旅の目的は「たったひとつ」で良い

旅の目的は「たったひとつ」が潔いと思いませんか。
あれもこれもと盛りだくさんは、大人には野暮というもの。情報が氾濫している現代だからこそ、余計なものは削ぎ落として、自分の「たったひとつ」を選び取るのが粋。旅の荷物はシンプルに、期待だけを詰めて。

私たちがまだ訪れたことのない、未知の場所や絶景。
笑顔で迎えてくれる、あたたかい地元のひと。
生産地ならではの、新鮮で美味しいもの。

珠玉のように散らばる日本各地の魅力を発信する「ONESTORY（ワンストーリー）」。「ONE=1ヵ所」を求めて日本を旅するメディアから、私たちの「たったひとつ」が見つかりそうです。

ピンク色のベールが日本を覆う

日本が美しいのは、四季があるから。待ちに待った春が来ますよ。春は魔法のベールで日本全国をふわりと覆い、優しいピンク色に染め上げます。

寒さに顔が強張る冬は、終わりました。空を見上げると、春の光とピンクのベール。ピンクのベールは幸せの香りがして、誰もの頬が緩みます。年間で一番幸せを感じる季節が、来ましたよ。

岩手県八幡平　山の麓に凛と佇む一本桜

残雪の岩手山を背景に、岩手県八幡平の牧草地に凛と佇む上坊牧野(うわぼうぼくや)の一本桜。遠くから見るとぼんやりと霞がかかっているように見える「カスミザクラ」は、例年5月上旬から中旬にかけて開花。自分のペースでゆっくり咲く、遅咲きのおひとりさま桜です。

秋田県角館　武家屋敷に揺れる嫁入り道具のしだれ桜

江戸時代に城下町の町並みが形成された、秋田県角館市。町内には約450本ものシダレザクラがあり、しっとりした町並みと良く似合います。角館の桜の始まりは、約350年前。角館佐竹家2代目・佐竹義明の妻の輿入れの際、京都から持参した嫁入り道具の一つが3本の桜の苗木。以降、武家屋敷一帯に桜が広がったそうです。見頃は4月下旬から5月上旬。

青森県弘前公園　花びらが降り注ぐ桜の海に漂う

現存する中では日本最古といわれるソメイヨシノをはじめ、シダレザクラやヤエザクラ52種2600本が、遅い東北の春を待ちかねていたように咲き誇り、青森県弘前市を桜色に染めます。散った桜の花びらが水面を覆い、連なって流れていく様子が「花筏（はないかだ）」。弘前城のお濠を桜の花びらが覆うさまは、桜に酔うほどの迫力。2018年のジョルダン　お花見人出ランキングによると、花見の人出は弘前公園が200万人で日本で第1位。東北のお花見は、ちょうどゴールデンウィーク時期と重なることもあり、トップ5は東日本が占めます。

函館五稜郭公園　ピンクスターの桜

北海道・函館を代表する観光地、五稜郭（ごりょうかく）公園。あなたも函館を訪れた時には、行ったかもしれませんね。五稜郭とは、稜堡（りょうほ）と呼ばれる５つの突角を配した星形五角形の外観からきた名称。大砲による攻撃の死角をなくすために考案され、ヨーロッパで発達しました。星形の堀に沿う約1,600本の「ソメイヨシノ」が開花するのは、4月下旬から5月上旬。夜はライトアップされ、五稜郭タワーから眺めるとピンクの星が舞い降りたかのようです。

今回のたったひとつは、日本を染め上げる美しい春色の絶景。私たちが旅へ向かわずにいられないのは、日常で求められない「たったひとつ」に出逢うためなのです。

参考
[お花見人出ランキング2018　ジョルダン]

青山 沙羅

sara-aoyama ライター

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。