国内の某空港でグランドスタッフとして働いていた経験のある蒼井空(あおい そら:仮名)さんに聞いた、「今だから話せる驚きの実話」。さまざまな国の人々が行き交う空港では、文化ギャップを感じる興味深い出来事が日々繰り広げられているのです。第6回目は、英語が通じない中国人観光客へのトラブル対応のお話。
英語が話せない日本人、英語が読めない中国人
日本人は英語が苦手だと、よく言われますよね。シャイな国民性もあると思いますが、長年英語の授業を受けているにも関わらず、英会話に苦手意識がある人は多いようです。
しかし、英会話は苦手でも、英語の文章を読んだり、英単語の意味を把握する、ということはそれなりにできるという人が多いのではないでしょうか。
「現在の日本の入国書類は複数の言語に対応していて、インターネットでダウンロードすることもできます。しかし、私がグランドスタッフとして勤務していた頃は、英語と日本語しかなく、中国人観光客への対応がとにかく大変だったという経験があります。日本語はもちろん通じませんし、英語も通じなくて、英単語も読めない。入国書類を書く際に、常にサポートをしなければいけませんでした」(蒼井さん談)
漢字の筆談、イラスト、ジェスチャー、あらゆる方法を駆使
「日本人は英語のヒアリングやスピーキングは苦手かもしれませんが、読める人が多いですよね。カタカナ表記の外来語も普及しているので、単語程度ならば聞き取れることも。でもその頃の中国人観光客の方々は、『Hotel』も『Ticket』も通じないことが多く、ひたすら漢字やイラストでの筆談やジェスチャーで書類の書き方を説明するしかなかったんです」(蒼井さん談)
そうした対応を重ねていく内に、だんだんと対応する方法を見出していったという蒼井さん。
「まずは航空券とパスポートを出してもらうところから始めます。誰かが手に持っていたらそれを拝借して、氏名と生年月日、便名がわかりますよね。誰も手に持っていないときは手の指で四角い形を作って、なんとか意図を汲み取ってもらいます。
滞在先は『宿』と漢字で書いたり、家のイラストを書いてみたり、『寝る』ジェスチャーをしてみたり・・・。中国の方は親族など大人数で来ていることが多いので、一人書けたらみんなの見本にして、全員が書き終わるまでサポートします。英語が通じない、ということがこんなにも大変だということを実感した経験ですね」(蒼井さん談)
世界中にチャイナタウンを築いている中国人コニュミティを見ると、中国人は英語が得意なのだとつい思ってしまいますよね。しかし、中国人なら誰でも英語が通じるというわけではないですし、多少の発音の違いはおかまいなしにどんどん英語を話す人も。そのたくましさに尊敬の念もわきます。日本人はもっと当たってくだけろ精神で、英語を話す勇気を持ってもいいのかもしれませんね。
[入国管理局]
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