
世界文化遺産 冬の相倉合掌造り集落を訪ねる
富山県南砺市の五箇山には「相倉合掌造り集落」と、さらに山あいに入った「菅沼合掌造り集落」の2つの集落があります。
冬の終わりに訪ねたのは相倉合掌造り集落。ここには20戸あまりの合掌造りの家屋が残されています。冬場の相倉は例年2mの積雪があるといい、3月とはいえ、まだたくさんの雪が残る時期で、陽光にキラキラと輝く雪と合掌造りがとても美しく印象的でした。
さらに奥まった山あいの菅沼集落には9戸の合掌造りが残され、土蔵や板蔵などの歴史的建造物も保存されているといいます。

この五箇山の合掌造り集落、1995年12月に岐阜県飛騨高山の白川郷と合わせて「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として世界遺産に登録されたのです。屋根に雪が積もらないように急こう配になっているのでしょうね。春夏秋冬、どの季節も風情ある景観を見せてくれる、昔ながらの茅葺きは日本ならではの絶景といえます。
ちなみに相倉集落では、食堂やお土産物屋さん、民宿のほか、「相倉民俗館」と「相倉伝統産業館」があり、ここでは集落の生活の様子や伝統産業である和紙の歴史を知ることができます。


とはいえ、集落を見渡せる高台まで登ったり、足元の悪い雪道を歩くとおなかが減ります。相倉地区の食堂で五箇山名物の郷土料理「五箇山豆腐」と温かいぜんざいをいただきました。上の写真の「五箇山豆腐」は縄で縛っても型崩れしないといわれる硬い豆腐で、かつては山仕事に持ち歩いたといわれています。しっかりと食べ応えがありました。

合掌造りの里といえば、白川郷を思い浮かべるかもしれません。白川郷は大規模に整備された飛騨高山の一大観光地ですが、五箇山は古くからの素朴な暮らしと清々しい光景がいまも残されていました。

五箇山へのアクセスは富山県高岡駅、そして新幹線新高岡駅からの「世界遺産バス」がおすすめです。新高岡駅から相倉口までは1時間あまり、そして菅沼までさらに15分ほどで到着です。
「庄川温泉 鳥越の宿 三楽園」でふたつの源泉を愉しむ
五箇山の相倉集落から庄川沿いに10kmあまり下ってくると庄川温泉郷があります。この日の宿はそのひとつ、「庄川温泉 鳥越の宿 三楽園」。

周囲は木立に囲まれた一軒宿。館内全体も客室もゆったりと造られ、落ち着いた雰囲気の大人の宿といった印象です。

宿の名前「鳥越の宿」の由来ですが、その昔、越中と飛騨の国境を飛び交う鳥たちが、山中から湧き出るお湯に翼を休め、傷ついた体を癒やして飛び立ったことから「鳥越の湯」と名付けられといいます。

この「鳥越の宿 三楽園」で特筆すべきは、成分の異なる2つの濁り湯。

まずは上の2枚の写真、自家源泉の“赤茶色”の炭酸鉄泉です。鉄分を豊富に含み、婦人科系や皮膚疾患に効果があるといわれています。上の写真の内風呂とその上の写真、半露天風呂も炭酸鉄泉なのです。

そして、もうひとつは上の写真、“白濁色”の炭酸水素塩泉。皮膚を柔らかくしてお肌をすべすべにする美肌の湯として知られています。どちらも女性にやさしいお湯で、湯ざわりはキシキシする感覚です。たしかに浴後は肌がサラサラになりました。
北陸の海の幸山の幸をいただく

評判なのは温泉だけではありません。料理自慢の宿としても知られています。夕食のメインは5種のお刺身盛合せ&和牛鍋「三楽園会席」をいただきました。

まずは先付けと前菜の旬菜五種盛。どれも手が込んでいておいしいのですが、特にタケノコの真丈がとても美味。

続く「温泉野菜春キャベツすり流し」もキャベツの甘みが感じられ、奥深い味わいです。


上の写真はブリや甘エビなど、お刺身の盛り合わせと桜ダイの木の芽焼。北陸の冬の海の幸はどれも新鮮かつ美味でした。

そして特選和牛と冬の幸の鍋も大満足。どれをとっても丁寧に、そして心を込めて調理されている印象で、評判なのもよくわかりました。
庄川温泉と「庄川峡」と「散居村」

ちなみに庄川温泉は富山県南西部に位置し、今回の宿「三楽園」の近くには日本観光地百選にも選ばれた自然美「庄川峡」があります。冬場も真っ白な雪に包まれた庄川峡をダイナミックに体感できる遊覧船が運航されているそうです。
また庄川と小矢部川によって造られた砺波平野は大きな扇状地で、それぞれの家の周りに屋敷林をめぐらせる「散居村」が特徴的です。下の写真は宿の近くの丘の上から臨む「散居村」の景色。

屋敷林は「カイニョ」と呼ばれ、冬の冷たい季節風や吹雪、夏の日差しなどから家や人々の暮らしを守ってくれるだけでなく、スギの落ち葉や枝木などは毎日の炊事や風呂焚きの大切な燃料として利用されました。この「散居村」は富山の原風景ともいえる美しい光景なのです。
[All Photos by Masato Abe]

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Masato Abe 還暦特派員
大学を卒業後、およそ30年間テレビ番組を作ってきました。57歳の時に、主夫となり、かつ自由人として旅に生きることを決意して早期定年退職。登山を始め、東京の街歩きガイドや温泉めぐり、豆大福探訪などなど60歳の還暦を迎えて好奇心が高まっています。
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