”昔ながらのパン工房”、そんな言葉がよく似合う「美利堅餅店」。マカオではパンは工場製造が一般的な中、店の中の専用キッチンで一つ一つ手作りする希少なお店です。棚に並ぶのは一番人気「パイナップルパン」を始め、他店では食べられない激レアスイーツなど、伝統的な味のオンパレード。老若男女を魅了する、古き良きマカオベーカリーに密着。
焼き立てパンの匂いに誘われて
店に入るとどこかホッとする・・・それはおいしそうなパンの香りだけが理由ではなさそう。言葉は少なめだけど、笑顔の優しい店主があたたかく迎えてくれます。
店頭には、少なくとも40種類以上のパンやケーキがずらりと並びます。焼き立てをGETするなら、早朝6〜7時に店を訪れるのがベストタイミングとのこと。1993年の創業以来、変わらぬ味がそこにはあります。
熟練パン職人のスキルに、見惚れる
職人さんたちは毎日、夜中の1時からパン作りを始めるそう。丁度「パイナップルブレッド」を作っているところにお邪魔しました。スケールを使わずとて、均等の大きさに生地をそれぞれカッティング。
クッキー層になる黄色い部分を薄く伸ばして・・・
丸く形どったパン層に被せていきます。美味しさのポイントは、”バター”と”ポークオイル”。2つを混ぜたものをパンに塗ることで、クリスピー食感を出しつつ、パンをよりソフトにするのだそうです。
実食!口の中で溶けていく「パイナップルパン(菠蘿包)」
完成、焼き上がりました!名前とは裏腹に、パイナップルは入っていないと発覚。こんがり黄色い表面に亀裂が入り、まるでパイナップルに見えることからその名が付けられたそう。日本で言うところのメロンパンに少し似ていますね。
出来たて熱々、手で掴むのも一苦労なほど。味はとってもシンプル、ほんのり柔らかい甘みを感じます。なんと言っても噛む必要がないほどフッワフワです!
激レア!「バナナロール(香蕉糕)」
伝統的なスイーツ「バナナロール」を売っている店は大変めずらしく、マカオ中探してもなかなか見つからないそう。取材に同行した元マカオっ子は、「小学生の頃、学校の帰り道によく食べた。けどもう何十年も食べてない!きっと今の子供たちは、この味を知らないんだろうなぁ」と、やや物思いにふける様子。
材料はバナナフレーバーのパウダー、小麦粉、砂糖、水のみ。お餅のようなしっかりとした粘着力があります。駄菓子屋さんで売っていそうな昭和感漂う味に、初めて頂いた筆者もなんだか懐かしさを感じます。
日本でも、お馴染みの味を発見!
餅生地であんこを包みココナッツをまぶした「糯米糍」は、日本の大福そっくり。
こちらの「カップケーキ(紙杯蛋糕)」は、甘食のような味でややしっとりとした食感です。日本の味に通ずる物も多数あり、より親しみを覚えます。
子供時代にタイムスリップさせる、追憶の味。
毎朝欠かさず朝食を買いに来る紳士や、小銭を握りしめ、学校帰りに寄り道する子供たち・・・店内は常に笑顔が絶えません。昔ながらの素朴な味が人々を魅了する「美利堅餅店」。焼き立ての「パイナップルパン」は、この店を象徴するような優しい味。いつまでも変わらずそこに居て欲しい・・・そんな心温まる伝統パン工房のご紹介でした。
※パイナップルバンやポークチョップバンは、「パン」ではなく、「バン」が、マカオを始め海外でもそのまま通じる発音になりますが、記事内では日本で馴染みのある「パン」を通称として使用しております。
住所:澳門祐漢新村第二街73號吉祥樓地下
Tel:28378489
『マカオでパン!【1】愛すべきマカオ名物「エッグタルト」をあの名店で』もぜひ。
[All photos by Ai Kaneko]