子どもの頃、地球儀をくるくると回しながら、世界を駆け巡る夢を見ていました。大人になった今でも地球儀を眺め、過去に訪れた国や、これから訪れたい国に想いを馳せている時間は幸せなものです。TABIZINE読者の皆様も、地球儀好きな方が多いのではないでしょうか。
今回は、そんな皆様にオススメしたい「新しい地球儀・天球儀の世界」をご紹介します。
地球儀と天球儀のはじまり
そもそも、地球儀・天球儀はどのようにして誕生したのでしょうか?
天球儀は、“地球は宇宙の中心で静止し、星たちがその周囲を廻っている”という、かつての西洋の世界観を形にしたもので、アラブの天文学者によって製作・使用されていました。今日まで残っている最古の天球儀は、11世紀のものだそうです。
一方、地球儀は15世紀末以前の作例はほとんどありません。当時の西洋人の知識は世界のごく一部、地中海を中心とした地域のものに限られていたためです。
16世紀の大航海時代、ヨーロッパ人達は世界各地に赴き、それぞれの土地に人が住んでいることを明らかにしていきました。それによって、創造の世界が新しい情報へ書き換えられ、地球儀の製作は大きく発展していきます。こうして地球儀は、世界の姿を広く伝え、人々を航海や貿易、様々な文化や文明の発展へと誘ったのです。
触れない地球儀から、触れる地球儀へ
今回ご紹介したいのは、現在DNPミュージアムラボ(五反田)で開催されている「フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展」です。本展は、大日本印刷(DNP)とフランス国立図書館(BnF)が共同で、BnF地球儀・天球儀コレクションの3Dデジタル化に取り組んだもの。
地球儀・天球儀は本来、手で動かし間近に見るものですが、貴重なコレクションは展示ケース越しにしか見ることができません。実際に回すことができない為、ほんの一部分しか見られませんよね。その問題を“3Dデジタル化”が解決したのです。
巨匠フェルメール作「天文学者」に登場した、ホンディウスの天球儀(1600年)
展示コーナーでは、3Dデジタル化された地球儀・天球儀を自由自在に回転させ、あらゆる角度から観察することができます。台座で隠れていた部分も細部まではっきりと再現されていますよ。本物の地球儀・天球儀と合わせて鑑賞できるのが嬉しいですね。
ただ写真にするのではなく、3Dデジタル化することで球体が再現され、自分の手に持っているかのような体験が可能になりました。なんと、地球儀・天球儀1つあたり約400枚の写真、300GBものデータを処理して製作されているそう!
世界の主要な山脈がはじめて立体的に表現された「チュリーの地球儀」も、高画質の映像により立体感が見事に再現されています。
その他にも、パンフレットをセットすると、17〜18世紀の地球儀・天球儀の製作技法を解説してくれるコーナーや、
大きなスクリーンに向かって、空中で自分の手を動かしながら操作できるコーナーもあります。
こちらは、1492年に製作された現存最古の地球儀を19世紀に複製した「べハイムの地球儀」。
中でも、一番胸が高鳴ったのはこちら。
ヘッドマウントディスプレイを装着して、天球儀・地球儀を内部から鑑賞できるコーナー。足元から天上まで360度観察でき、新しい世界を体感することができます。
地球儀・天球儀のコレクションが、これほどの規模で3Dデジタル化され一般公開されるのは世界初の試み。後期の展示では「ヴェルザーの地球儀」(1550年)も展示されるようですよ。
日本でいうと戦国時代や安土桃山時代の頃に作られたものを間近で鑑賞できるなんて、歴史を覗いているようで、とても不思議な気分です。更に、この貴重な展示が無料というから驚き。写真ではお伝えしきれないので、ぜひ実際に足を運んでみてくださいね。
世界を映し出す地球儀の新しい魅力に触れる旅に出かけましょう。
前期:2016年2月19日〜5月22日
後期:2016年6月3日〜9月4日
営業時間:金曜日/18時〜21時 土・日曜日/10時〜18時
入場料:無料
※予約制→ご予約はこちら