中学生から届いた一通のメール
ある日、編集部宛てに届いた一通のメール。「僕を取材してください。難しいようであれば、お話だけでもして頂きたいです」。差出人は、中学生でした。
会ってみようと思ったのは、彼が中学生でありながら、一人旅のための資金をクラウドファンディング「polca」で募っていたから。そして、決して長くないメールに率直かつ伝わってくる熱を感じたことからでした。
当時中学3年生だった岩田楽(いわた がく)さんと会ってお話をした編集部は、彼に宿題を出しました。「僕がクラウドファンディングしてまで一人旅に出たい理由」の答えを、今回の旅の間、改めて考えてきてください。旅から帰ってきた後に、もう一度お会いしましょう、と。
こんな面倒臭いことを言う編集部にはもう連絡してこないかもしれない、そんな思いもよぎりましたが、彼はちゃんと約束通り、旅の報告と宿題の答えを胸に、我々と再び会うことになったのです。
今回の旅の目的は“人とのつながり”。三軒茶屋Tシャツを着て居酒屋へ
「めちゃくちゃ楽しかったです! 今回は、“人とのつながり”を目的に東北・北海道を旅したんですが、とにかく地元の人とたくさん話をしたいと思っていました。
なので行った先々で『地元の人と話がしたいんですが、いいごはんスポットはないですか』って聞いて回ったんです。でもこれが、特に小樽では中々なくて。どうしよう、とウロウロ歩き回っているうちに、おたる屋台村のレンガ横丁にたどり着いたんです。居酒屋に人がたくさん集まっているのを見て、ここしかない! って思いました」
「実は、気持ちが決まるまで店の前を3往復くらいしてしてます(笑)。居酒屋入っても、お酒飲めないしなあ・・・とか悩んで。入ったものの、もちろんお酒は飲めないので、お水を頼んで不審がられたり。あ、でもおでんは頼みましたよ」
「まずお店の人が上着をかけてくれようとしたんですが、僕上着なしでパーカ一枚だったんですよ。そしたら『3月の北海道にパーカ一枚?お前死にに来たのか!』って言われました(笑)。
他にも、東京から卒業旅行で来ていた大学生と話したり、地元のご夫婦がおでんをごちそうしてくれたり、IT関連の事業をしているおじいさんとなぜか農業の話しで盛り上がったり。めちゃめちゃいい時間を過ごせました」
「はい。もともと、話のきっかけになるかなと思って、自分が住む街の三軒茶屋Tシャツを着て行ったんです。それで、まず大学生らしき人たちに『どこから来たんですか?』と聞いて。東京から来た方たちだったんで、Tシャツ見せて『僕も東京の三茶だよ!』って(笑)」
「そうですね。札幌では、泊まったゲストハウスの方に紹介してもらって、日本一周をした女子高生にも会いました。さらにその女子高生に会ったカフェでアカペラのミュージシャンの方と知り合ったんですが、僕のことをすごく面白がってくれて、またさらに北上の方を紹介していただきました。その北上の方は出会った3日後に車で三陸まで連れて行ってくれたんです。
札幌のカフェにて、アカペラミュージシャンの方と
陸前高田では、被災地のドキュメンタリー映画『先祖になる』のモデルにもなった、一から自宅を建て直したというおじいさんと会ってお話をさせていただきました。みんなが仮設住宅で暮らす中、自宅のあった地を愛して、そこに自力で家を建て直したそうです。すごく想いの強い優しい方でした。震災からちょうど7年経ったときで、色々思うことがありました」
陸前高田にて
「実はこの後、思わぬハプニングもありました。おじいさんのお家に遊びに行った帰りの車の中で、財布がない事に気がついたんです。その中にはお金と保険証、キャッシュカードなど全財産が入っていたので顔が真っ青に。いろんなところに連絡をしたのですが、最終的にそのおじいさんの家のコタツの中に置き忘れていてぬくぬくとあったまっていた・・・という話です(笑)」
観光名所を回るだけの旅では物足りない
「僕が初めて“旅”をしたのは、13歳のときでした。友達と一緒に、大阪の祖母の家を起点に京都や奈良をまわりました。初めて自由な旅ができて、旅すること自体にワクワクを感じたんです。
それで旅の面白さを知って、14歳のときは広島、岡山、京都を一人旅しました。でもこのときは、旅の途中で寂しさや物足りなさも感じたんです。
14歳のときの旅、姫路城にて
よく考えてみると、1回目も2回目も、旅先では観光名所を回って写真を撮るだけ。人見知りだったこともあって、誰とも話しませんでした。でも、その土地の人と話さないと、土地への愛着もわいてこないなって思ったんです」
「はい。今でも全く人見知りじゃないかっていうと、そうでもないんですが・・・(笑)。
実は僕、中高生の可能性を広げることをミッションとした学生団体を主宰していて、その団体を通して、いろいろな大人の方と話したり、中高生と知り合ったりする機会が増えていったんです。そういうときって、“人見知り発動しない能力”が求められるじゃないですか(笑)。
声かける前は緊張するし、覚悟がいるんだけれど、話しちゃえばすごく楽しい。そんな体験が積み重なっていって、今の自分なら、人見知りを乗り越えられるんじゃ? “人とのつながり”をテーマに旅ができるんじゃないかって思ったんです」
旅とは、自分の居場所じゃないところに飛び込むこと
小樽の居酒屋にて
「自分の居場所じゃないところに飛び込んで、いろんな人と話をして自信をつけたい。つきつめるとそういうことだと思います。特に今回の旅の前は、日常でいろいろ思うようにいかなくて、無力感を感じるときがあって・・・。
初めて一人旅をしたとき、旅って得るものが多いなって思ったんです。お金の管理とか、一人でなんとかしなくちゃいけない能力とか。もちろん得るものだけじゃなくて、財布をなくすこともあったけれど、それを全部乗り越えて楽しむのが旅。そしてそれが自分の自信になる」
「そうですね。旅の目的を意識することが大事だと思うんです。旅って時間のかかるもの。そしていろんなものを置いていく感覚がある。やるべきことを置いて、自分の居場所から離れて、旅を選択する。だから目的はあった方がいい。
僕の場合は“人とのつながり”でしたが、“いい景色が見たい”でも、“リラックスしたい”でも、“楽しみたい”でも、何でもいいと思うんです。ただ、それを明確にして行くのと、しないで行くのとでは全然違う。
今回の旅でも、“人とのつながり”という目的を意識していたからこそ、行動的になれた部分もあったと思います。
それから、東京にはないゆったりとした自分の時間を、今回の旅では特に感じました。その中で、いろんな人と話して自分の生き方が狭かったことに気づいたり、もっとゆっくり生きていってもいいのかなと考えが深まったりしました」
「実は中高生って忙しいんですよ。週6で学校、放課後はだいたい部活、塾や宿題もあるし、土日に試合が入ることもある。結構せわしないんです、中高生(笑)」
「えっ、めっちゃ数人しかいないかもしれない・・・いや、全くいないかもしれないですが・・・僕のファンの方へ(笑)。
今回の旅はクラウドファンディングという他の人からお金を支援してもらって旅をするという方法をとりました。たくさんの人が応援してくれて、旅が終わってからもいろいろと温かい言葉をいただきました。
本当に、本当に勇気をもらったんです。
一人で旅してるのに一人じゃない、という感覚でした。忘れられない体験です。こうして応援してもらえるのは、これから自分が誰かを応援するための循環だと思っています。ありがとうございます!
これからもチャレンジャーであり、サポーターであり続けます。僕も含めた若者にもっともっと旅してほしいです!」
中学3年生の春休みにクラウドファンディング の旅を終えた岩田さんは、現在は高校一年生になったばかり。ボート部に所属して、部活に学生団体にと忙しい毎日を過ごしているそうです。やりたいことをやっている中高生を増やしたい、中高生が旅をしやすい環境をつくりたい、と言う岩田さん。若き旅人の今後に期待したいですね!
●プロフィール
岩田楽(いわた がく)
都内の国立高校に生息。歴史を愛し、中一の時にワークショップを2度企画。中高生の学校外の学びをサポートするために学生団「genate」を立ち上げた。一人旅するためにクラウドファンディングをしていた。いろいろしている。社会文脈のデザインとFintech関連に興味あり。
ブログ https://iwatagaku.com
Twitter https://twitter.com/iwatagaku