バリ島の至る所で見かける、カラフルで美しいお供え物「チャナン」。寺院はもちろんのこと、民家の前や店先、ホテルに空港、ビーチなどさまざまな場所に置かれているので、現地を訪れたならきっと目に留まるはずです。
バリ・ヒンズー教の根付くバリ島の人たちの生活に欠かせないチャナンとは?
どんなものをお供えするの?
神々への感謝の気持ちと祈りが込められたチャナン。毎日のお供えのために、現地の女性たちが手作りで用意します。その多くは、ヤシの葉で作った四角もしくはお花の形をしたトレイに色とりどりの花々、香り高いパンダンリーフ、食べ物などをのせて。この際に、聖水とお米も用意します。
チャナンには上記のアイテムに加え、クッキーやバナナ、キャンディーなどを入れることも! 実際に目にしたときには、ちょっとしたカルチャーショックを受けました。「バリ・ヒンズー教の神様は甘党なの?」と、バリ島の友人に尋ねてみたところ「そういうわけではなくて、お祈りの一環なんだよ」という、至ってまともな答えが返ってきました・・・。ピーナッツやクラッカーをお供えすることもあるそうですよ。
バリ島にはさまざまなチャナンがあるのですが、どのお供え物にもキンマ(ベテル)の葉とその実、そしてライムの3つから成るポロサンが欠かせません。ポロサンはヒンズー教のブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァという三神一体のシンボルです。
神様と悪霊用があります
このチャナン、神様だけでなく悪霊にもお供えします。地面よりも高いところに置くのは神様への捧げ物、地面にじかに置くのが悪霊への捧げ物です。
悪霊用のチャナン
なぜ悪霊にも? と疑問に感じてしまいますが、「どうか悪いことをしないでくださいね」という願いが込められているそう。ちなみに悪霊用のチャナンは神様への捧げ物と比べると質素です。
お祈りとチャナンを体験してみました!
毎日の習慣となっているチャナンは、用意したらそれで終わりというわけではありません。お供えの際には、必ずお祈りをします。
どのようにお祈りするのでしょうか? そこで、バリ島の総合型リゾート「アヤナリゾート&スパ バリ」が主宰するクッキングスクールで、料理教室とお祈りのセレモニーを体験してみることにしました。スクールには2種類のプログラムがあり、筆者が選択したのは、お祈り体験後にシェフの指導のもと、バリ料理を学ぶレッスンです。
フレンドリーなスタッフ・ウィンダさんの指導のもと、お祈り(※)にあたり、まずは腰帯を巻きます。
※バリ島の人々が沐浴後に腰帯とサロンをつけて行う毎日のお祈りをプログラム用に簡略化したもの
お祈りの際にはチャナンにお線香を添えて。チャナンは毎日決まったところに数か所お供えします。
神様に感謝の気持ちを伝えてから、チャナンの花を耳に飾りお祈りをスタート。
その後、聖水に入ったお米を額と首に貼り付けます。
お祈り後もお米をつけたままその日1日を過ごします。これは「お祈りの儀式を終えました」というサインなのだそうです。
お祈りの儀式を終えてから、料理教室が行われる敷地内の庭園に佇むクッキングスクールへ。そよ風が心地良い空間です。
キッチンのコンロに小さなチャナンが置かれているのを発見! バリ・ヒンズー教では、神道と同じく万物に神々が宿っていると考えられています。このため、建物や家のあらゆるところにチャナンを置くとは知っていたものの、これにはビックリ。
「これから料理をするにあたり、ケガややけどをしないよう見守っていてくださいね」という意味を込めてのチャナンだとシェフに教えてもらいました。お祈りのおかげでしょうか、料理教室はとてもスムーズにすすみ、バリ料理や食材の使い方などをバッチリ学ぶことができましたよ。お教室で習ったバリ料理については、後日レポートしたいと思います!
バリ島を訪れた際には、美しいお供え物にも注目してみてはいかがでしょう? お祈り体験をすると、その魅力をより深く知ることができるはずですよ。
取材協力:AYANA Resort and Spa BALI
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