30年ぶりの新作テレビシリーズが大好評の「ルパン三世」。長年に渡り、世界各国で愛されてきたルパン三世のお話の中でも、高い人気を誇るのが、宮崎駿氏の初映画監督作品である「ルパン三世・カリオストロの城」ではないでしょうか。
物語中、ルパンの敵対役として登場するカリオストロ伯爵。実はカリオストロ伯爵と称した人物は18世紀、イタリアに実在していたのです。そしてカリオストロ伯爵にまつわるイタリアの町「サン・レオ」には、劇中に出て来るお城のように断崖絶壁に立つ大きなサン・レオ城砦があります。このサン・レオ城砦は「死ぬまでに行きたい世界の名城25」に選ばれた絶景でもあります。
では、この絶景のサン・レオ城砦とカリオストロ伯爵をたどって、サン・レオの町を旅してみましょう。
カリオストロ伯爵ゆかりの町「サン・レオ」はどんな町?
サン・レオの起源は3世紀頃、頑強な岩を地盤に持つ切り立った山の上に、ローマ人が城砦を築いたのが始まりと言われています。
周囲は切り立った崖で、町に入る道は山を削って作った、この一本道のみ。道の先に見える門が町の入り口です。つまり、この自然の地形が町を守る砦となっているのです。
しかし、町が完璧な要塞であったからこそ、その頑強な砦を根城にせんと様々な戦いに巻き込まれてしまいます。安全に暮らしたい、そう願ってした武装が返って呼び水になって、争いに巻き込まれていくなんて、なんだか皮肉ですね。
戦いのない今、丘の上の町は、静かで落ち着いた雰囲気。
中世の佇まいを残した町並みは実に趣があります。
穏やかな町の雰囲気と相反して、重々しく佇むサン・レオ城砦がこちらです。町の一番高い丘に立っています。
この城砦にカリオストロ伯爵がいたのですが、そのお話は次の通りです。
サン・レオ城砦と希代のペテン師カリオストロ伯爵
こちらがサン・レオ城砦。90度、いやそれ以上、反り返っているのではないかと思う絶壁の上に鎮座する頑強な城砦。初めは要塞として作られた城ですが、17世紀になって監獄として使われるようになりました。この絶壁ですから、そりゃあ脱獄なんてできそうもないですよね。
カリオストロ伯爵はここに終身刑で投獄されていたのです。
そもそも、カリオストロ伯爵と称した男、伯爵でもなんでもありませんでした。シチリア生まれのイタリア人、父親は商売人でしたが早くに亡くなり、修道院に預けられました。素行が悪く、悪い仲間と付き合い、人を騙したり脅したりの彼でしたが、ある詐欺師と出会い、彼に師事し、本物の詐欺師になってしまいます。ヨーロッパ中の社交界に現れては、魔術師、錬金術師だと、おいしい話を吹聴しては詐欺を繰り返します。逮捕されては牢獄から出て来るとまたペテンを繰り返す、そんな彼を決定的に失脚させたのが、マリーアントワネットの「首飾り事件」です。高価な宝石の首飾りをマリーアントワネットに渡すと偽ってだまし取った詐欺事件の発案者として失脚します。その後、逮捕された彼が終身刑を受け投獄されたのが、このサン・レオ要塞だったのです。
ルパン三世の劇中でも悪役で登場したカリオストロ伯爵ですが、実物もそうとう悪者ですよね。
劇中にはまだまだこの町に関連するものが出てきます。例えば、ストーリーのきっかけである「ゴート札」と呼ばれる偽札。実はこの町は6世紀にゴート族によって一時支配されています。また、伯爵が我がものにしたいと狙っていたカリオストロ家の秘宝とは、結局古代ローマの遺跡だったのですが、この町は元々ローマ人が作ったものですから、もしかしたらその下には遺跡が埋っているかも!?
町自体も小さいながら訪れてみたくなる美しさなのですが、こうやって物語とからめてみると、まるでその物語の中を旅しているようで、さらに楽しくなりますね。
[All photos by Ryoko Fujihara]