どこの国のものでもない! 地球上で最も高い大陸「南極」
平均気温はマイナス50度、平均標高が約2,200mにもおよぶ南極は、地球上で最も高い大陸です。大陸の最高峰はビンソンマシフの4,892m。富士山よりも1,000m以上高い山もあります。
そんな南極大陸には世界各国の観測基地などが点在しています。我が国日本の南極昭和基地は南極大陸上にはなく、南極大陸氷縁から西に4kmほどの場所にある東オングル島に位置します。なお、1961年に発効された南極条約により、南極はどこの国のものでもありません。
湖底の森や赤い滝など「南極」の謎とトリビア5選
さて、そんな南極にはどんな謎やトリビアが存在するのでしょうか。
南極の湖底には森が広がっている
南極は地球上で生物が暮らすのに最も過酷な環境とされていますが、氷や雪が少ない露岩域には湖が100個以上あるそうです。そして、そこには藻類や菌類、バクテリアなどが集まって形成された円柱状のコケの集合体「コケ坊主」が存在。コケのほか、アオミドロのような緑藻類や、藍藻類が集合体になったものもあるとか。
また、南極にはボストーク湖をはじめとする氷底湖(地底湖)も! これらの湖の中には、1,500万年以上地底に閉ざされていたものもあり、岩に生存する微生物たちが独自の生態系を形成していると考えられています。
ボストーク湖の暗く冷たい水域は、木星の衛星「エウロパ」に類似。そのため、ボストーク湖で生物が生きられるのなら、エウロパの海にも生命が存在する可能性があります。
南極には水が赤い色をした「血の滝」がある
南極のテイラー氷河から滲み出る赤い色をした滝のことを「血の滝」といいます。
1911年に地質学者グリフィス・テイラーが発見した、当時は水中に生息していた紅藻類の鮮やかな赤色が原因とされていました。
ですが、2023年に科学者たちにより、氷からしみ出した鉄塩が空気に触れると赤くなることが発覚!
2017年の研究で、テイラー氷河がおよそ200万年前に形成され、その下に塩水の湖が閉じ込められ、それが氷河の端に達したことで、塩水をしみ出すようになったそうです。
また2015年、この氷底湖には、光も酸素もない環境を生き抜くことができる稀有な微生物群が生息していることも判明。そのような極限状況を生き抜くために、鉄と硫酸塩を利用しているとか。
南極に存在する隕石がすごい!
南極では、これまでにおよそ5万個の隕石が発見されています。これらの一つひとつには、太陽系の進化を知るヒントが隠されているかもしれません。
隕石の成分を調べることで、太陽系が生まれた頃の情報を入手することができるのです。
南極で最初に見つかった「月の石」からは、小惑星よりも大きな天体の物体が地球に届く場合があることがわかりました。今のうちに、ひとつでも多くの隕石を見つけ、太陽系の進化を知る手がかりを増やせたらいいですよね。
南極の氷から太古の地球がわかる!?
南極の厚い氷のなかには、氷が形成された何十万年も前の空気が閉じ込められています。そのため、その氷のなかの空気を取り出して成分を調べることで、太古から現在の地球の気候の移り変わりを知ることができるのです。
例えば、氷のなかの二酸化炭素を分析することで地球温暖化の対策や将来の地球に与える影響を考えることができます。
具体的には、日本のドームふじ観測所では、深さ2,500mにおよぶ氷を掘り出しています。その掘り出した氷を顕微鏡で見ると氷の結晶の間に、空気のつぶがたくさん見られますが、この空気に含まれる二酸化炭素は、石油や石炭を燃やし始めた19世紀から徐々に増え始めているのです。特に1950年以降は急増しているのだとか。
地球の磁場がここ数年で急速に弱まっている
南極には「南極点」と呼ばれる地理的な極点と、地磁気の極である「南磁極」が存在します。地球内部の外核の対流によって発生する地球の磁場は、常に変動しており、有害な太陽放射などから地球を守っているのです。
しかし、地球の磁場は過去200年間で約9%低下。ここ数年においては、急速に磁場が弱まっているそうです。これにより、北と南の磁極が入れ替わる「磁極の逆転(ポールシフト)」が起こる可能性が示唆されています。ポールシフトは、過去2,000万年の間に、約20万年から30万年に1回のサイクルで発生しているそうです。最後に発生したのが80万年近く前であることがわかっており、いつポールシフトが起こってもおかしくないという噂も。
そのほかの南極トリビア
南極氷床は最も厚いところで約4,000mを超えるものもあり、その重量は25,000兆トンともいわれています。その氷床の重量によって、南極の大地は沈んでいると考えられているそうです。
しかし、南極の年間降水量は200mm以下と東京の10分の1という少なさ。内陸には、1年間に3mmほどしか雪が降らない地域も! この降水量はサハラ砂漠よりも少ないため、南極は「氷の砂漠(白い砂漠)」と呼ばれることもあります。
このような環境のなかで、なぜ厚い氷床が形成されたかといえば、降った雪やダイヤモンドダストが溶けずに積もっていき、その雪が新たに降った雪によって押しつぶされ氷となり、それを繰り返した結果だそうです。
南極は太陽系の情報や、古代の地球、はたまた未来の地球を予測できる可能性に満ちた大陸です。この先、南極の研究が進み、これまで謎とされてきたことが明らかになる日がくるかもしれませんね。
[参考]
公益財団法人 日本極地研究振興会
国土交通省 気象庁
極(2014年秋号)|南極の湖底に広がる森の謎|国立極地研究所
南極氷床4km下の氷底湖に、多様な生命体|WIRED
2018年は「巨大地震頻発」の年に、地球物理学者らが警告|Forbes JAPAN
南極で「血の滝」が発生するメカニズムを科学者が解明|BUSINESS INSIDER
なんきょくキッズ|環境省
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