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2019年3月15日、クライストチャーチでモスクを狙ったテロが起きました。俄には信じられませんでした。でも現地の友人の「犯人は世界で最も人種差別のない、平和で美しい都市でテロを起こそうとしたらしい」という話を聞いて納得しました。
街も人の心も美しく保つクライストチャーチの魅力を、改めてご紹介したいと思います。
ガーデンシティ 花と緑が美しい街
クライストチャーチはガーデンシティと呼ばれます。街の中を流れるエイボン川。川幅が広いところではパンティングやエイトの練習が見られ、狭いところではその美しい流れを活かし、色とりどりの花や木が植えられた庭や公園が点在します。
エイボン川に面していなくても、クライストチャーチでは庭の手入れに余念がありません。第2のリビングルームとして使われることが多いのです。芝を植え、木々や花に囲まれ、ダイニングテーブルや椅子が並べられます。お茶をしたり、バーベキューをしたりワイン片手に読書をしたりします。
いつも庭を美しく保つには努力が必要です。雑草を取り、伸びた芝を刈り、季節の花に植え替えます。個人の庭では、週末になると朝から夕方まで手入れをしている姿をよく見かけます。週末のほとんどの時間を取られてしまうのではないかと、はじめは不思議な光景でした。もちろん大きな公園では庭師「ガーデナー」がいつも働いています。
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人の心も美しく保つためには
世界中から人が集まれば、文化の違い、考え方の違いで誤解が生じ、差別が生まれることもあります。クライストチャーチではそういうことが起こらないように社会の仕組みやマナーを大切にしているようです。
先住民のマオリ族の言葉や文化を大切にし、地名や道路の名前にはマオリ語が多く使われています。観光客を迎える看板などにも英語と並んでマオリ語が併記されることが多く、マオリの文化を守り育てているのです。
一番驚いたのは男女の差別がない、というより、職場でも家庭でも女性の地位がかなり高いことです。ニュージーランド人は、自分たちのことを「キウイ」と呼びます。「キウイハズバンド」は家事を積極的にこなす夫のことを指す言葉です。
現在の首相はニュージーランド史上3人目となる女性首相アーダーンさんです。彼女は、去年、首相在任中に6週間の産休を取りました。その後は彼女のパートナーが「釣りの第一人者」兼「専業主夫」として主に家庭を守っているそうです。このことはニュージーランドではとても好意的に受け止められています。子供を育てることと社会参加が両立できる国であることを誇りに思うからです。
クライストチャーチで暮らしていると「いい笑顔だね」と人に褒められることが度々あります。地域に笑顔が溢れていれば、安心、安全な地域づくりにつながります。週末にマーケットやスポーツ大会など小さなイベントが開かれる地域も多く、集まった人々が会話と笑顔を交わします。
手間を惜しまず街に花を絶やさないように、お互いの笑顔を確認し、褒めてこの街に笑顔を絶やさないようにしているのです。
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フリーレンジエッグ
クライストチャーチの郊外を車で走ると、「フリーレンジエッグ」という看板をよく見かけます。これは放し飼いで飼われている鶏の卵のことです。スーパーで売られている卵もほとんどがフリーレンジエッグです。味は変わりません。値段は少し高めです。しかしこの街の人々はフリーレンジエッグを愛します。
一緒に生きるすべてのものに敬意を払い、お互いを尊重する姿勢はこんなところにも表れているのではないでしょうか。
筆者は2011年2月22日のクライストチャーチ地震で被災し、この街で3月11日の東日本大震災を知りました。翌日、街で何人もの初対面の人たちに声を掛けられ、日本人だと知ると、「とても残念なニュースだわ。勇気をもって頑張ってね」と励まされました。この街の人たちも被災したばかりなのに。
筆者が知る限りクライストチャーチは「世界で最も人種差別のない平和で美しい都市」だと思います。