旅の楽しみの一つは食事。訪ねた街の通りや広場、市場の屋台でその土地のものを地元の人たちと一緒に食べるのは素晴らしい体験です。特に東南アジアの国々の屋台文化は、世界中の旅行客を魅了しています。
今年の4月中頃です。バンコクでは主要な路上の屋台を全面的に禁止することになるというニュースが衝撃と共に世界中に飛び交いました。どの記事にも、これはとても残念なことだと書かれていて、バンコクの屋台文化が世界の人々に愛されていたのだと、再認識させられました。
その後に続く報道では、バンコクから屋台が全く消滅してしまうわけではないことが確認されました。よかったと胸をなでおろしつつも、キツネにつままれた感覚。いったい何があったのでしょうか。そして、これからどうなるのでしょう。
タイの屋台文化
東南アジアの他の国々と同様に、タイでも屋台は大切な食文化の一つです。日本でも「中食」という言葉が浸透してきましたが、レストランなどで食事をする外食や自宅で料理をして食べる内食に対して、中食は調理済みの食事を買って自宅で食べる「昼食」が浸透しています。仕事の帰りに、屋台で好きなものを買って自宅で食べる。熱い気候ということもあって、自宅で火を使わないほうが快適でもあるようです。
タイでは、バンコクといった大都市にかかわらず、どの町でも屋台は多く、朝から夜まで、おいしそうなタイ料理を提供しています。そして、旅人たちも異国情緒を楽しみながら、おいしくてリーズナブルな食事をいただくことができます。バンコクなら、ストリートだけでなく、水上マーケットに食べ物を売るボートも並びます。
4月18日のニュースに 世界のタイ屋台好きがびっくり
この日世界中のメディアが、「あの有名なバンコクの屋台が禁止に」という記事を掲載しました。世界中のタイ屋台文化を愛する人たちが注目しました。
ポイントは
- 主要道路で歩道を占有した屋台が問題であること
- 秩序と衛生面が問題であること
- 年内に一掃すること
でした。
なるほど。バンコクを歩いたことがある方なら経験したことがあると思いますが、確かに歩道の屋台は盛り上がっていますが、ちょっと歩きにくかったり、ともすれば車道を歩くことになってしまったり。そういえば、衛生面の管理はどうだったっけと思ったり。今回の新しいルールでどう変わるのでしょうか。
食文化を守る新しいかたち
ワイワイと盛り上がる屋台に並ぶエキゾチックな珍しい食べ物。繁華街の混沌とした人込み。旅行客にとっては、この非日常の世界が魅力的です。でも、「衛生的に大丈夫?」とか、「道にあふれる人々と、車が増えた通りが危ないな」と感じるのも事実だと思います。
バンコクをベースとする英語の情報サイトThe Nationが、政府の担当による会見で以下が明らかになったと報じました。
- 食文化がタイの観光に大切であると認識している。
- ヤオラート(中華街)やカオサンロードなどをはじめ大通りではない場所は屋台は禁止されないが、いままでより厳しい規制の対象になること。
- 通りで皿などを洗ってはいけないなどの、ルールが作られること。
- 他人に迷惑となる営業ができなくなること。
- この法律の施行が最終決定したものではないこと。
どうやら、屋台が全面的に一掃されるのではなく、秩序と衛生管理を徹底した形にしていくということのようです。
バンコクの美化活動の取り組み
実は昨年までに15000を超える屋台が、美化活動の一環として撤去されました。アジアの他の国々同様に、急速な経済発展を遂げてきたタイ。その首都バンコクには車があふれ、海外からの旅行客も増加してきました。世界水準の安全と衛生を実現しなければならないということなのですね。今回の取り組みによって、人々が安心して楽しめる新しい形の屋台が、屋台本来の魅力を失わずに、より発展してくれたらうれしいです。
というわけで、これからも屋台文化は大切に守られていくとのこと。安心しました。
BMA backs away from street food ban, but adds conditions
[All Photos by shutterstock.com]
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Atsushi Ishiguro ライター&フォトグラファー
旅するフードフォトグラファーです。そして、食生活について考えて、レシピを開発して料理もします。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現し、みなさんと一緒に食べたいというのが、私のビジョンです。
バンコク,屋台,市場 | 豆知識,アジア,タイ,豆知識
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