ヨルダンの基本情報
ワディムジブの峡谷
正式名称は「ヨルダン・ハシェミット王国(al-Mamlaka al-Urdunniya al-Hashimiya)」です。西アジアに位置し、北はシリア、東はイラクとサウジアラビア、西はイスラエルに接しています。面積は8.9万平方キロメートルで日本の約4分の1の大きさです。
死海
西端部をヨルダン地溝帯が走り、その東方にゆるやかに起伏する高原が広がっているため、乾燥が激しく、東部は大部分が砂漠となり、耕地はヨルダン峡谷の両岸に集中しているのが特徴です。
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人口は1,114.8万人(2021年)で、半数以上をパレスチナ系住民が占めています。公用語はアラビア語ですが、英語も使われています。宗教はイスラム教93%、キリスト教などが7%です。
ヨルダンの国旗は、赤・緑・白・黒の4色を基調とする「アラブの色」を用いています。赤は「ヨルダン王のハシミテ王朝」を、黒・白・緑はアッバース朝・ウマイヤ朝・ファーティマ朝の「古代3王朝」を象徴。さらに白い7つの光条を放つ星は、ヨルダン人の民族の単一性を表すと同時に、『コーラン』第1節の第7行「アッラーのほかに神はなし、ムハンマドはアッラーの使者なり」への敬意を表しています。
ヨルダン川
国名はヘブライ語で「流れ下る」の意をもつヨルダン川の名前に由来しています。
ヨルダンに行くには?
日本からヨルダンへは直行便が就航していません。行き帰り最低1カ所で乗り換える必要があります。日本から首都アンマンへ行く場合、アラブ首長国連邦のドバイやカタールのドーハなどで乗り継ぎが可能です。
ヨルダンに入国するためには、ビザが必要です。ビザの取得(無料)はヨルダン・ハシェミット王国大使館(東京)にて可能ですが、ヨルダン到着時にアライバルビザの取得(キング・フセイン国境を除く)もできます。
2023年9月現在、パスポート残存有効期限は、ヨルダン入国日に6カ月以上、未使用査証欄は見開き2ページ以上が必要です。
また、空路・陸路での入国者は、Visit Jordanウェブサイトへ登録し、QRコードの取得および健康状況申請書/位置情報フォームの提出が必須なほか、滞在期間をカバーする海外旅行保険の加入が必要です。入国時に係官に提示を求められる場合があります。
なお、イスラエルの入国印がパスポートに押されている場合、イスラエルと対立関係にあるアラブ諸国(イラク、レバノン、リビア、サウジアラビア、スーダン、シリア、イエメン、ソマリア、イラン)に入国できない可能性がありますのでご注意ください。
ヨルダンの最新の渡航情報について詳しくは下記をご覧ください。
古代遺跡と近代的な建物が混在する、7つの丘に囲まれた首都「アンマン」
ヨルダン北部、ヨルダン川の東約40km、標高約700mの高原に位置する「アンマン」は、6,000年以上の歴史を持つ世界最古の都市のひとつで、ローマ時代は「フィラデルフィア」と呼ばれていました。
一番の見どころは「城塞 (シタデル)」。アンマン市街で最も高い丘の上にあり、ローマ時代、ビザンティン時代、ウマイヤ朝時代の影響を受けた建築物が残っています。この遺跡の南端には、162年~166年に建てられたヘラクレス神殿も! 想像よりも大きく、その壮大な姿に驚くかもしれません。さらに崖側の大きな石の横に立つと、アンマン市街を一望できますよ。近くにある巨大なヘラクレス像の一部だと考えられているものにも、ぜひ注目してみてくださいね。
2世紀につくられた「ローマ円形劇場」も見逃せません。保存状態が良く、半円形で6,000人収容できます。太陽の猛烈な暑さから観客を保護するために北向きに建てられたという点も興味深いです。
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2013年にラアス・アルアイン地区にオープンした「ヨルダン博物館」も必見です。先史時代から、ナバタイ文化、ローマ時代、イスラーム時代、現代までのヨルダンの歴史を辿ることができます。なんと1947年に死海沿岸の北西部にあるクムランの洞窟で発見されて以来、世界中から注目され続けている「死海文書」も収蔵されているのです!
時間に余裕があれば、アンマン市内からバスで1時間ほどの場所にある「ジェラシュ遺跡」へ。古代ローマ時代の遺跡ですが、石のギリシャ様式の神殿やローマ劇場、列柱通りを見ることができます。
マンサフ
また、羊肉を乾燥ヨーグルトで料理した伝統料理「マンサフ」や、羊肉と野菜を串に刺して焼いた「ケバブ」、ひよこ豆で作る中東発祥のコロッケのようなものを挟んだ「ファラフェルサンド」も味わいたいですね。旧市街には庶民的なスーク(市場)やゴールドスークがあり、お土産探しにおすすめ。
海上交通の要所! ヨルダン唯一の海に面した湾岸都市「アカバ」
ヨルダン南端の港湾都市「アカバ」。同国唯一の港湾であり、ソロモン王の時代から続く海上交通の要所です。メッカへの中継地でもあります。
「シャリフ・フセイン・ブン・アリー・モスク」は人気の観光スポット。エレガントな白亜の外観が目を引くこのモスクは、ヨルダンのモスクの中で最大のドームを誇ります。このモスクを訪れれば、静かで敬虔な時間を過ごすことができそうですね。
紀元前4,000年の青銅器のコレクションが展示されている「アカバ考古学博物館」も見応えがあります。9世紀のコーランの詩の大きな碑文や、モロッコのシジルマサで鋳造された金貨なども鑑賞できます。
また、砂漠が多いイメージのヨルダンですが、アカバは世界中のダイバーの憧れの海「紅海」に面しているため、マリンスポーツが盛んです。シュノーケリングやグラスボートなども楽しめますよ。
アカバの海沿いにある大きな「アラブ反乱旗」にもぜひ目を向けてくださいね。1917年にハーシム家のフサイン・イブン・アリーがオスマン帝国からの自立を目指した際、掲げたものでアカバのシンボル的な存在です。
そのほか、12世紀に十字軍によって築かれた「アカバ城」、7世紀ごろの都市遺跡「アイラ遺跡」も。
アカバは積極的に観光するよりも、マリンスポーツを楽しんだり、ゆっくりしたいときに訪れたい街だといえます。
アンマンからアカバまでは、国内線で55分です。
“ローズレッド・シティ”と呼ばれる一際美しい古代都市「ペトラ遺跡」
ヨルダンには世界遺産が6つありますが、最も有名なのが1985年に世界文化遺産に登録された「ペトラ遺跡」でしょう。紀元前2世紀頃、ヨルダンの首都アンマンの南東に、隊商の民であるナバテア人が自然の岩山を堀り抜いて築いた都市の遺跡群です。ローマの属州となってからも隊商都市として栄えた歴史があります。この遺跡は、1812年に偶然発見されました。それまで何世紀にもわたり忘れ去られていたのです。
最大の特徴は入り口がひとつなところ。砂岩をくり抜いて造られた遺跡群に到達するためには、断崖絶壁に囲まれた「シク」と呼ばれる一本道を通る必要があります。頭上に迫る断崖の高さは約60〜100mで、道幅は狭く迫力満点です。
最も美しいとされる「エル・ハズネ」は、紀元前1世紀頃につくられました。高さ約30m、間口約25m、ヘレニズム様式の影響を受けた2階構造の建物で、映画『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』の舞台になり一躍有名に! 残念ながら使用目的はいまだに不明ですが、一度は訪れたい遺跡だといえます。
さらに奥には、円形劇場などのローマ遺跡、王家の墓と呼ばれる岩窟墳墓群、ペトラ最大の遺跡エド・ディルなどがあり、見どころ盛りだくさんです。特に、谷がバラ色に染まる夕暮れ時は、息を呑むような美しい光景を眺めることができますよ。
ヨルダンの商業・文化の中心地だった「サルト – 寛容と都市的ホスピタリティの場」
ヨルダン中西部のバルカ高原に位置する、3つの密集した丘の上に築かれた街「サルト」は、2021年、世界遺産の文化遺産に登録されました。
オスマン帝国支配下の最後の60年間、この地域はナブルス、シリア、レバノンからの貿易、銀行業、農業で富を築いた商人によって繁栄。それにより、熟練した職人を引き寄せ、田舎の集落を独特のレイアウトと建築を備えた街に生まれ変わらせることに。
そのため、今でも市街地にはアールヌーヴォーやネオコロニアルスタイルがこの地の伝統と融合した、歴史的建造物が残っています。これらの18〜19世紀に建てられた黄色い建造物は、優れた技巧が施されているのがポイントです。
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また、イスラム教とキリスト教が共生しているのも魅力。この街には教会とモスクが点在しており、教会でイスラム教の礼拝を受け入れるなど、サルトの人々の寛容さを垣間見ることができます。
さらに、サルトはJICAが支援していたことでも有名。博物館や観光トレイル整備、エコミュージアム構想提案などを通じ、街全体の観光振興をサポートしていたのです。あまり日本人には馴染みがないサルトですが、ヨルダンに渡航する機会があれば、ぜひ行ってみたいですね。
アンマンからサルトまでは車で50分ほどなので、日帰り観光ができますよ。
ヨルダンで人気のスポーツは?
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ヨルダンで一番人気のスポーツはサッカーです。ヨルダン国民にとってサッカーは身近なスポーツで、近所の人や友人だけでなく、知らない人と一緒にプレーすることもあるとか。2023年7月30日の最新FIFA世界ランキングでは82位になっています。
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