深さ7~8メートルもある穴。巨大な穴の側面にまたいくつもの小さな穴があり、そこは個室になっているそう。この不思議な住居は、12~13世紀頃、ベルベル人によって造られました。
侵入者から逃れるための隠れ家
チュニジアのマトマタには、こうした穴居住宅がいくつもあります。アラブ民族から避難するため、遠目には村など何もないように見せるためでした。
内部の中庭は、人々が作業をしたり、集ったりする場。木が生えていると、本当にパティオのようですね。
このあたりの土地は石灰岩で掘りやすく、それもこうした住居が広がる要因となったそうです。家族が増えるなどのライフスタイルに合わせて、横に掘り進めて部屋数を増やしたり、さらに上層部に二階を掘って倉庫にしたり、隣の家とつなげたり。
好みの場所に棚を作るのも、掘るだけなので簡単です。防水のためしっくいを塗っているところは、白い壁になっています。
夏は日差しを避け、冬は保温性に優れた穴住居ですが、中庭には直射日光が照りつけます。外への開口部を作って、テントを張っている家もあります。観光客にお茶を入れてくれることも。できるだけ高い位置から注ぐのがよいとされているそうです。
実は有名なロケ地でもある
マトマタは、映画「スター・ウォーズ」シリーズのロケ地でもあります。こちらはルーク・スカイウォーカーの家として登場した住居。現在はホテル・シディ・ドリスとして営業しています。ホテルのフロントの壁には「スター・ウォーズ」にちなんだ写真が。部屋の様子は宿泊者でなくても、中を見学することができます。映画では宇宙人もいたバー(レストラン)も。ファンにはたまらない聖地ですね。
現在観光客でにぎわっているのは、旧マトマタ。大洪水などをきっかけに政府が建設して移住をすすめた町は、新マトマタと呼ばれています。今も旧マトマタで生活する人々は、暮らし慣れた家がよいと、新マトマタから戻ってきた人々なのだそうです。
隠れ家としての意味はなくなっても、居心地のよさと愛着が、彼らを呼び戻したのでしょうね。
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