「ナショナル・ジオグラフィック写真賞2015ピープル部門」最優秀賞、「コニカミノルタ フォトプレミオ2014年度」大賞など、数々のビッグタイトルを受賞している写真家、吉田亮人さん。今春、自身2作目の写真集となる『Tannery』を刊行します。バングラデシュの皮なめし職人たちを2年間追った作品です。
1作目の『Brick Yard』も、彼の地のレンガ職人たちを題材にしたものでした。なぜそこまでバングラデシュに惹かれるのか? 語っていただきました。
『Tannery』より。職人の荒い息遣い、皮の薫りが感じられるよう。
(C)Akihito Yoshida
まず、どうしてバングラデシュに行こうと思われたのですか?
2010年に初めてインドに行ったのですが、帰国してしばらくして友人写真家と話していたら、彼が「バングラデシュはインドよりもっとカオスだよ」と話してくれました。その話を聞いて、インドよりカオスってどんなところなんだと好奇心を惹かれたのが最初のきっかけです。
バングラデシュって正直危ないイメージがあるんですが、大丈夫ですか。
自分の行動次第ではないでしょうか。それによって危険な国にも見えてくるし、その逆もまた同じことが言えるのでは。それはバングラデシュだろうが日本だろうがアメリカだろうがどこでも変わらないように思います。独断と偏見ですが、僕が見たバングラデシュは最高に楽しくてエキサイティングな国です。
同じく『Tannery』からもう一枚。
(C)Akihito Yoshida
作品を拝見すると、職人たちの素の姿をパチッとおさめているように感じます。どのようにコミュニケーションをとられたのですか。
素の姿をさらけ出してくれているかどうか分かりませんが、写真を撮らせてもらう上で僕の中で大切にしていることは「好きだ」という気持ちを被写体にぶつけることです。その「好きだ」はたとえて言うなら恋している時の気持ちに似ているかもしれません(笑)。だからずっと一緒にいたいって思うし、ずっと見つめていたいと思うんです。その想いが通じた結果の写真が僕の写真です。
レンガ、皮、と来て次に吉田さんが注目されているものは何ですか。
これまで「働くとはなにか」をテーマに働く大人たちを撮ってきました。次はバングラデシュで働く子どもたちについて詳細に見たいと思っています。それから日本では「家族」をテーマに作品を創っていきたいと思っています。
1980年宮崎県生まれ。京都市在住。滋賀大学教育学部卒業後、タイや京都で教師として勤務した後、2010年に写真家として活動開始。2014年に刊行した初の写真集『Brick Yard』はThe Paris Photo PhotoBook Award最終選考にノミネートされる。 2016年春、『Tannery』を刊行予定。Web www.akihito-yoshida.com
※『Tannery』の詳細はこちらから