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忘れられない9.11から17年・・明日という日が今日と同じようには来ないかもしれないから

Posted by: 青山 沙羅
掲載日: Sep 11th, 2018.

夏の終わりを告げる9月第1月曜日のレイバーデイが過ぎると、アメリカ人にとって忘れられない9月11日が巡ってきます。2001年9月11日のワールドトレードセンターのテロから、17年の歳月が経ちました。そこには、人間と同じ数だけドラマがありました。

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忘れられない9/11から17年 明日という日が今日と同じようには来ないかもしれないから
2001年8月当時のワールドトレードセンター
(C) Hideyuki Tatebayashi

夏の終わりを告げる9月第1月曜日のレイバーデイが過ぎると、アメリカ人にとって忘れられない9月11日が巡ってきます。2001年9月11日のワールドトレードセンターのテロから、17年の歳月が経ちました。3,000人近くの犠牲者を出した大惨事を、今一度振り返ってみようと思います。そこには、人間と同じ数だけドラマがありました。


もう一度、君に電話できたら

忘れられない9/11から17年 明日という日が今日と同じようには来ないかもしれないから

“Hey Jules, this is Brian,” Sweeney told his wife Julie. “I’m on an airplane that has been hijacked…if things don’t go well, and they’re not looking good, I want you to know that I absolutely love you. I want you to do good, have good times, same with my parents. I’ll see you when you get here. I want you to know that I totally love you. Bye, babe, hope I will call you.”

やあ、ジュール(妻の愛称)。僕だ、ブライアンだよ。
僕が乗っている飛行機が、ハイジャックされている。この先の状況は良くなさそうだ。
だから、僕が君をとても大事に思っていることを伝えたかった。
もっと君と一緒に生き、一緒に人生を過ごしたかった。僕の両親みたいにね。
また、きっと会おう。天国で君が来るの待っているよ。
君を心から愛していることを分かってくれるね。
バイ、愛する君。もう一度、電話出来たらいいな。

ブライアン・スイーニー氏 享年38歳(元アメリカ海軍パイロット) 
搭乗機がワールドトレードセンターへ衝突直前に、妻へ残した最後のメッセージ
意訳 青山沙羅

ブライアン氏は2001年9月11日に、ユナイテッド航空175便に搭乗。飛行機はハイジャックされ、ワールドトレードセンターの南棟に激突。衝突する3分30秒前に、ブライアン氏が妻のジュリーさんに電話したメッセージ。

Sweeney, a 38-year-old former U.S. Navy pilot from Massachusetts, was a passenger on United Airlines Flight 175, and he left the message for his wife three and a half minutes before the plane struck the South Tower of the World Trade Center, according to the Sun.

参照
[Who Was Brian Sweeney? The 9/11 Victim Left A Voicemail For His Fiancee From The Plane]


【The Stories They Tell- Voicemail from Flight 175 9/11 Memorial & Museum】

2001年テロ数日前のワールドトレードセンター

忘れられない9/11から17年 明日という日が今日と同じようには来ないかもしれないから
2001年9月当時のワールドトレードセンター
(C)Hideyuki Tatebayashi

2001年9月11日のわずか数日前に、ダウンタウンCharles streetから撮影したワールドトレードセンター。テロ後に現像(当時はフィルム撮影)したら、謎のハレーションが。何かを暗示するようでもあります。テロ後、ニューヨークのビジネスは一斉に落ち込みました。クライアントからの依頼はボツになり、お蔵入りになっていた写真です。

元気?今どこにいるの?こんなに逢いたいのに。

忘れられない9/11から17年 明日という日が今日と同じようには来ないかもしれないから

元気? 今どこにいるの? こんなに逢いたいのに。

9/11で犠牲になった父親に宛てた、5歳の息子が書いたハガキ
意訳 青山沙羅

9/11で父を亡くした幼い息子から、父へ宛てたハガキ。シンプルに思いを綴ったメッセージに、心を打たれます。

止まってしまった時間

忘れられない9/11から17年 明日という日が今日と同じようには来ないかもしれないから

ワールドトレードセンターのオフィスで働いていた婚約者を、9/11テロで失った女性。彼女と同居していた婚約者は別れを告げることもなく、帰らぬ人になってしまいました。悲しみから立ち直ることはできず、苦しみ鬱病を患いました。マンハッタンの高層ビルを目にすることは悲しみを呼び起こし、彼との思い出の詰まったニューヨークシティは一人で生きるには辛過ぎました。結局シティからは離れ、姉の住む郊外の町へ移り住みました。その町を選んだのは、ニューヨークの高層ビルはどこからも見えないから。2001年9月11日から、彼女の時間は止まってしまったのです。

3時間歩いて、学校にいる娘を迎えに行った

忘れられない9/11から17年 明日という日が今日と同じようには来ないかもしれないから

2001年9月11日、テロ当日の日。地下鉄やバスは止まり、乗用車は止められ、道路や橋は厳しい交通規制が敷かれました。ニューヨークのマンハッタンで働いているニューヨーカーは、歩いて帰宅せざるを得なくなりました。携帯電話は繋がらなくなり、家族や愛する人の無事を確かめることもできませんでした。事故現場や近辺で働いていた家族の安否に胸を痛めた、長い1日だったのです。

無事だった人は、クイーンズやブルックリンの自宅まで、橋を渡り、延々とストリートを歩き、何時間もかけて家にたどり着きました。車は通行止めされ、公共の交通は全て遮断され、自分の足で歩くほかなかったのです。マンハッタンダウンタウン勤務のスクールバスの運転手は、クイーンズ区の小学校に通う娘を3時間歩いて迎えに行ったそうです。小学校にたどり着いた父は、煤と埃で真っ白になっていました。

そして必然の出逢い

忘れられない9/11から17年 明日という日が今日と同じようには来ないかもしれないから

2001年9月11日のテロで多くの子供たちが、愛する父や母親を失いました。Brielle Saraciniさん(女性)とSean McGuire氏(男性)が、父を喪ったのは共に10歳の時。Brielleの父Victor Saracini氏(享年51歳)は、ワールドトレードセンター南棟に激突したユナイテッド航空175便の機長。激突された南棟内84階のEuro Brokers Inc.には、McGuireの父Patrick McGuire氏(享年40歳)が勤務しており、再び子供たちに逢うことは叶わなくなりました。

その子供たちが出会ったのは、テロから2年後。9/11で親を失った子供のための、”Camp Better Days”というニュージャージーで行われたサマーキャンプ(夏休みに行われる小中学生を対象として行われるプログラム。泊まり込みもあれば、日帰りもある)でした。そのキャンプでふたりは気が合い、恋に落ちました。そして、テロから16年後の9月に結婚しました。同じ痛みを持つことがきっかけで、結びついたカップル。天国にいる父親たちが、ふたりを結びつけたのかもしれません。9/11を意識したわけではないのに、利用可能な週末で選んだら、結婚式の日取りは9月9日という9/11に近い日付になったそうです。やはり、運命の出会いなのでしょう。

参照
[Fox News Children of 9/11 victims meet at camp, wed 16 years later]
[A 9/11 wedding tale – CNN Video – CNN.com]

唯一生存した木 サバイバル・ツリー

9/11テロにより、残骸から発見された瀕死状態で生き残った唯一の木。ブロンクスで手当てを受けて蘇り、枝葉を伸ばしました。奇跡の木として人気の高い、「サバイバル・ツリー」。希望という得難いものを、身をもって示してくれます。


【9/11 ‘Survivor Tree’ Returns to Ground Zero | Short Film Showcase
National Geographic】

明日という日は、今日と同じように来るわけではないことを私たちは知りました。9月11日は、毎日をもっと大事に生きなければと思い起こす日でもあります。

9.11同時多発テロについては、過去記事『あの日を忘れない。5月にオープンした「9/11メモリアルミュージアム」へ』『ダークツーリズム連載【2】あれから15年。同時多発テロの悲劇を伝える「9/11メモリアルミュージアム」』も合わせてどうぞ。

[Photos by shutterstock.com]
[Photos by Hideyuki Tatebayashi]
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青山 沙羅

sara-aoyama ライター
はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。


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