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憧れだったあの建物にAirbnbで宿泊できる!?
筆者が三鷹市民となったのは18年前。その頃から、カラフルで不思議なこの家の前を通るたび、「いつか中に入ってみたいなあ」と憧れておりました。その家が「三鷹天命反転住宅」という名前で、Airbnbでショートステイできると知ったのは、つい最近のこと。早速、仲間4人と3泊4日のワーケーション&ボードゲーム会を楽しむことにしたのです。
「三鷹天命反転住宅」とは?なぜ“死なないための家”と呼ばれるのか?

インターホンが斜め!彩り豊かな内外装は14色も使われていて、一部屋一部屋の色の組合せが全く異なるそう
“死なないための家”と謳われる、「三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー」。パワーワードが多すぎて、頭の中がはてなマークでいっぱいになりそうですが、こんな意味があるそうです。
三鷹天命反転住宅公式サイトより
今まで不可能と思われていたことが可能になるかもしれない=天命反転が可能になる、ということでもあります。荒川修作+マドリン・ギンズは「天命反転」の実践を成し遂げた人物として、ヘレン・ケラーを作品を制作する上でのモデルとしています。三鷹天命反転住宅は、私たち一人一人がヘレン・ケラーのようになれる可能性を秘めています。その意味において、三鷹天命反転住宅は「死なないための家」となるのです。
2005年の完成以来、世界各国から取材殺到。数々のメディアで紹介され続け、現在も宿泊者の半分は海外からの旅行者だそうです。口コミでも、刺激的な体験に感動する声が溢れています。
303号室に宿泊!中はどうなってるの?
ドアを開けた瞬間、思わず「外もスゴイけど中もスゴイ」と声を上げてしまうビビッドな室内。高い天井は赤と緑のスイカ色、真っ黄色の球体の部屋があり、思わず登りたくなるハシゴや登り棒、ありえない位置にある洗濯機やシャワーブース……すべてが刺激的。これからここで3日間過ごすと思うとワクワクが止まらなくなります。
どんどん歩きたくなる凸凹の床
室内に一歩足を踏み入れると、生まれて初めての硬い凸凹床の感触にハッとします。砂浜のような見た目ですが、ガッチリ硬く、足裏で床を捉える感触が楽しくて、どんどん歩きたくなる!
最高に裸足が気持ちいい。
「凸凹だと歩きにくいのでは?」と思うかもしれませんが、杖をついたおばあさんが、「ここなら私、杖なしでも歩けるかも」と杖を置いて歩いていたというエピソードも。床が凸凹だと足裏を使った歩き方を意識しやすく、意外と手でつかまる場所や座れる段差も多く、動きを部屋がサポートしてくれるんです。
球体の黄色の部屋で瞑想したりドライヤーしたり
筆者は黄色い球体の部屋で仕事や読書をしてみたかったのですが、安定して座れる位置を見つけられず断念。音が反響するので、スマホなどで音楽を流しながら部屋の外の様子を眺めていると、異世界から日常を覗き見ているような気分になります。
足を上げて中央に身ひとつで寝転ぶと快適! 思わず布団を敷いてみたのですが、腰が曲がってしまい、寝心地はイマイチでした。夜はドライヤー部屋として大人気。

床から壁まで一気に掃除できる
なんと!トイレにドアはありません

オープンすぎるトイレ。ウォッシュレットやトイレブラシ、サニタリーボックスはあります
実は……トイレにドアはないのです! というか、この家には障子のある部屋が1つあるだけで、そもそもドアがありません。
とはいえ、トイレはシャワーブースが目隠しになって見えないようになっているのでご安心を。音が気になる人は掃除機をつけてね、という説明がありましたが、音楽やおしゃべりがあると特に気にならず、筆者らのステイで掃除機を音消しに使う人はいませんでした。
ハンモックの浮遊感にハマる!
ハンモックは、あまりの居心地のよさにいつも争奪戦。印象的だったのは、さほどハンモックに興味を持っていなかった人でも実際体験すると「え。何コレいい!」とハマってしまうこと。昼寝したり読書したり、ただボーッとしたり。
揺らぎと浮遊感が、ゆりかごのようなスリングのような、はたまた羊水の中のような。癒やしとインスピレーションを得られる場所でした。
登り棒やハシゴからの景色は?
一方で、登り棒やハシゴは、大人になるとあまり使わない筋肉を使ういいきっかけに。同時に、普段は感じない体の重さを実感します。高い場所からだと、いつもは見えないものが見える。客観的になれるのも面白いところ。
仕事をしていても開放感がある
一番落ち着いてPC作業ができたのはリビングテーブル。天井が高く開放感があるので、軽やかな気持ちで仕事ができる空間でした。創作活動に集中したいときなどもいいかもしれません。
キッチンは超機能的です!おうち居酒屋気分
家の中心にあるキッチンは、IHでオーブンやグリルもあり、超機能的。カウンター越しにできた料理を並べて、居酒屋気分で楽しめます。コンビニは歩いて2分、スーパーマーケットは歩いて10分くらい。ウーバーイーツも充実しています。
和室はボドゲ部屋に
ボードゲーム好きの筆者らは仕事の後のボドゲを3晩楽しみました。寝室の1つである円形の畳の部屋がボドゲ部屋。カタンにドミニオンにゴブレットゴブラーズ。あいうえバトルから偏見プロフィールまでやり尽くしました! いつかワーケーションなしの三日三晩ボドゲ会もやってみたい。
3日間この家で過ごすとどうなる?
3日間この家で過ごすと何が起きるのか? 一言でいうと、筆者の場合「澱みや重さから解放される」です。
天井が広くドアがないので開放感がある。遮るものがないのでつい視線があちこち動き、視野が広がる。足裏の刺激が楽しくて、どんどん歩きたくなる。ハンモックに揺られて浮遊感と共に心が弾む。すべての空間がつながっているので、すべての人とつながっている。動きが促され、澱みがなくなっていく。
「死」という「天命」は、心と体の澱みや重さであるとも言えるのではと思ったのです。澱みや重さから解放されて、心と体が軽くなれば、この家のコンセプトである「天命反転」、「不可能を可能にする」こともできるのではと。
筆者はこの家で、足裏をきちんと使って歩くことを意識するようになりました。
ハンモックの浮遊感は、心配事を脇に置いておいて、“今ここ”を楽しむことを教えてくれました。
ハシゴの上からの景色は、客観的な鳥の目を思い出すきっかけになりました。
オレンジとブルーの組み合わせはおしゃれな映画のポスターみたいだな、など部屋のあちこちの色の組み合わせにインスピレーションをもらいました。
チェックアウトのときは、この家から離れるのが名残惜しく、宿泊からちょうど1週間経った今は、もう一度あの家に戻りたい、と思うほどです。
ただし、誰もがそう思うかというと、そうではありません。宿泊した仲間のなかには、「床が硬いとケガしそうで怖い」「ずっと住むならやっぱりトイレのドアは欲しい」という人もいました。
はたして、あなたはこの家で、何を感じるのでしょうか。
公式より細かい!設備を写真で超紹介!
電源は意外と豊富!

1・2・3 キッチンの天井からぶら下がるコードの先には2つのコンセント! 電気ケトルや炊飯器の電源、スマホの充電にも役立ちました
芸術作品のような家というと、機能性は低いのではと思うかもしれませんが、むしろ反対。電源は各部屋にあり、タコ足なしでOKでした。wi-fiもサクサク快適。テレビやスピーカー、プロジェクターはありません。
浮かせる収納の達人になる

写真中央 ハンモックの近くでバッグを浮かせる収納! 本やスマホやPCなど、必要なものを動かず出し入れできるようにしました
ミニマルでオープンな空間なので収納に困るかと思いきや、天井に無数に設置されたロープ止め金具にS字フックをかけて、どこでもハンガーやバッグを掛けることができます。洗面所でも、タオルやスキンケアグッズを浮かせる収納が大活躍。
キッチン用品を写真で全紹介!
キッチンはIHクッキングヒーター、オーブンレンジ(グリルや解凍のメニューもあり)、3合炊きの炊飯器、冷蔵庫(冷凍庫は上部に小さなスペースあり)完備。ゴミ箱やゴミ袋もあります。

おろし金、ピーラー、おたま、菜箸、ヘラ、トング、しゃもじ、泡立て器、缶切り、栓抜き、キッチンバサミ、茶漉し、計量スプーン/水切りラック、布巾、雑巾、包丁、果物ナイフ、まな板、生ゴミ用ボックス/電気ケトル、ミネラルウォーター×4、ドリップコーヒー×8、ティーバッグ×8、断熱紙コップ×8、シュガー/マグカップ×4、ガラスコップ×4、丸皿×4、ボウル食器×4、茶碗×4、お椀×4/フライパン、鍋、ティーポット、コーヒーポット、コーヒードリッパー、ボウル、ザル、計量カップ/スプーン×4、フォーク×3、ナイフ×4、ティースプーン×5、箸×4/キッチンスポンジ、食器用洗剤、消毒液、ハンドソープ、ペーパータオル
調理器具は簡単なものがそろっているので、筆者らは割と自炊しました。調味料やラップ類はないので、持ち込んだり買ってきたりする必要があります。
電気ケトルとコーヒー・紅茶が用意されているのが、お茶好きの筆者にはうれしかったです。
ドラム式洗濯機で乾燥までOK!バスタオルもあります

ドラム式洗濯乾燥機、洗濯かご、ジェルボール洗剤、洗濯バサミ、ハンガー、バスマット、ヘアドライヤー、シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、バスタオル×6、フェイスタオル×6、アイロン、ダイソンの空気清浄ファンヒーター、マキタの充電式クリーナ、トイレットペーパー、ティッシュペーパー
シャワーブースはドアが閉まりますが、中が見えるので備え付けのシャワーカーテンを引いて使用。着替えはシャワーブースの中か、裏のトイレスペースでとなるので、そこは少し不便です。
洗濯はドラム式洗濯機で乾燥までワンストップ! 室内物干しもありますが、一度も使いませんでした。乾燥機にかけたくない服などは、前述の通り天井からS字フックでハンガー干し。
パジャマと歯ブラシ、クレンジングや洗顔料、化粧水・乳液などのスキンケア類はないので持参しましょう。
布団は人数分用意してくれます
エアコンは2台ともリビングにあり、2つの寝室にはついていません。熱帯夜の日はエアコンつけっぱなしで冷気を回しても、少し暑く感じる人はいました。
1人1泊12,892円は安いと思いました
今回は4人で3泊しましたが、1泊換算すると、1人1泊12,892円。この刺激的な体験に対してこの価格は、筆者は安いと感じました。
※注:最低3泊からなので、1泊だけ体験することはできません
もちろんここには温泉や露天風呂はないし、夕食を用意してくれたり布団を敷いてくれたりするスタッフさんはいません。清潔で快適な空間ですが、部屋から絶景は見えないし、プライバシーを重視したい人には厳しい環境かもしれません。
それでも、24時間部屋の中にいても飽きない、重力から解放され、心と体の可能性を探求できるひとときでした。
人間の持つ可能性に気づかせてくれる家=死なないための家は、ショートステイだけでなく、見学会やテレワークでの利用もできるそうです。
9月13日(土)・14日(日)・15日(月・祝)
https://www.rdloftsmitaka.com/tour/
テレワーク
https://www.rdloftsmitaka.com/remotework/
利用日時:月曜〜金曜 11:00〜17:00
利用料金・人数:
小学生以上一般 6,600 円/人(最大6名様)
幼児 0円/人(最大2名様)
ショートステイ
気配コーディネーティングの部屋(4名まで)◀︎今回宿泊したのはこちら
極限で似るものの部屋(2名まで)
https://www.rdloftsmitaka.com/s_stay/
今回宿泊した部屋の詳細:
三鷹天命反転住宅 303号室(4人用)
間取り 60.36㎡ + バルコニー 11.77㎡ (3LDK)
宿泊人数 4名様まで
チェックイン:13:00〜
チェックアウト:11:00
宿泊料金例)筆者宿泊時調べ
1人3泊 82,700円(1人1泊27,567円)
2人3泊 106,700円(1人1泊17,784円)
3人3泊 130,700円(1人1泊14,523円)
4人3泊 154,700円(1人1泊12,892円)
>>詳細・予約
[All Photos by Aya Yamaguchi]