フランス統治の影響もあって、古くからカフェ文化が発達しているベトナム。近年ホーチミンでブームになっているのが、古いアパート内にひっそりと店舗を構える隠れ家カフェです。
なかでも見逃せないのが、配給制度下のハノイをテーマにした「コンカフェ」。どこか退廃的なムードの古アパートは、レトロでダークな世界観のカフェにぴったり。タイムスリップしたような空間で、こだわりのコーヒーを使った絶品ドリンクを楽しみましょう。
リノベアパートがアツいホーチミン
近年、ホーチミンで新たなトレンドとなっているのが、リノベーションアパート。古いアパートを個性的なカフェやブティック、サロンなどが入居する商業施設に改装したもので、ホーチミンの流行の発信地としておしゃれな若者たちに人気を集めています。
そのひとつが、リートゥーチョン通り26番地のアパート。素通りしてしまいそうなほど目立たない入口から建物内に入ると、一瞬にしてタイムスリップしたかのような光景が飛び込んできます。雰囲気は、どこかアングラで退廃的。
こんなアパートにホーチミンの最新トレンドを反映した、おしゃれなカフェやショップが潜んでいるのです。
ハノイ発のカフェチェーン「コンカフェ」
リートゥーチョン通り26番地のアパートで、ひときわ高い人気を誇るカフェが、1階(日本式2階)にある「コンカフェ」。
ハノイ発の「コンカフェ」は、南北ベトナム統一前の配給制度下のハノイをテーマにしたコンセプトカフェで、「コンカフェ」は「共産カフェ」を意味します。
現在、ハノイやホーチミン、ダナン、ホイアンなど、ベトナムの主要都市や主要観光地に展開するコンカフェですが、ホーチミン1号店がここ。古めかしいリノベーションアパートは、レトロでポップ、それでいてどこかダークな世界観をもつコンカフェの世界観にぴったりというわけです。
完成された独特の世界観
店内に一歩足を踏み入れると、そこは南北統一前のハノイ。はがれかけた壁や、昔なつかしい木の椅子とテーブル、レトロなラジオや時計、古い本など、インテリアのすべてが古き良きハノイをモチーフにしています。
ダークな色合いの店内で目を引くのが、鮮やかな赤やグリーンのカーテンやクッション。布地に描かれているバラやクジャクも、当時のハノイを象徴するシンボルなのです。
スタッフの制服は、北ベトナムの軍服にインスパイアされたミリタリー調。店頭では、ミリタリー色のTシャツやノートなど、オリジナル雑貨を購入することもできます。
ホーチミンのカフェは、ドリンクのみならず多彩なフードを楽しめるお店が多いですが、ここは「配給制度下のハノイ」。コンカフェのフードメニューは、ひまわりの種やスパイシーコーン、クロワッサンなど、ごくごく質素なものばかりです。
南北統一前の配給制度下のハノイという設定から、見事なまでにぶれないコンカフェ。いい意味でチェーン店とは思えないほど、完成された世界観は「あっぱれ」です。
絶品ココナッツミルクコーヒー
その独特の世界観から、コンカフェは奇抜なアイデアやユニークな内装から人気を集めていると思われがちです。しかし、コンカフェの魅力はそれだけではありません。
コンセプトカフェだけに、味より雰囲気に重きを置いているのかと思いきや、コンカフェのコーヒーは焙煎からこだわったベトナム産の厳選コーヒー豆を使用。ベトナムっ子には「コーヒーがおいしいカフェ」として認知されています。
特におすすめなのが、シグニチャードリンクのひとつ「ココナッツミルクコーヒー」。ココナッツミルクのスムージーをコーヒーと混ぜたアイスブレンドのドリンクです。
筆者が初めてこれを飲んだときは、あまりのおいしさに驚きました。香り高いコーヒーの風味がしっかりと感じられる一方で、ココナッツミルクをブレンドしているため、とってもまろやか。
ベトナムコーヒーといえば練乳を混ぜるのが定番ですが、ココナッツミルクを使用すると、練乳よりも優しくすっきりとした味わいになるのです。誰にでも飲みやすい一品なので、コーヒー好きはもちろんのこと、コーヒーがあまり得意でない人にも一度は試してみてほしいドリンクです。
新感覚ヨーグルトコーヒー
もうひとつ、コンカフェの名物となっているのが「ヨーグルトコーヒー」。その名の通り、ベトナムコーヒーにヨーグルトと練乳、細かく砕いた氷を混ぜた新感覚のコーヒードリンクです。
「コーヒーとヨーグルトなんて合うの!?」という声が聞こえてきそうですが、これが意外にも相性が良いのです。コーヒーの苦みとヨーグルトの酸味、練乳の甘味が混然一体となったヨーグルトコーヒーは、まさにコーヒーの新境地。これも、練乳とヨーグルトの存在感に負けない、強い風味をもつベトナムコーヒーならではの楽しみ方といえます。
そこにいるだけで楽しくなれる、完成された世界観と、新たなベトナムコーヒーの魅力に出会えるユニークなドリンクたち。その両方があるからこそ、コンカフェは現地の若者が足しげく通う大人気カフェの地位を不動のものにしているのです。
[All photos by Haruna]
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Haruna ライター
和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。
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