街を歩けばアートに当たる!? 廃墟ポテンシャルが生きる“街ナカ”アート
大阪中心部からも、地下鉄で20分ほどで行ける北加賀屋。1970年代まで造船業で栄えた街は、時代の変化とともに工場跡や倉庫跡、空き家などが目立つ状態に。そんな廃墟のポテンシャル!? を生かした“街ナカ”アート構想が2004年に始動。芸術・文化の情報発信基地、アーティストやクリエイターが集い、現在では通りを曲がればアート作品に出会える街に。
駅からすぐの白いビルの壁にも、消火栓を生かした可愛らしいロボットが! これはフランスのアーティストoakoakによるウォールアート。
その横には黄色いアヒルが池にぷかぷか! コレを見つけると幸せが訪れるというハッピーラバー・ダック。
駐車場のシャッターには色鮮やかな「K」「K」の文字が。イギリスのアーティストBen Eineによるもので、“KITAKAGAYA”のふたつの「K」をイメージ。
こんな風に商店街や住宅街の中に溶け込み、前触れなしに突然現れるアート作品。2006年ごろから増え始め、現在では約40にぼる作品が街中に散りばめられているとか。しかも、今なお増殖中で、街が現在進行形で変わっているところがスゴいポイント。
こんなガイドマップも用意されているので、フォトジェニックなスポットを探したり、宝探し気分で“街ナカ”アートを楽しめるのです。
こちらの作品は、隣家の解体で壁面に残る家の跡を生かした牡丹 靖佳の「ロバの家」。
アート作品は駅から程よい距離間に点在し、2時間ほどの街歩きが目安。レストランやカフェなどもあるので、休憩しながら時間を気にせずのんびりと楽しめます。
砂の女は美しすぎる! 景観ギャップに心臓ドックン
最も驚いたのは、住宅が密集する小路を曲がった先に現れるREMAの「FOREIGIN MATTER:’Sand in woman’(異物:砂の女)」。2024年3月に誕生した新作(以前はグランフロント大阪に展示)。
異様ともいえる圧倒的なインパクト。力強い眼差しをもちながら、なめらかな肌、やわらかい唇、風に揺れそうな髪など、思わず吸い込まれる美しさ。しかもこの作品、3Dプリンターで制作され、直径1mm 以下の砂によってできているんです!
周囲の景観とのギャップがありすぎてめまいがしそう。見ているだけで、なぜか心臓がドキドキするんです。
高さ約3.8mの“砂の女”は、風雨にさらされ、いつかは大地に帰ってしまうという儚さすら感じさせる優しさと力強さ。ぜひ、見つけてじっくりと鑑賞してください。
壁・シャッター・窓・室外機!! いろいろなものがアート作品に大変身
北加賀屋の“街ナカ”アートは、まだまだあります! 無邪気な子どもが名画に落書きをしているワンシーンを、店舗の壁面に描いたのはdotmastersの作品で、遊び心たっぷり。
植物人間が右下にいる!? Jeremy Yamamuraのウォールアートは、DOGZZZのアイコニックな犬のキャラクターが家から飛び出しそうなほど楽しげ。
室外機のファン部分を和傘に見立てたり……
マンションの前に横たわる褐色の大きな物体?
絶滅危惧種のカスミサンショウウオがいたり……
防潮堤には、約100mに渡りカラフルでコミカルな宇宙人が描かれていたりと、楽しめるものばかり。
この防潮堤の奥にある建物がドックであった、近代化産業遺産「名村造船所大阪工場跡地」。現在は、北加賀屋のランドマークともいえる「クリエイティブセンター大阪」になっています。
迷路のような防潮堤アートやビルの壁面で遊ぶ黒猫。
よ~く見てください! 4つの細長い窓は、蒸気機関車の車両になっているんです。
New Generation Plant「未来の植物」をコンセプトにした増田セバスチャンの作品は、子どもが遊んでいるようにも見えるし、キスしているようにも見える不思議な魅力をもっています。
“街ナカ”にアートが散りばめられ、アーティストやクリエイターが活動できる住居や工房が点在している北加賀屋の街。間近で見ることができるアート作品とともに、現在進行形で変化する街を楽しんでください。
[Photos by ©︎tawawa]
TAI WATANABE ライター・エディター・ディレクター
10代のころ、自転車でメキシコ・グアテマラを縦断し多くのことを学ぶ。それをきっかけに情報誌・旅行誌の取材を通じて、中南米・カリブ海を中心に世界各国で豊富な取材を経験。海外を見てきたからこそ日本は大好き! 紙とWEB、ふたつの媒体特性に精通した複眼的視点を持っている。
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