
近年、新たな京都の観光テーマとして注目を集めているのが、現代アーティストが手がけたモダンな襖絵。
今をときめくアーティストが由緒ある寺院に襖絵を奉納し、これまでの寺社見学とはひと味違う、「寺×現代アート」の楽しみが生まれているのです。
そのひとつが、小野小町ゆかりの寺として知られる「随心院」。写真映え抜群の極彩色の襖絵は、匂いたつような幻想世界にいざなってくれます。
小野小町ゆかりの寺「随心院」

991年に創建された真言宗善通寺派の大本山、随心院。創建当時は「牛皮山曼荼羅寺」と称されていました。
この名は、開祖である仁海僧正が亡き母が牛に生まれ変わっていたという夢を見たため、その牛を尋ね求めて飼育したものの、ほどなく死んでしまい、その牛の皮に両界曼荼羅の尊像を描き本尊にしたことに由来しています。

この界隈はかつて「小野郷」と呼ばれ、小野氏が栄えた地域。「絶世の美女」といわれる平安時代の歌人、小野小町が余生を送った場所と伝えられ、「小野小町ゆかりの寺」として知る人ぞ知る存在です。

小野小町が顔を洗ったという「小町化粧井戸」や、貴族から届いた恋文を埋めたと伝えられる「小町文塚」など、伝説めいたスポットは歴史ロマンをくすぐります。
SNSで話題「極彩色梅匂小町絵図」

かねてから「小野小町ゆかりの寺」として知る人ぞ知る存在だった随心院ですが、近年になってフォトスポットとして人気が急上昇しています。

そのわけが、「能の間」に奉納されている襖絵「極彩色梅匂小町絵図」。「はねず色」と呼ばれる鮮やかな薄紅色を基調としたこの作品は、従来の襖絵の概念を覆すほど色鮮やか。目にした瞬間、その名の通りの極彩色にはっとさせられ、そのまま物語の世界に吸い込まれてしまいそうです。
「極彩色梅匂小町絵図」を手がけたのは、「だるま商店」という2人組みの若手アーティスト。4面からなるこの襖絵は、小野小町の一生を描いたもので、2009年に完成しました。

当初は写真撮影不可だったそうですが、「写真を撮りたい」という声があまりにも多かったため、写現在では写真撮影ができるようになっています。着物を着て、襖絵といっしょに写真に収まるのもいいですね。
小野小町の一生を幻想的に描く

「極彩色梅匂小町絵図」に描かれているのは、小野小町の一生を中心に据えた平安時代の日本。小野小町が生まれてからその生涯を終えるまでが、逸話や神話を交えつつ表現されています。
くっきりと描かれた箇所と、ぼんやりと影のように描かれた箇所が混じり合い、夢と現実の区別もつかなくなっているかのような幻想的な世界・・・

4面からなる襖絵は、左から「生誕の図」「饗宴の図」「伝承の図」「夢幻の図」に分かれていて、それぞれ秋田県で生まれて生活する様子、仁明天皇のもとで宮仕えをする様子、宮仕えを辞し小野の地で過ごす様子、小野を出て諸国を放浪する様子を表しています。

一般に「絶世の美女」として知られる小野小町には、華やかなイメージがつきまといますが、晩年は見る影もないほど老衰した姿となり、寂しく過ごしたともいわれています。
小野小町の生涯にはいまだ謎も多いものの、「故郷に帰って穏やかに隠遁した」というエピソードがある一方で、「乞食となって落ちぶれた」「地方各地を放浪して行き倒れた」などといった、絶世の美女のイメージからはかけ離れた不遇なエピソードも残っているのです。

それが本当だとしたら、まさに波乱万丈。美貌や歌人としての才能だけでなく、ドラマティックな生き方も、彼女が後世に名を残す一因となっているのかもしれません。
時が止まったかのような静寂の世界

京都中心部から外れているために、市内中心部の有名観光スポットとは比べものにならないほど静かな時間が流れる随心院。

能の間や本堂、書院などの建物は回廊でつながっており、風情ある庭とともにゆったりとした時間が過ごせます。名勝の小野梅園も併設し、3月は梅、4月は桜、11月には紅葉のライトアップと、季節ごとに移ろう自然美を楽しみましょう。

観光客の姿も少なく、堂内を歩けば木の床がミシミシと音を立てる、数百年ものあいだ時を止めているかのような随心院は、まさに穴場。地図を見れば市内中心部からかなり遠そうに見えますが、地下鉄の小野駅から徒歩5分と、意外にアクセスが良いのも魅力です。
極彩色の幻想的な襖絵と伝統美に会いに、山科の地へと出かけませんか。


Haruna ライター
和歌山出身。東京での会社員時代に、旅先でドイツ人夫と出会う。5か月間のアジア横断旅行の後ドイツに移住し、ライターに転身。約2年半のドイツ生活を経て、現在は日本在住。「歴史地区」や「旧市街」と名の付く場所に目がなく、古い町を歩き尽くすのが大好き。世界のリアルな「ワクワク」を多くの人に伝えたい。
期間限定“カカオ味”が新登場!京都の「スライスようかん」であんバタートー
Jan 18th, 2021 | ロザンベール葉
京都土産に大人気の亀屋良長「スライスようかん」。シート状の羊羹+バター羊羹をパンにのせてトーストするだけで、“あんバタートースト”のできあがり!そして期間限定で“カカオ味”が新登場!こちらは“フォンダンショコラ+あんバタートースト”風味です。ちょっとユニークなバレンタインのプレゼントにいかがでしょう。実食ルポでご紹介します。
【京都】ほかほか&ふわふわ!町家カフェで“抹茶のホットケーキ”「うめぞの
Jan 7th, 2021 | ロザンベール葉
京都では、“みたらし団子”で根強い人気の老舗甘味処「甘党茶屋 梅園」。四条烏丸にほど近い小さな通りに佇むのが、その姉妹店でギャラリーを備えたカフェ「うめぞの CAFE & GALLERY(カフェ&ギャラリー)」です。町家をモダンに改装した店内で、系列店ではカフェのみの限定メニュー“抹茶のホットケーキ”をはじめ、多彩な和スイーツを堪能できます。ギャラリー展示も楽しめますよ。実食ルポでご紹介します。
日本列島ゆるゆる古墳ハント(12)古墳の上でお弁当を食べる「作山古墳群」
Dec 23rd, 2020 | 水谷さるころ
「旅チャンネル」の企画で世界一周を2回経験した、古墳を愛するイラストレーター・マンガ家の水谷さるころが、これまで訪れた日本各地の古墳の魅力を紹介します。今回は、京都府与謝郡の「作山(つくりやま)古墳群」です。
【京都】ホテルで優雅に「冬のショコラ・アフタヌーンティー」とアートを満喫
Dec 18th, 2020 | ロザンベール葉
京都駅の東隣という便利なロケーションにある、ホテル「THE THOUSAND KYOTO(ザ・サウザンド キョウト)」。スタイリッシュにして落ち着きのある空間で、「冬のショコラアフタヌーンティ」や、いけばなとプロジェクションマッピングの雪が舞う「風花雪月」など、冬を華やかに彩るイベントが実施されています。まもなくクリスマスを迎えるこの季節、自分へのご褒美を兼ねて心潤うひとときを過ごしてみませんか?実食、体験ルポでご紹介します。
日本列島ゆるゆる古墳ハント(11)工事中で見られなかった「私市円山古墳」
Dec 9th, 2020 | 水谷さるころ
「旅チャンネル」の企画で世界一周を2回経験した、古墳を愛するイラストレーター・マンガ家の水谷さるころが、これまで訪れた日本各地の古墳の魅力を紹介します。今回は、京都府綾部市の「私市円山古墳/聖塚・菖蒲塚古墳」です。
【京都】名勝庭園の紅葉を眺めながらカフェを楽しめる!「無鄰菴」で至福のひ
Nov 26th, 2020 | ロザンベール葉
秋も深まり、紅葉シーズンの到来です。京都・東山の麓、南禅寺のほど近くに、明治・大正時代の政治家・山縣有朋の別荘「無鄰菴(むりんあん)」があります。その庭園は、昭和26年(1951年)に国の名勝に指定されました。東山を借景にした名勝庭園の紅葉は実に見事です。また、その景色を眺めながらカフェを楽しめるのが、こちらならではの魅力!往時に思いを馳せながら、秋の景色を堪能しに訪れてみませんか?
チェックアウトは余裕の14時!朝食が何度も食べられるホテルに泊まってみた
Nov 17th, 2020 | わたなべ たい
京都のメインストリートともいえる烏丸通りに、2020年8月に開業した「sequence KYOTO GOJO(シークエンス キョウト ゴジョウ)」。なんとこのホテル、ゲストにはうれしいチェックアウトが14時ということに加え、朝食が何度でも食べられたり、顔認証システムが取り入れられたり、神秘的なリラクゼーション施設があったりと、今までにない京都体験ができるホテルなのです。
【京都】羊かん×モンブラン、抹茶×ティラミス!ユニークな和洋スイーツに舌
Nov 14th, 2020 | ロザンベール葉
紅葉の美しい季節ですね。京都市北部にある比叡山の麓には、曼殊院、圓光寺、詩仙堂といった紅葉の名所が並んでいます。その通り道にあるのが和菓子処「一乗寺中谷(いちじょうじなかたに)」。最近は特に“絹ごし緑茶てぃらみす”で人気ですが、秋なら栗を生かした“栗蒸しモンブラン”など季節のフルーツによる和洋折衷のスイーツが魅力です。紅葉めぐりがてら、秋のスイーツを味わいに出かけてみませんか?
ホテルの中にお寺が!?京都で異色のホテルに泊まってみた【三井ガーデンホテ
Nov 13th, 2020 | わたなべ たい
日本初ともいえる“ホテルの中にお寺があるホテル”が2020年9月京都に誕生。お寺と一体になったホテルには、寺院装飾が散りばめられているんだとか。しかもそのお風呂がスゴかった!まるで異空間へと誘われるような幻想世界が広がっています。
1日1組限定で3密回避!ほっこり京都を味わえる京町家に泊まってみた【紡
Nov 12th, 2020 | わたなべ たい
京都に1日1組限定の1棟貸しのお宿があるとの情報をキャッチ!京町家をリノベーションしたということからも、ぬくもりと風情ある京都が楽しめそうな予感。シティホテルなどでは味わえない、いつもと違う京都を感じられるのに加え、1日1組なのでプライベート感たっぷりに3密を避けたステイを満喫できます。