異民族の侵入を防ぐために建造された「万里の長城」
「万里の長城」は、中国の北方に築かれた防衛施設です。紀元前7世紀ごろから、異民族の侵入を防ぐために建設が始まりました。
長城は東は渤海湾(ぼっかいわん)の山海関(さんかいかん)から、西はゴビ砂漠の嘉峪関(かよくかん)まで、全長約21,196kmにおよぶといわれています。
この建造物は、山岳地帯や砂漠、草原といった厳しい地形を貫く形で築かれているのが特徴。また、長城を構成する壁や要塞、見張り台、関所などが複雑に組み合わさっているのもポイントです。
意外な事実も!? 「万里の長城」の謎とトリビア5選
ここからは「万里の長城」の謎とトリビア5選をご紹介します。
本当に「万里」もあるのか?
「万里の長城」という名称から、長さは「1万里(約5,000km)」と思われることもあるでしょう。しかし、実際の万里の長城は21,196kmといわれています。これは日本列島の約7倍の長さに相当! 1万里ではなく、おおよそ4万里の長さを誇ることになります。
また、長城はずっと連なっておらず、複数の区間に分かれている点も意外な事実です。
すべて人の手により造られている
万里の長城の建造には、石やレンガのほか、地域によっては、土を固めただけの「版築(はんちく)」と呼ばれる工法が用いられているそうです。驚くべきことに、建造はほとんど人の手作業によるもので、膨大な労力と時間を要したと考えられています。
宇宙から見えるって本当!?

※画像はイメージです
よく「万里の長城は宇宙から肉眼で見える唯一の建造物」といわれますが、これは誤解です。実際には、地球軌道上から長城を肉眼で確認することは困難であり、NASAも公式に「高性能レンズがなければ長城は地球の軌道から見えない」と発表しています。
万里の長城にまつわる悲しい伝説がある
万里の長城にまつわる伝説として、有名なのは「孟姜女(もうきょうじょ)」の物語です。彼女の夫は長城建設に駆り出され、過酷な労働の末に亡くなります。夫を探しにきた孟姜女は、夫の死を知って泣き崩れ、その涙で長城の一部が崩れて、そこから彼女は夫の骨を捜し出し、持ち帰ったという話です。
実は「万里の長城」という名称は後世のもの
現在では「万里の長城」という名称が定着していますが、実はこの名称は明代(1368年〜1644年)以降に普及したものなのだとか!
秦の始皇帝の時代には「長城」と呼ばれていたそうです。また、地域によっては「辺牆(へんしょう)」「遼東辺牆(りょうとうへんしょう)」と呼ばれていたこともあったといいます。
観光で行ける! 万里の長城のスポット3選
ここからは、観光で気楽に行ける万里の長城のスポット3選をご紹介。いずれも異なる魅力があります。
八達嶺長城(はったつれいちょうじょう)
北京市内から最もアクセスしやすく、観光客が最も訪れる万里の長城の代表的スポットです。明代に再建されたこの長城は、保存状態が非常に良好で、観光地としてよく整備されています。石造りの城壁は高さ7~8m、幅約5~6mと頑丈。城壁の上を歩きながら雄大な景色を楽しめます。徒歩以外にロープウェイを利用して城壁にアクセスできるのも魅力です。
慕田峪長城(ぼでんよくちょうじょう)
八達嶺長城に次ぐ人気スポットで、人混みを避けてゆっくり長城を楽しみたい方におすすめです。例年10月ごろには、紅葉が山々を彩り、絶景を堪能できます。こちらも明代に再建された長城ですが、城壁の保存状態は非常に良く、急斜面や階段の多い険しい場所も体験可能です。また、帰りはスライダー(滑り台)で降りるというユニークな体験もできます。
金山嶺長城(きんざんれいちょうじょう)
「最も美しい万里の長城」と称されるスポットです。特に明代の城壁がほぼ完全に残っており、壁の高低差や急勾配など、荒々しい長城の姿を眺めることができます。特に朝日や夕日に照らされる長城の景観は息を呑む美しさ! 写真撮影やハイキングを目的とする観光客に人気があります。
[参考]
How long is China’s Great Wall? 21,196 km|CHINA DAILY
Great Wall|NASA
秦漢時代の万里の長城、大半が漢代に建設と判明|新華社
北京市人民政府
Great Wall of China|Britannica
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