世界地図を広げて東南アジアを見ると、マラッカ海峡と南シナ海に挟まれた一角にマレー半島が突き出しています。手元の地図による目測では、半島の最南端と最北端は直線でおよそ1,500km。国土地理院の情報によると、本州の青森県から山口県までの距離が約1,100kmですから、その長大さが分かります。
その半島を縦断するマレーシア鉄道は、鉄道ファンのみならず、世界中の旅人にとって憧れの路線。車窓や沿線に点在する絶景も魅力的です。
そこで今回は筆者の実体験をもとに、マレーシア鉄道で楽しめる絶景を3つ紹介したいと思います。
1:夕日が美しい海に浮かぶモスク
最初の絶景はマレーシア北部のタイとの国境近く、マラッカ海峡の海に浮かぶモスクです。建物の名前はマジドアルハサン。地元ガイドの話によると、事業で大成功を収めたマレーシア人が私財を投じ、兄の名前を冠したモスクを作ったとか。
マラッカ海峡の遠景には、近年大人気のリゾート地、ランカウイ島も眺められます。地元ではサンセットが特に美しい場所として有名だそう。マレーシア鉄道の最寄り駅はアラウ駅ですね。
筆者が訪れると、まさに夕暮れどき。船着き場でセパタクロー(日本の蹴まりのような競技)をする地元青年の輪に飛び込むと、全員が笑顔で受け入れてくれました。
「どこから来たのか?」と聞かれたので、覚えたてのマレー語で「Saya oran Jepun.(私は日本人だ)」と答えると、「Welcome to Malaysia」と、まぶしい笑顔で両手を広げてくれました。マレーシア人の温かさにも触れられた瞬間です。
2:ジョージタウンが有名な世界遺産のリゾート地・ペナン島
次は日本人にも有名な観光地、ペナン島です。東西の船が寄港する港として栄えた歴史を持つ同島。英国領時代の古い町並みが残るジョージタウンや、宗教・文化が入り混じる町並みが広がっています。
マレーシア鉄道では、主要駅の1つであるバターワースが最寄り駅。下車後はフェリーで対岸の世界遺産ジョージタウンに渡り、ペナン島観光を楽しんでください。
「ホームステイはペナン島にもあるよ」とは、筆者の友人でもある日本在住のマレーシア人の話。現在マレーシアは国を挙げて鉄道&ホームステイの旅をプッシュしており、筆者が参加したツアーも、各地のホームステイを泊まり歩くプログラムでした。その話を出発前にすると、友人はうれしそうにペナン島の見どころについて教えてくれました。「日本の友だちは、誰を連れて行っても喜んでくれる」場所だそうです。
ちなみにホームステイといっても、語学留学や交換留学などで行う一般的なイメージのホームステイではありません。地元の方の家や村の宿泊施設に泊まりながら、ホテル泊とは違う、地元の方との濃密な触れ合いを楽しむスタイルになります。
憧れの“島生活”もペナンでなら体験できます。あえてホテルではなく、ホームステイで世界的な観光地を楽しむツアーも、また素敵ですよね。
次はいよいよマレーシアを代表する絶景、世界遺産のマラッカです!
3:マレーシアの古都・世界遺産のマラッカ
最後はマラッカ。世界史の教科書に出てきたマラッカ王朝のあった場所です。東西世界をつなぐ貿易の拠点として大いに発展した土地でもあります。
首都のクアラルンプールから、マラッカとは反対のマレーシア北部へ向かう鉄道内で、トイレを順番待ちしていたときの話。
「日本人か?」と子連れのマレーシア人に聞かれたので「そうだ」と答えると、「マレーシアに来たなら、古都のマラッカを見なければ始まらない」と教えてくれました。
話を聞いていると、日本でいう京都や奈良に近い存在のよう。その通りかと聞いてみると、「奈良は知らないが、京都はそうかもしれない」と教えてくれました。今回は残念ながら行きませんでしたが、周り残した場所は次の旅に出る原動力になってくれます。
ポルトガル、オランダ、イギリスなどヨーロッパ各国に支配された厳しい過去を持ちながらも、その歴史を上手に生かし、美しい町を残していると聞きます。特に町の中心部にあるオランダ広場周辺は世界遺産に登録された美しい光景が魅力的だとか。
最寄り駅のタンピンからはタクシーで1時間ほど。料金は60リンギット(1,700円ほど)です。「え、1時間?」と驚いてしまうかもしれませんが、強弁すればその不便さも旅の思い出ですよね。
以上、マレーシア鉄道で楽しめる絶景を3つ紹介しましたが、いかがでしたか?
上述した絶景ポイントには、首都のクアラルンプールから空路あるいは陸路のバスが用意されています。しかし、あえて時間を掛けてじっくり鉄道で回る旅の面白さも捨てがたいです。
冒頭でも記したように、半島を縦断するマレーシア鉄道は、世界中の旅人に人気のルート。ETSと呼ばれる高速鉄道や寝台列車、夜行列車などさまざまな車両が用意されています。旅の日程やルートに合わせて、柔軟に組み合わせてみてくださいね。
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[Photos by Masayoshi Sakamoto & shutterstock.com]