日本と海外の文化ギャップは、TABIZINEでも長く人気を誇るテーマ。そのギャップを楽しめるのは、日本という国の独特の文化や風土あってこそです。そこで今回は、日本発祥の世界で愛されるもの、実は日本が世界一という意外なトピック、日本独特の興味深い文化などなど、知られざる日本の面白い部分を「日本の不思議」と題し特集したいと思います!
この夏も、全国各地でひょうが降ったというニュースが多くありました。ひょうは自動車をへこませたり、農作物を傷めたり、人にけがを負わせたりと極めて危険な自然現象ですが、実は世界最大のひょうが日本でかつて降っていたかもしれないとご存じでしたか?
そこで今回は熊谷地方気象台、国立気象局(米国)などの情報を基に、世界最大のひょうについて紹介したいと思います。
そもそもひょうってどうやってできるの?
そもそもひょう、どうしてあのような氷が空から降ってくるのでしょうか? 手元の『OUTDOOR』というバックパッカーのバイブルを見ると、雨の粒が落下しようとする途中に、雲の中の上昇気流で水の玉が上空に再び巻き上げられて氷結するところから始まるそう。
氷の粒は落下しようと下降を始めますが、そのたびに繰り返し上昇気流で吹き上げられて、表面に水分を得ながらどんどん大きく氷結していくと言います。
その上下運動を何度か繰り返した後で、最終的にはひょう自体の重みで地表に落下するみたいですね。
ひょうを真っ二つに切ってみると、樹木の年輪のように層が見られると言います。何度も上下運動を繰り返し、その都度表面に氷の層を増やしていった様子が見て取れるのですね。
史上最大のひょうは直径20.32cm
上空に何度も吹き上げられながら、大きさを増していくひょうの仕組みは分かりましたが、一体今までで最も大きかったひょうの大きさは、どのくらいあったのでしょうか?
一般的にはピンポン玉くらいでも大きいと言われていますが、国立気象局(米国)によれば、2010年7月23日にサウスダコタ州ビビアンという町で、直径8インチ=20.23㎝のひょうが観測されたと言います。
重さは1.9375ポンド=約0.87kg。国立気象局の公式ホームページに写真が掲載されており、はかりに乗せられたその存在感は圧倒的でした。
同気象局ではサウスダコタ州ビビアンに降ったひょうが全米史上でNo.1だと控えめに表現していますが、『信じられない現実の大図鑑』(東京書籍)では、ビビアンのひょうが観測史上世界最大だと断定しています。
直径20cmと言えば、フットサルのボールと同じ大きさ。プロ選手が使っているサッカーボールの5号球よりはちょっと小さいくらいです。そんな巨大な氷が空から降ってくると想像するだけで、ちょっと恐ろしいですよね。
しかし、それを上回る大きさのひょうが日本に降ったかもしれないというのです・・・
日本の熊谷では23.6cmのひょうが降った!?
しかし、世界最大のひょうがアメリカのサウスダコタ州に降ったという話には異説があります。なんと日本の埼玉県熊谷で過去に、直径23.6cmのひょうが降ったという記録が残されているのです。
ときは1917年(大正6年)6月29日。当時の気象を記録する『気象要覧』によれば、この日は川越地方の工場で屋根が吹き飛ばされるくらい埼玉県は風が強く、桶川では落雷で死者が1名出たと言います。
強風が吹き、雷雲が発達していたという状況は、大きなひょうが発生してもおかしくない気象条件ですね。実際に当日はひょうが確認されていて、被害が大きかった長井村(現熊谷市)にある大正寺の住職、飯野さんが測ったひょうの大きさは、
<七寸八分アリタリト云う>(気象要覧より引用)
といいます。七寸八分とは23.6364cmですね。同日に近隣の中條(条)村の小曾根という場所では、
<一箇ノ重量三百匁内外ノモノ降下セリ>(気象要覧より引用)
とも言われているそう。300匁(もんめ)とは1.125kg。ビビアンのひょうを超えていますよね。
さらに同日、中條(条)村(現熊谷市)の荒物商「角屋」の主人が、特に大きなひょうを拾って重さを量ったところ、少し溶けてしまった状態でも、
<九百匁ノ重アリタリ>(気象要覧より引用)
だったのだとか。900匁(もんめ)とは3,375gになります。にわかに信じがたい記録ですよね。しかし、その話を聞いた当時の中央気象台の職員が被害に遭った土地に残る痕跡を取り調べたところ、
<大ナルモノハ徑一尺七寸ノ穴>(気象要覧より引用)
が田んぼに開いていると発見したのだとか。「一尺七寸」の穴とは、直径51.5151cmの穴になります。どれだけ巨大なひょうが降ったのでしょうか・・・。
残念ながら大正時代の話で物証がなく、本当に50cmの穴を開けるような巨大なひょうが降ったのかどうかは疑問が残りますが、この話が仮に本当だとすれば、史上最大のひょうは日本の熊谷で降ったと言えるかもしれませんね。
熊谷と言えば、「日本一暑い町」を自称する町。熊谷特有の夏の暑さが巨大な積乱雲を作り出し、大正時代に史上最も巨大なひょうを降らせたのかもしれませんね。
以上、史上最大のひょうは日本で降っていたかもしれないという話をしましたが、いかがでしたか? ちなみに突然のひょうに降り込められたらどうすればいいのでしょう。歩行中は建物の中に逃げ込むべきですね。
運転中にひょうが降ってきた場合は、JAFのホームページによれば、近くの屋内駐車場などに逃げるべきだとか。逃げ込める屋根がないときには、ハザードランプを点灯して車道に左側にゆっくりと停車し、ひょうをやり過ごすといいみたいですね。
※画像はすべてイメージです。
[かぼちゃの大きさの雹(ひょう)について – 熊谷地方気象台 ] [気象要覧 ] [Record Setting Hail Event in Vivian, South Dakota on July 23, 2010 – National Weather Service ] [All Photos by shutterstock.com ]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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