今年のバレンタイン・デーは終わってしまいましたが、きっとたくさんのドラマが生まれたことでしょう。
しかし、日本のバレンタインデーは、女性から男性へチョコレートを捧げる日だと知ると、外国人たちは、たいていビックリします。
世界の多くの国ではバレンタイン・デーは“愛情と友情の日”であり、家族、パートナー、職場の仲間、友人たちへ向けて、日頃のおつきあいに感謝する日だからです。
ここメキシコでも、バレンタイン・デーは愛情と友情の日で、数あるバレンタイン用の贈り物のなかでも人気が高いのは、やはりチョコレート。
ところで、メキシコがチョコレート発祥の地ってご存知でしたか?
チョコレートの原料、カカオはメキシコ原産。紀元前19世紀ごろからメキシコでカカオ栽培されていたという記録があり、カカオの粉末を水で溶かした飲み物、「XOCOLATL(ショコラトル)」がチョコレートの原型になったとされています。
当時、チョコレートは神が飲むものとされるほど貴重なものでした。ゴールドよりも価値があったのです。
それでは、ここでメキシコのチョコレートを使った飲み物や料理を紹介しましょう。
・チョコラテ
プレヒスパニック期に飲まれていたショコラトルが、スペイン侵攻時にヨーロッパの食文化と融合し生まれたのが、「チョコラテ」。
固形のチョコレートを鍋にいれ、牛乳やお湯で溶かし、特殊な木の棒を使って泡立てます。
この泡立てが重要で、熱いチョコラテの泡を、ちょっとずつスプーンですくいながら飲みます。ココアとは異なり、ざらっとした素朴な味わいです。
メキシコの伝統的なチョコラテ。甘いパンと一緒に食べます。 © Miho Nagaya
<モリニージョ>という木の棒を使って泡立てます。 © Miho Nagaya
・チャンプラード
プレヒスパニック期から飲まれている「チャンプラード」は、トウモロコシの粉と黒糖を溶かした重湯である<アトレ>に、チョコラテとシナモンを加えています。
チョコレート味の葛湯のようなとろりとした飲み物。手軽にエネルギー補給できるので、朝食時に飲まれることが多いです。
露店で売られていることが多いチャンプラード。寒い日には身体があったまります。 © Miho Nagaya
・モーレ
固形のチョコラテ(またはカカオ)、複数のトウガラシ、ナッツ、スパイス、フルーツなどを混ぜて作った独特なソース、モーレ。
メキシコでは鶏肉にかけて食べることが多いです。
チョコレートの甘みと苦み、トウガラシの辛み、ナッツのコクが凝縮された、今まで体験したことのないような味。
メキシコ料理を代表する繊細ながらもパンチのきいた料理です。
メキシコのお盆、死者の日には各家庭でモーレが作られます。 © Miho Nagaya
祭壇にお供えした後には家族でおいしくいただきます。 © Miho Nagaya
トルティージャ料理の代表、エンチラーダスにもモーレがよく使われます。鶏肉が入った二つ折りのトルティージャにモーレをたっぷりかけています。© Miho Nagaya
滋養があり、スパイスとも相性抜群のチョコレート、つくづく奥が深い食材です。
そんなチョコレートについて深く知ることができる本が、2014年1月29日に発売された「みんなのチョコレートブック」です。
ヨーロッパから日本まで、世界じゅうの人気ショコラティエ、パティスリーの紹介や、カカオにまつわる話、チョコレートを使ったデザートのレシピ、メキシコのチョコレート料理モーレについても書かれています。
『みんなのチョコレートブック』 (KADOKAWA エンターブレイン)
メキシコから世界各地へ広がり、今もなお発展し続けるチョコレート。
色んな国のチョコレートをめぐる旅もいいかもしれません。