番の見どころは、世界遺産地区内で最大級クラスの合掌造り「和田家」です。唯一、国の重要文化財に指定されています。和田家は江戸期に庄屋や番所役人を務めていたほか、白川郷の重要な現金収入であった焔硝(えんしょう)の取引によって栄えました。

和田家は現在も住居として使用され、7月・8月は蚕を飼育していますが、生活スペースを除く、1階と2階部分は公開しています。2階から眺める景色もぜひチェックしてみてくださいね。

白川郷ライトアップ
県重要文化財の9棟を含む25棟の合掌造りを保存・公開する博物館「合掌造り民家園」も訪れたいスポット。主屋だけでなく、神社やお寺の本堂、水車小屋もあり、主屋は屋根裏まで見学可能です。

白川村に現存する数少ない18世紀の合掌造り「山下家」もお見逃しなく。囲炉裏のそばで温かいお茶が飲めるお休み処もありますよ。

白川郷の養蚕
さらに養蚕をテーマにした「白川郷田島家養蚕展示館」が2023年4月26日にオープンしました。かつてほとんどの合掌造りで行われていた養蚕の再興を試みている展示館で、養蚕はもちろん、白川村の養蚕の歴史や史料の展示、旧田島家移築を記録した貴重な民俗映像の放映も実施。どこか懐かしい白川郷の生活に思いを馳せながら見学したいですね。

五箇山・相倉

富山県南砺市「相倉」
20棟の合掌造り家屋が現存する「相倉(あいのくら)」は、田畑、石垣、雪持林などに囲まれた昔ながらの生活が息づく、富山県南砺市に位置する集落です。

一度は訪れたいのが現存する「原始合掌造り」。五箇山の民家がこれをもとに「素屋造り」から「四ツ囲い」へ、「妻入り」から「平入り」へと発達。さらに、二階建の茅葺民家へと変遷した歴史を垣間見ることができます。

合掌造り家屋を利用した資料館「相倉民俗館」も必見です。昔ながらの生活用具や合掌造りの模型も展示しています。階段を上ると、屋根の内部構造を見ることもできますよ。

五箇山・菅沼

富山県南砺市菅沼
富山県南砺市の庄川の流れが方向を変える地点の右岸にある小さな集落「菅沼」。土蔵や板倉といった伝統的な建物や、雪持林や茅場などの山林をも含めた地域が史跡に指定されており、観光化されていないのが魅力です。

菅沼で注目したいのは、火薬の原料である塩硝作りを再現した「塩硝の館」、五箇山の暮らし、先人たちの知恵を活かした生活用具約200点が展示された「五箇山民俗館」、川を渡るのに、ぶどうのつるで作った大綱を張って取り付けた籠を使用していた「籠の渡し」。五箇山の歴史と伝統に触れられますよ。

白川郷・五箇山(相倉・菅沼)への行き方

白川郷

JR「富山駅」から高速バスで約1時間20分「白川郷バスターミナル」下車してすぐ
JR「金沢駅」から高速バスで約1時間20分「白川郷バスターミナル」下車してすぐ
JR「高山駅」から高速バスで約50分「白川郷バスターミナル」下車してすぐ
JR「名古屋」駅から徒歩5分「名鉄バスセンター」で高速バスで約2時間30分「白川郷バスターミナル」下車してすぐ

白川郷
住所:岐阜県大野郡白川村荻町
電話:05769-6-1013(白川郷観光協会9:00~17:00)
公式サイト:https://shirakawa-go.gr.jp/

五箇山・相倉

JR「城端駅」からバスで約25分「相倉口」下車、徒歩約5分

五箇山・相倉
住所:富山県南砺市相倉
電話:0763-66-2123(世界遺産相倉合掌造り集落保存財団)
営業時間 :8:30~17:00
休業日:無休
公式サイト:https://gokayama-info.jp/sightseeingspots/gokayama.php

五箇山・菅沼

JR「城端駅」からバスで約40分「菅沼」下車、徒歩約1分

五箇山・菅沼
住所:富山県南砺市菅沼
電話:0763-67-3008(菅沼世界遺産保存組合)
営業時間 :8:00~17:00(4~11月)、9:00~16:00(12~3月)
休業日:12月31日~1月1日 
公式サイト:https://gokayama-info.jp/sightseeingspots/gokayama.php

子宝の湯として親しまれている硫黄泉「平瀬温泉」

白川郷の湯
©️Mei Yi / Shutterstock.com

白川村の平瀬地区に湧く「平瀬温泉」は、合掌造り集落や白山登山口に位置します。環境省の国民保養温泉地にも指定されている名湯で、泉質は硫黄泉で皮膚疾患や胃腸病に効能があるとされています。

民宿2軒、旅館8軒のほか、野趣あふれる源泉掛け流しの天然露天風呂「大白川露天風呂」や、古くから子宝の湯として親しまれている「大白川温泉 しらみずの湯」もあり、心身を癒やすことができます。

また、白川郷合掌集落には、2023年4月28日にリニューアルオープンした日帰り温泉「白川郷の湯」も! 白川郷を訪れたら温泉も満喫したいですね。

すったて汁
出典:農林水産省Webサイト

白川郷で味わいたいのが郷土料理の「すったて汁」です。どぶろくに似ていることから「どぶ汁」と呼ばれることも。茹でた大豆をすり鉢や石臼などですりつぶした「すったて」に、味噌や醤油などを加えた汁物で、ハレの場で食べられていました。大豆の風味がしっかり感じられるのが特徴とか。ぜひ白川村で味わいたいですね。

平瀬温泉
住所:岐阜県大野郡白川村平瀬
電話:05769-6-1311(白川村役場)
交通アクセス:白川郷バスターミナルからタクシーで約15分
公式サイト:https://www.vill.shirakawa.lg.jp/1959.htm

[Photos by Shutterstock.com]

PROFILE

あやみ

Ayami ライター

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

フリーライター。劇団員、OL、WEB編集ライターを経て、フリーランスになる。辛い食べ物、東南アジアが大好き。旅するように生きるのが人生の目標。

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