なぜ日本人だけを受け入れる宿にしたのか?バンコクの日本人宿「うらしま館」

Posted by: 伊藤良二

掲載日: Jan 27th, 2026

2025年12月、noteを眺めていると気になる名前を見つけました。「うらしま館」。日本人がバンコクのBTSバンチャック近くに開業した、日本人専用の宿です。バンコクに日本人宿ができたという点も興味深いですが、それ以上に目を引いたのは「日本人しか泊まれない」という方針でした。近年の海外事業において、国籍を限定する宿は決して一般的とは言えません。しかも立地は、観光の中心地ではなく住宅街のバンチャック。なぜこの場所で、なぜ日本人専用なのか。その理由を知りたいと思い、運営者に話を聞きました。

『日本人が気兼ねなく休める宿にしたい』元バックパッカーが開く小さな日本人宿

なぜ今の時代に日本人だけの宿?

うらしま館 内装
うらしま館の運営者、中島さんによれば、日本人専用にした最大の理由は「宿泊者が余計な気を遣わずに過ごせる空間をつくりたかったから」だといいます。

海外のホステルやゲストハウスでは、共用スペースで英語が飛び交い、外国人同士が賑やかに過ごしている光景をよく目にします。その場に自然に溶け込める日本人は、決して多くありません。英語力の問題だけではなく、場の空気や距離感に無意識の緊張を感じてしまう人も多いでしょう。

生活習慣の違いも同様です。深夜の騒音や共有スペースの使い方に違和感を覚えても、注意できずに我慢してしまった経験がある人は少なくないはずです。

うらしま館 本棚
うらしま館が目指したのは、無理に国際交流をしなくていい場所。英語を話そうと頑張らなくていい場所。共有スペースで居場所を探さなくていい場所です。日本人専用という選択は排他のためではなく、宿泊者の負荷を下げるための設計でした。

なお、外国人の宿泊は原則として受け入れていませんが、日本語が話せ、日本の文化や距離感を理解している場合に限り、例外的に受け入れることもあるそうです。

世界を旅した中島さんが、ゲストハウスを始めるきっかけ

うらしま館を運営する中島さんは、1990年代から東南アジアや東欧を旅してきた元バックパッカーです。バンコクでは当時発行されていた日本語フリーペーパーの編集に携わり、就労や移住の経験も重ねてきました。海外に慣れている一方で、日本人旅行者の感覚もよく理解している人物です。

うらしま館 アイキャッチ
ゲストハウスを運営しようと思ったきっかけは、世界的なパンデミックでした。
フリーペーパー退職後の約3年間、中島さんはバンコク市内のゲストハウスで働くことになります。

「現場で多くの日本人旅行者と接する中で、宿泊に関するいろいろな要望や悩みを、直接聞くようになりました。どんな点で疲れているのか。何があると楽なのか。そういう声を、毎日のように受け取っていたんです」

この経験が、後に日本人専用のゲストハウスを立ち上げようと考える、大きなきっかけになりました。

なぜバンチャックが、この宿に合っていたのか

バンチャック
バンチャックを選んだ理由は、明確なビジネス戦略が先にあったわけではありません。「駅から徒歩5分以内」「コンビニが近い」「日当たりがよい」「冠水しない」「夜は静か」「治安がよい」。この条件を一つずつ満たす物件を探していく中で、結果的に行き着いたのがバンチャックでした。

うらしま館 外の様子
観光の中心地ではありませんが、その分、生活の空気が色濃く残るエリアです。スクンビット中心部のような日本化された環境とは異なり、ローカルな日常がある一方で、BTSを使えば中心部まで20分ほど。旅と生活の中間にあるこの距離感が、うらしま館の静かな滞在スタイルと相性がよかったといいます。

『うらしま館』の部屋と空間の設計

うらしま館 設備
客室はシングル、ダブルのプライベートルームに、男女別ドミトリーを加えた全14ベッド。部屋自体は決して広くはなく、基本的には一人での滞在に向いた設計です。

うらしま館 風呂

うらしま館 シャワー
日本人専用宿という方針もあり、水回りは特に清潔感が保たれています。開業したばかりという点を差し引いても、日本人旅行者が不快に感じやすい部分に目が行き届いている印象です。

うらしま館 ベッドルーム
内装は茶系とベージュを基調に統一。寝具やタオルも同系色でそろえ、視界に入る情報量を抑えています。旅先で気持ちを高ぶらせるより、まずは神経を休めてほしいという考えからの設計です。

うらしま館 設備2
ロビーには昭和を思わせるモザイク風ガラスを取り入れ、どこか懐かしく落ち着いた雰囲気。屋上には宿泊者が自由に使える洗濯機も備えられており、長く旅をしてきた人ほど、その配慮に気づくはずです。静かに過ごしたいとき、無理をせず一度立ち止まりたい人に向いた宿だと感じました。

うらしま館 洗濯機
「日本人が旅の途中で感じやすい、無意識の疲れを癒せる宿にしたいと思っています。日々、周辺情報も地図にまとめて更新しています。日本人宿ではありますが、一歩外に出ればローカルなバンコクの暮らしがある。その距離感も含めて、うらしま館を感じてもらえたらうれしいです」と話す中島さんの言葉通り、ホスピタリティに富んだ施設です。

うらしま館
78 Sukhumvit 95/1 Alley, Bang Chak, Phra Khanong, Bangkok 10260
公式WEBサイト:https://www.urashima-thai.com/
電話:+66-95-783-3312(日本語のみ:受付時間日本時間10:00~20:00)
Mail:urashima.thailand@gmail.com
SNS:LINEnote

◆基本情報
・日本語対応可能
・日本人スタッフ常駐
・館内の全エアコン、洗濯機、電子レンジ、給湯器は信頼と安心の日本系メーカー製を採用
・無料サービス:シャンプー、ボディソープ、トイレットペーパー、衣類用洗剤、周辺マップ、ペットボトル入りドリンクウォーター(1日につき1本無料)
・無料レンタル:洗濯機、ドライヤー、電子レンジ、冷蔵庫、電気ポット、ガスレンジ、食器類、各種ガイドブック、バス・フェイスタオル(1人1セット)
・有料販売:ビール、ソフトドリンク、各種アメニティー(ヘアゴム、歯ブラシ、カミソリ、生理用品、耳栓など)、衣類用柔軟剤、お土産、カフェチケット、日本への荷物の配送サービス、長期の荷物預かりサービス
・有料貸出:館内着、バス・フェイスタオル(1人1セットを超える場合)

[photo Itoryoji]

travelist

PROFILE

伊藤良二

Ito Ryoji タイ在住ライター、タイ旅行ブロガー

タイ在住三年目のライターです。バンコクを拠点に現地取材と撮影を行い、ブログ「 タイ一択 」を運営しています。
集英社オンラインなど複数媒体で、タイの旅、文化、街の今を発信しています。

【キャッチフレーズ】
足で取材するバンコク在住ライター

タイ在住三年目のライターです。バンコクを拠点に現地取材と撮影を行い、ブログ「 タイ一択 」を運営しています。
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足で取材するバンコク在住ライター

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