【カナダ】-50℃対応の極寒地用の寝袋で寝る!?建物全てが氷のアイスホテルの楽しみ方

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Mar 14th, 2019

関東でも先日春一番が吹きましたが、今年の冬は何か一生の思い出になるような出来事がありましたか?一生ものの思い出を作るなら、今から次の冬に向けて計画を立ててみるのもよいかも。その有力な候補が、カナダ東部にあるケベック州で毎年冬に出現するアイスホテルです。

(Phote by Luc Rousseau)

そろそろ日本では本格的な春が近づいていますが、今年の冬は何か一生の思い出になるような出来事がありましたか? 「特にないな~」という方は、今から次の冬に向けて、ユニークなプログラムへの参加を検討してみてはどうでしょうか。

その有力な候補が、カナダ東部にあるケベック州で毎年冬に出現するアイスホテル。文字通り氷と雪だけでできたホテルで、宿泊者は氷のベッドの上に、-50℃まで耐えられる極寒地用の寝袋を敷いて眠る宿泊施設になります。

氷でできたバーラウンジや、ジャグジー・サウナを完備した氷のスイートルームまであります。何か特別な思い出を残したいという人は、ぜひともチェックしてみてくださいね。

試行錯誤の末にたどり着いた「快適な」アイスホテル

そもそもアイスホテルが出現するケベック州とは、カナダの東部に位置しています。カナダというと日本から見れば西海岸側のバンクーバーやカナディアンロッキーが有名になるかと思いますが、ケベック州はケベック・シティやモントリオールを抱えるカナダ東側にあるのですね。

現地で知り合った米フロリダ在住(アメリカの東海岸)の人が、米ニューヨーク在住の人、米ボストン在住(同じくどちらも東海岸)の人、さらにはケベック州の人と、「私たちeast coasters(東海岸人)は」と自称していたように、まさに北米大陸の東側、大西洋側になります。

ケベック州の州都はケベック・シティ。そのケベック・シティから自動車で20分ほどの距離にあるバルカーティア休暇村の一角に、アイスホテルはあります。

ケベック・シティでガイド業をされている高橋浩也さんによれば、同ホテルはもともとスウェーデンから技術提供を受けて2001年にカナダでプレオープンした歴史があるのだとか。各地を転々とした後に、現在のバルカーティア休暇村の敷地内に落ち着きます。

バルカーティア休暇村でアイスホテルが成功した理由は、そのフレキシブルな宿泊スタイルにあるとの話。宿泊者は、もちろんアイスホテル内で寝泊まりしても構いませんが、一方でバルカーティア休暇村の本館のホテル利用も併せて認められていると聞きます。氷のホテルの寝心地や居心地が悪かったときには、本館の部屋で寝泊まりしてもいいという、ある種の「保険」が認められているため、その安心感が旅行者に受けたみたいですね。

宿泊よりも見学で楽しんだ方が現実的!?

暖炉の置かれた部屋も。ただし、暖炉は熱が部屋に漏れないように透明の囲いで覆われている。スタッフの方によれば、体を温めるためでなく、心を温めるために設置されているそう

アイスホテルの最大の魅力は、そのコンセプトになります。訪問時にガイドを担当してくれた現地スタッフの方によれば、40人ほどが集まって約40日間(約5週間)でホテル全体を造るものの、春になれば重機を使って5時間で破壊してしまうと言います。

電気ケーブルなど、雪や氷だけでは作れない電気材料なども一部で使用されていますが、全42室(2018-2019シーズン※毎年変わる)とそれなりの規模があるホテルを、たった5時間で破壊できてしまうくらい、テーブルからベッド、バーのグラスに至るまで、本当に全てが氷と雪でできているのですね。

もちろん、広告記事ではありませんから、不自然に高い下駄をはかせる必要はありません。カナダ滞在中に出会ったアメリカ人ライターによれば、彼はアイスホテルに宿泊した経験があるそうで、「正直に言えばアイスホテルは泊まる場所ではない、見学する場所だ」との話をしていました。

筆者は単に昼間に見学で訪れただけでしたので、「寒くて眠れないのか?」と聞いてみると、室内は常にマイナス3~5℃に保たれているため、寝袋に入れば寒さは全く問題ないと言います。ただ、部屋にはドアもなく、もちろん鍵もかからないため、落ち着いて眠れなかったのだとか。照明についても消灯ができないため、まぶしかったと言います。

午後8時以降は宿泊者以外が宿泊エリアに立ち入り禁止になり、全42部屋あるうちのスイート6部屋(2018-2019シーズン)には、専用のジャグジーやサウナもあります。そうした点を考えると、夜には宿泊者にしかない楽しめない特別な空気感がもちろんあるはず。

しかし、上述のアメリカ人も助言してくれたように、宿泊は495~895カナダドルと高額ですから、あえて宿泊をせずに、ケベック・シティからサイドトリップ的に見学に訪れるだけでもいいのかもしれませんね。

ホテルのコンセプトは見事で、氷のグラスにお酒を注いだカクテルドリンクは、SNSにアップして友だちに自慢するネタとしては、インパクトが十分にあります。その手の体験は見学だけでも楽しめますし、実際に見学のみの客はたくさん居ます。中には世界的な演出家ロベルト・ルパージュさんのような著名な方も居て、会話を楽しむ機会もありました。

ちなみに氷のカクテルグラスに関する注意点として、グラスの乾いている部分にそのまま口をつけて、こぼさないようにとゆっくり飲むと、まれに唇が氷に接着してしまうのだとか。飲み口を少しなめてから飲むと安心だと言います。

分厚く四角いの氷のグラスは、お世辞にも飲みやすいとは言えません。しかし、その不便さも氷のホテル内では楽しいですし、1つのアトラクションとして大いに盛り上がれましたよ。

以上、冬のケベック州の楽しめる期間限定の宿泊施設、アイスホテルを紹介しましたが、いかがでしたか? 敷地内には氷と雪のチャペルも設けられており、筆者が取材で訪れた日には、結婚式も開催されていました。その意味では、何か人と違う結婚式を挙げたいという人にこそ、むしろ必見のホテルかもしれませんね。

[Photos by Masayoshi Sakamoto and shutterstock]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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