飛鳥Ⅱとは?
船旅に興味のある人でも、そうでない人でも、きっと知っている「飛鳥Ⅱ」。日本船籍最大のクルーズ客船です。筆者にとっても長年の憧れでした。
筆者は数年前に、初めてクルーズ旅行をしました。高齢の、母の病気が治ったお祝いでした。これが意外と、そして非常に良かったのです。
クルーズ旅行の利点の1つに、体への負担が比較的軽い、というのがあります。「動くホテル」と形容されることが多い客船ですが、客室で荷ほどきをしたら、下船まで自由にできるというのは、本当に魅力的でした。
そして費用です。日本から乗る船でも、お値打ちで充実したクルーズ旅行はできます。1泊1万円くらいからでも可能ですし、しかも料金には、宿泊から食事、イベント、施設使用料も、基本的にはみんな含まれています。
いわゆる「オールインクルーシブ」というシステム。一部は有料ですが、クルーズ旅行イコール高額、というのは、ある種の誤解かもしれません。
そして、外国船を中心に、マイペースにクルーズ旅行を楽しんできたのですが、あるとき、飛鳥Ⅱによく乗るという方に会いました。
(C)TOSHI
上品で感じのいい方で、お話も面白かったです。ただ、その人が本当はものすごいお金持ちであることが分かり、それ以来、なんとなく、飛鳥Ⅱというものに恐れをなしてしまったのです。
そんな飛鳥Ⅱに、とりあえず乗ってみようと思ったきっかけは、よく一緒に旅行する母が年齢を重ねてきたのがきっかけの1つでした。
外国船は、特に海外から乗る場合、外国の良さ、異国情緒が味わえるというメリットがあると思います。日本人が真似できるだろうか、という本気さで踊りあかす人を目にして感動したことや、外国の人と交流ができるという一面もありました。
ただ、年齢を重ねてきた母が、できれば旅行中も湯船で体を温めたい、体調にかかわるときがある、と言うようになりました。
お風呂事情が違う国の船では、シャワーしかない部屋が多かったのです。バスタブがついている部屋は限られていて、とても割高になった場合もありました。
ところが飛鳥Ⅱの客室は、全室がバスタブつきなのです。また、「グランドスパ」という、最上階に位置する展望大浴場では、眼下に広がる大海原を眺める爽快感を味わえる、と聞きます。
全室が海に面し、ツインタイプのベッドを完備・・・クルーズライフを快適にするさまざまな設備が用意されているそうです。
「いや、やっぱり飛鳥Ⅱはいいね。至れり尽くせりだね」
と、語る方々のうっとりとしたまなざしを思い出します。
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そんなとき、ちょうど、地元名古屋から横浜までのワンナイトクルーズがあったので、乗船してみることにしたのです。旅行代金も、思っていたほどは高くありませんでした。ちなみに、飛鳥Ⅱの公式サイトの「ワンナイトクルーズ」には、こう書かれています。
「1泊2日のご乗船いただきやすいお手軽な日程と代金設定で、はじめての船旅にも最適」
「コースディナーやプロダクションショーなどのクルーズならではのナイトタイムや、飛鳥Ⅱ自慢の朝食まで、じっくり堪能できます」
1泊2日のお手軽な日程と、代金設定・・・
「じゃあちょっと贅沢に、バルコニー付きの客室にしようかな」
と考えていました。
そうしたら、父が突然旅費を負担してくれることになり、「アスカスイート」の客室で乗船できることになったのです!予想外の展開に、非常にびっくりしました。飛鳥Ⅱは「ロイヤルスイート」が一番広い客室なのですが、その次だなんて・・・そんな部屋、陸でも泊まったことがありません。楽しみな反面、少し緊張します。
飛鳥Ⅱに乗船した印象と充実の船内施設
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当日、地元名古屋港へ。ここからクルーズ船に乗るのは初めてです。飛鳥Ⅱに乗船したときの最初の印象は、「あれっ、あっさり乗れた。こんなに楽なの!?」でした。
セキュリティチェック、手続き、乗ってからの移動すべてがスムーズ。外国船はパスポートがないと乗れませんし、手荷物もすべて毎回チェックされました。
飛鳥Ⅱは日本船籍最大のクルーズ客船であると同時に、船としては、中型船に属する豪華客船なのです。この方が船内での移動はしやすいし、落ち着いている、とは聞いていました。
確かに、乗船してから、あっさりと客室に到着。楽という点で、信じられないほどでした。
大型船はカジュアルクラスの船が多いといわれています。娯楽施設が充実していて、ロッククライミングができる船もあるくらいなのですよ。娯楽施設が多く、広いと、中での移動時間もそれなりにかかることがありますが、たくさんの人が一度に乗れるので、料金も比較的お値打ちです。筆者が乗った中で一番大きな船では、外国の子どもたちがボール遊びをしていて楽しそうでした。きっと船上で知りあったのでしょうね。
そして飛鳥Ⅱの船内には、前述の施設のほかに、種類豊富なレストランとバー、ショーやコンサートが開催される大ホール、映画館、社交ダンスを楽しめるダンスフロアのあるラウンジ、カードルーム、マージャンサロン、図書室、和室、プール、フィットネスセンター、『パドルテニス』のできるコート、スポーツエリアなどがあります。
日本船、飛鳥Ⅱの図書室ってどんなのでしょう。インルームマッサージも有料で用意があるそうです。
飛鳥Ⅱ。これがアスカスイート・・・帰りたくないと感涙
(C)TOSHI
そして、これがアスカスイートの客室です!!テレビで観てましたよ!あのクッション、大好きなんですっ。
やっぱり、なんてすてきなインテリア。今、ここにいるなんて夢みたいです!!
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プライベートバルコニー付の45.8㎡です。テレビ、DVD兼ブルーレイプレイヤーもあるのがうれしい。
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ウォークインクローゼットや、ダブルシンク洗面台なんて、家にもありませんよ。バスタブはジェットバス付、シャワーは2つあります。
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こんな机があれば大作家気分です。
ウェルカムスパークリングワイン、カナッペ、クッキー
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とにかく、隅々まで気配りがゆきとどいて、かつスペースに無駄がなく、機能的な客室です。なんて居心地がいいんでしょう。帰りたくありません。
ちなみにアスカスイートには青を基調にした部屋、赤を基調にした部屋があります。飛鳥Ⅱで一番高額なロイヤルスイートは88.2㎡で、ここの約2倍の広さがあることに。窓付きのお風呂もあるそうですよ。
船上で季節感のあるフレンチをいただけるとは夢にも思わなかった
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筆者が参加したのは、「春の名古屋・横浜ワンナイトクルーズ」です。この日の夕食でいただけたのは、「春の日ディナー」。春の食材と身体にやさしいスーパーフードがテーマのフレンチディナーでした。
こちらにまた感激。船上で、春をともに喜ぶ、季節感のあるフレンチをいただけるなんて、夢にも思いませんでしたよ。日本の文化、日本のフレンチって素晴らしいですね。
桜色のロゼワインで乾杯、すてきな時間の始まりです。
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アミューズ「春の箱庭風蟹とグリンピースのムース」。庭園にはオーシャントラウトキャビア、アマランサス、花穂など。おいしい!
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アペタイザー「桜の香る蝦夷アワビ紅心大根のマリネ」菜園風の盛り付けにはレモンオイルを粉末にした白粉がなごり雪のよう。美しいですね。アワビ好きなのでうれしいです。それと、分かりますか。これ、つくしが散らしてあるんですよ!
母と、
「懐かしい。子どもの頃、春になると一緒に、つくし採りに行ったね」
と大いに盛りあがりました。
飛鳥Ⅱって素晴らしい。こういう話を同行者としながら食事を楽しむことができる、というのは、日本船ならではでしょうね。
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スープ「ウニとアカモクのロワイヤル仕立てアサリブイヨンを注いで」。ああ、絶品です!フロム・ザ・シー「オマール海老のリソレ菜の花とキヌアリゾットを添えて」は2色のソースで。シャーベット「春カブのソルベベルガモットのオリーブオイル」。メインコースは3つから選べたのですが、「黒毛和牛 低温ローストホワイトアスパラとフルムを添えて」にしました。デザート「“春一番”よもぎと低糖質 乳酸菌入りバニラアイス添え」。パンもすべておいしかったです。
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S・Aスイート(「Sロイヤルスイート」、「Aアスカスイート」)の客は専用「プレミアダイニング プレゴ」を使えます。筆者もここで食べました。
この日のドレスコードはインフォーマルでした。着物の方々もいてとてもすてきです(飛鳥Ⅱでは、ドレスコードとメニューは日によって異なり、和食などの日もあります)。
あいにくこの日は少し曇っていたのですが、そんなときの日暮れもまた、意外に風情があって非常に美しく、壁の絵もきれいでした。愛する名古屋の街や、故郷の海が窓の外に流れていくのを見ながらこんなに素晴らしいディナーをいただけて、本当にいい思い出になりました。
飛鳥Ⅱのお土産は蒸発するようになくなる
(C)TOSHI
それからは本格的な歌と踊りのショーを観ました。マジックショーもありました。前述したように、これらのショーを観るのにも、基本的に追加料金はかかりません。素晴らしいディナーも、食後に払ったのはワインの料金だけです。
船内のショップへ。買い物も楽しいです。飛鳥Ⅱのロゴグッズやお菓子も売っています。一緒に行った母が、普段お世話になっている皆さんに、とそれらを山のように買って、別便で送ったので、ちょっと恥ずかしいなとそのときは思っていました。
帰宅したら飛鳥ⅡのTシャツ、飛鳥Ⅱの写真がパッケージに使われたお菓子などが積まれていました。そんなに買ってどうするの、と軽いけんかになったのに、それがおさまるまでの間に、それらが蒸発するかのようにすべてなくなったので、またびっくりでした。
そして、筆者も友達などに飛鳥Ⅱのロゴグッズのお土産を買いましたが、やはり好評だったのです。それだけ飛鳥Ⅱは有名で、高い関心を持たれているということなのでしょう。
「客船は生きもの!?」飛鳥Ⅱが好きに。そして・・・
(C)TOSHI
「動くホテル」と形容されることが多い客船。筆者は同時に、「客船はみんなを楽しませてくれる、頼もしい生きもののようだ」と思います。
たくさんの人を乗せて、美しくも時にきびしい海の中を行く。その中で人々は海の素晴らしさを満喫し、かけがえのない思い出をつくることができる。それぞれに魅力と個性があり、愛されているところも、生きものに似ているような気がします。
いずれにせよ、飛鳥Ⅱのことも筆者は好きになりました。「帰りたくない!いつか飛鳥Ⅱに1ヵ月くらいいたい、いや、世界一周がしたい」と思いました。同時に、アスカスイートで本当にそうしたら、少なくとも筆者にとっては驚くべきお金がかかることを、のちに知ったのも、ふれておかねばなりません。
飛鳥Ⅱは、きっと思っているよりそばにある
周囲に聞いたら、みんな、飛鳥Ⅱの名前は知っているのですが、
「すごいお金かかるんでしょ。とても乗れない」
もしくは、
「飛鳥ってワンナイトクルーズあるの!?長い旅行は、今、できないから無理だと思ってた」
と言います。「船旅は別世界の話」という思い込みがあるのだ、と感じました。
けれど筆者でも、筆者なりの乗り方でこんなに飛鳥Ⅱを楽しめたのです。
そしていつも思うのですが、旅が好きなら、陸しか旅しないのはもったいないです。
どの船にもそれぞれの良さ、魅力があるのでしょうが、乗り心地、居心地の良さという点で、飛鳥Ⅱは素晴らしかったとしかいいようがありません。長期は無理でも、2泊3日でもっとお値打ちな部屋ならまた乗れるかな、などと考えました。
船旅、そして飛鳥Ⅱは、思っているよりそばにあるのかもしれません。筆者はそう思っていますし、楽しみがまた増えました。
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