公爵夫人が愛した毒草だらけの庭園は、北イングランド一人気の観光スポット!

Posted by: 倉田直子

掲載日: Mar 30th, 2016

英イングランドのノーサンバーランド北部にあるアニック(Alnwick)という街には、年間60万人が訪れる「北イングランドで一番人気のアトラクション」と言われる場所があります。どんなテーマパークかと思えば、それはなんと、あるお城の庭園。でもこの庭園、ただのお庭ではなかったのです・・・。

毒草だらけの危険な「ポイズン・ガーデン」

それは、ノーサンバーランド公爵夫人によって2005年にオープンされた「ポイズン・ガーデン」(The Poison Garden)。なんと、死に至ったり、幻覚をみせる植物ばかりが植えられているのです!

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園
(C) Graeme Peacock

庭園の入り口は、このような雰囲気。メルヘンチックで、おとぎ話の世界に迷い込めそうですね。

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園
(C) Margaret Whittaker

でも、近づくと門扉にはドクロと「ここの植物は殺傷能力あり」の記載が。イケナイ場所に踏み込んでいく不思議な高揚を覚えそうです。

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園
(C) Margaret Whittaker

庭園に出るためには、緑のトンネルを抜ける必要があります。別世界への入り口のようですね。

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園
(C) Margaret Whittaker

あっ!

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園
(C) Margaret Whittaker

ケージに入れられていたりするので、素人目にも危険な植物がよくわかります。

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園
(C) Margaret Whittaker

日本でも猛毒でよく知られているトリカブトも、ここでは堂々と咲いています。

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園
(C) Margaret Whittaker

専任ガイドが、毒草の解説をしてくれるツアーも。ガイドは来場者に、植物に触ったり、臭いをかいだりしないように注意をするそうです。それもそのはず、敷地内には生育に政府の認可が必要な毒草も多数生えているのです。実際に来園者が失神したりすることもあるというのだから、本気の毒ですね。盗難にあったりしないように24時間監視下に置かれているエピソードも、何やら背徳感を増強します。

では、そもそもこの庭は、どのような経緯でつくられたものなのでしょうか。それを知るには、まずこの庭園をかかえるお城から知っていく必要があります。

映画「ハリー・ポッター」の撮影にも使われたお城

この庭があるのは、アニック城(Alnwick Castle)という11世紀に建てられた歴史あるお城。

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園

その美しい佇まいから、近年では映画「ハリー・ポッター」のホグワーツ魔法魔術学校のロケ場所になったり、イギリスの大人気テレビシリーズ「ダウントン・アビー」の撮影に使われたりしています。このアニック城、英王室のウィンザー城に次ぎイングランドで二番目に大きい居住城(人が住んでいる城)なのだとか。

そして、そんな由緒正しいお城に住むのはノーサンバーランド公爵(12th Duke of Northumberland)のご一家。お父上である先々代公爵から爵位を譲り受けたお兄様が若くして亡くなられたため、普通の生活をしていたのに急に公爵にならざるを得なかった数奇な運命の当主です。

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園
(C) The Alnwick Garden

話題の「ポイズン・ガーデン」は、この公爵の夫人であるジェーンさん(Jane Percy, Duchess of Northumberland)が東京ドーム約3.6個分の広さ(約17万平方メートル)の庭園のリノベーションを担当したことから生まれました。お母さまが庭園運営をおこなっていたジェーンさんにはうってつけの仕事だったのでしょう、1996年にスタートした庭園の再生プロジェクトは快進撃をみせ、生まれ変わった庭園の美しさは人々を引き付けていきました。

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園

そして満を持して2005年に、庭園の一部に毒草だらけの「ポイズン・ガーデン」をオープンしたのです。公式ホームページ上で公爵夫人は、「何故世界中の庭園が薬草のヒーリング効果ばかりに注目するのか分かりません。私の知る限り、子供たちは毒草の致死効果や、どれくらい苦しむかとかいうことのほうによっぽど興味がありますよ」という内容のコメントを掲載しています。公爵夫人・・・! その言葉の毒にシビレます!

ダークな魅力と意外な効果

そういう公爵夫人のキャラクターもあいまって、「ポイズン・ガーデン」のダークな魅力は皮肉屋でブラックジョーク大好きなイギリス人たちに大うけしました。アニック城の他の庭園とも合わせると、今では年間60万人が訪れる北イングランド随一の人気観光地なのだとか。

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園
(C) Margaret Whittaker

ダークな面がフォーカスされがちなこのポイズンガーデンですが、訪れたら知らず知らずのうちに毒物や薬物の危険に関する知識が増えるという側面も。実はそれも公爵夫人の目的のひとつだと言われているので、その慧眼には恐れ入りますね。

触るとキケン!公爵夫人がオープンした毒草だらけの庭園

「ハリー・ポッター」や「ダウントン・アビー」の舞台となったお城見学と、「ポイズン・ガーデン」を合わせて巡る旅なんて素敵ではないでしょうか。

[Photos by Shutterstock.com]
[The Alnwick Garden, The Poison Garden]
[The Duchess of Northumberland and her £50m garden project]
[Alnwick Poison Gardens]
[Step Inside the World’s Most Dangerous Garden (If You Dare)]

PROFILE

倉田直子

Naoko Kurata ライター

オランダ在住ライター。元バックパッカーの旅行愛好家。2004年に映画ライターとしてデビュー。2008年、北アフリカのリビアへ移住後に海外在住ライターとして活動スタート。2011年から4年間のUKスコットランド生活を経て、2015年夏にオランダへ再移住。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」
https://www.amazon.co.jp/dp/B0758JCDTM/

オランダ在住ライター。元バックパッカーの旅行愛好家。2004年に映画ライターとしてデビュー。2008年、北アフリカのリビアへ移住後に海外在住ライターとして活動スタート。2011年から4年間のUKスコットランド生活を経て、2015年夏にオランダへ再移住。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」
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