長野県の松本市と岐阜県の高山市の県境には焼岳、奥穂高岳、槍ヶ岳など日本の100名山がずらりと並んでいます。
その稜線の岐阜県側には、140近くの源泉から毎分3万リットル近くのお湯がわき出る奥飛騨温泉郷が広がっています。公共浴場としてほぼ無料で開放されている無人の露天風呂も・・・。
そこで今回は同地に何度も足を運んでいる筆者が、多くの人に知ってもらいたい公共露天風呂を3つ紹介します。
新穂高の湯(しんほたかのゆ)
最初は新穂高の湯。奥飛騨温泉郷を代表する公共露天風呂で、蒲田(がまた)川沿いにある天然巨岩の混浴露天風呂になります。高山方面から国道158号→国道471号線と乗り継いで栃尾の交差点を右折。その後直進して蒲田トンネルを抜けると、間もなく左手に見つかります。
知名度が高いために人は少なくありませんし、温泉の頭上には橋がかかっていて、ときおり観光客が見下ろしてきます。その意味で「まさに秘湯」といった感じでは、残念ながらありません。ただ、川沿いというロケーションや温泉の規模、秋の時期のライトアップイベントなどを考えると、奥飛騨温泉郷の中では外せない露天風呂。
日によって温度が違いますが、基本的にそれほどお湯が温かくありません。冬季はそのため閉鎖されます。春から秋にかけて、朝から夜まで入浴できますので、水着や大きなバスタオルを持って出かけてください。
[奥飛騨温泉郷/新穂高の湯 ]
荒神の湯(こうじんのゆ)
新穂高の湯の手前、国道471号線から栃尾の交差点を曲がるとすぐ右手に見えてくる露天風呂が荒神の湯です。筆者は個人的にこの湯が最も好み。
蒲田川沿いにあり、夜10時まで入浴ができる上に、大きく空が広がっていますので、温泉に入りながら星空を眺めるといった楽しみ方も可能。しかも男女別々のお風呂が用意されていますので、双方ともに変に気を使わなくて済みます。隣接した駐車場にはキャンピングカーで全国を回っている旅人などの姿も。風呂場で声を掛けられ、風呂上りに冷えたビールをごちそうになった思い出もあります。
無人の露天風呂の割にはすごく清潔で、女性でも安心して入れます。お湯の温度もぬるすぎず熱すぎず最適ですので、ぜひとも足を運んでみてくださいね。
ちなみに荒神の湯は一年中解放されています。雪深い同地、真冬に雪景色を眺めながら入る露天風呂もまた格別ですよ。
[奥飛騨温泉郷/荒神の湯 ]
神の湯
最後は神の湯。名前の通り不動明王のすぐ近くにある公共露天風呂で、平湯温泉の発祥の地としても知られています。森の木々に飲み込まれたかのような雰囲気も魅力的で、丸太をくりぬいただけの掛け湯用の湯舟もあり、ワイルドです。
交通ルートとしては、飛騨高山方面から国道158号を上高地の方に向かい、安房峠道路にも国道471号にも入らず、そのまま直進してください。バスターミナルや平湯民族資料館を通り過ぎて山道を上がっていくと、途中で神の湯方面に右折できる道路が出てきます。看板に沿って進んでください。
神の湯に関してはお風呂の脇に小さな洗面所のような一角があり、シャンプー、石けんで体を洗えるようになっています。新穂高、荒神の湯に関しては石けん、シャンプーが使えませんのでありがたいですよね。
ただ残念ながら記事執筆時点で、周辺の地面が崩れるなど安全性が確保されない状況になっているため、営業を中止していると奥飛騨温泉郷の公式ホームページに情報が出ています。再開を楽しみに待ちたいですね。
[奥飛騨温泉郷/神の湯 ]
以上が奥飛騨温泉郷にある公共露天風呂になります。
「え? 3選なのに、1つは営業中止!?」と思った方、その場合は奥飛騨温泉郷の1つ、平湯エリアにある平湯民俗館・平湯の湯に訪れてみては?
平湯の中心部であるバスターミナルの近く、国道158号線を神の湯の方に向かうとすぐに、木造茅葺きの民家を改造して作った民俗資料館が見えてくると先に触れました。その敷地内の奥まった木立の中にある共同の露天風呂はコアなファンに大人気。露天風呂を取り囲む小屋そのものが趣たっぷりで、さらにお風呂の底が全く見えないくらいの茶褐色のお湯もファンの心をたかぶらせてくれます。
しかも、周辺の温泉施設と比べて、かなり空いているというおまけつき。近くにある大型の入浴施設「ひらゆの森」はいつでも混んでいますが、こちらは違います。
ただ、洗い場がありませんので、サッと入ってリフレッシュすると言った楽しみ方になります。入浴料は寸志。ぜひとも出かけてみてくださいね。
[奥飛騨温泉郷 ] [All photos by 奥飛騨温泉郷 ]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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