前田敦子さんがウズベキスタン観光大使に就任!肌で感じた現地の魅力とは?

Posted by: 渡邊玲子

掲載日: Jun 11th, 2019

人は誰しも、それぞれの旅の途中・・・。今回は女優の前田敦子さんにインタビュー。主演映画のロケ撮影をきっかけに訪れたウズベキスタン。その観光大使に就任した前田さんに、旅のエピソードから撮影秘話までたっぷりと語っていただきました。

前田敦子さん インタビュー

映画『旅のおわり世界のはじまり』

どこかで見たことがあるような、バラエティー番組のリポーターの「葉子」に扮した前田敦子さんと一緒に、観客もウズベキスタンを旅しているような気分が味わえる映画『旅のおわり世界のはじまり』。国内外で絶大な人気を誇る黒沢清監督率いる撮影チームが、ウズベキスタンに1か月まるまる滞在してロケ撮影を実施。雄大なシルクロードの風景からホコリっぽい街角の雑踏、さらにはバザールの熱気までを切り取り、1コマごとに主人公の心の移ろいを映し出しています。

映画『旅のおわり世界のはじまり』前田敦子さん

ー本作の出演をきっかけに、前田さんはウズベキスタン共和国の「観光大使」に就任されたんですよね。撮影中は1か月にわたって現地に滞在されたそうですが、ウズベキスタンって、どんなところでした?

前田:ウズベキスタンのことは最初は何も知らなかったんですが、調べてみたら意外と観光地っぽい見所もいっぱいあって。実際に行ったら予想以上にすごく素敵な場所だったので、「なぜ日本にはまだそんなに浸透してないんだろう?」って、不思議に思ったくらいです。今回、オープン前のホテルに何カ所か滞在させてもらったんですが、どこも全部可愛くて。女の子だけで行っても全然危なくないですし、プライベートでも行きたいなって思いました。きっとこれからもっともっと発展して、さらに素敵な場所になっていくんじゃないかなって思いますね。

ー映画の中ではバザールに行ったり、旧市街の裏路地に迷い込んだりされていますね。

前田:黒沢監督は「キラキラした場所より、ちょっと暗いところで撮りたい」っておっしゃっていたので、一生懸命みんなで探したんですけど、結局リアルに危ない場所はなかったみたいですね。裏路地に入っても、普通に子供が遊んでたりとか。街灯が少ないから夜は暗いんですけどね。

映画『旅のおわり世界のはじまり』撮影シーン

ー撮影中、黒沢監督からはどのような演出を?

前田:「笑わないでください」っていうのはずっと監督から言われていましたね。「心を開かないでください」って(笑)。映画の中ではウズベキスタンの人たちのセリフには字幕が出てなかったりもするので、ちょっと怖い感じに見えるかもしれないですけど、実際はすごくいい人ばかりだったので、「NO!」とか言って逃げなきゃいけなかったりするシーンでは、ちょっと胸が痛みましたね。

素敵すぎるウズベキスタンの日常風景

ー観光大使の就任会見で、前田さんが「サマルカンドは女の子が大好きなインスタ映えスポット」と紹介されていましたが、他にも乙女心がくすぐられるポイントはありました?

前田:ウズベキスタンの真夏は最高気温が50℃くらいになるらしくて、日中はみんな室内で生活しているからなのか、インテリアがすごく充実しているんですよ。一見何もないように見えるんですけど、お家の中にお邪魔すると、ものすごく素敵なんです。

ー現地の方のお宅も訪問されたんですか?

前田:そうなんです。撮影で川に入るシーンがあるんですけど、川の目の前に住んでいる方が「足が冷えるでしょう? 中で休んでいきなさい」って、お家に案内してくださって。いざ中に入ってみたら、お庭に「ドーン」って大きなさくらんぼの木が植えられていて。そこからさくらんぼの実を摘んで出してくれるんですよー! 素敵すぎて、「ウソでしょ?」って思わず声が出ちゃったくらいです(笑)。

前田敦子さん ウズベキスタンを語る

ーお土産も買ったりされました?

前田:はい! 可愛いお土産がいっぱいありました。ウズベキスタンの方たちは手先が器用みたいで、細かい装飾が施されているシルバーアクセサリーもいっぱいあって。ほかにも、刺繍とか手書きで模様が描いてあるアクセサリー入れとか鏡とか、沢山買って帰りました。すごく安いですし。オススメだらけです(笑)。

ー劇中、ウズベキスタンの名物料理「プロフ」をリポートするシーンで、生焼けのものを食べて「美味しい」と言わされていましたが、ウズベキスタン料理のお味はいかがでした?

前田:ちゃんと全部美味しかったです(笑)! 野菜もいっぱい採れるし、とにかくラム肉が豊富で。全部が女の子向きだなぁと思いながら、楽しんでました。

ー前田さん演じる葉子が遊園地のアトラクションで何度もグルグル回転させられるシーンは、観ているだけで吐きそうになりました。実際に前田さんが乗られているんですか?

前田:ガチで乗ってます(笑)。見るからに「危なそうだなぁ」と思ったんですが、助監督さんが「全然平気ですよ」って言うから1回試しに乗ってみたら、全然そうじゃなくて……。しかもワンカットで撮ったので、撮影のために3回連続で乗らないといけなくて。結局全部で4回乗っているんです。しかもあの乗り物は手動なので、係の人が自分でスピードを調節できちゃうんですよね。

ーもはやその方に命をゆだねている感じですね。

前田:そうなんですよ! しかも気を利かせて普段よりちょっと速めに回してくれたみたいで、初めてカメラの前で何も考えられなくなりました。「うわぁ、終わった……」って思いましたから(笑)。

女優・前田敦子がふたたび向き合う「歌」

黒沢監督が「フレームに写っただけで独特の強さと孤独感が漂う」と絶賛するとおり、異国の地に投げ込まれた不安や緊張を、繊細な表情で見事に伝える前田さんは、クライマックスでは標高2,443mの山頂で、名曲『愛の讃歌』の歌唱を披露。なんとアカペラで撮影に挑み、実際に現場で収録された歌声が、映画の中で使用されているんです。

映画『旅のおわり世界のはじまり』山頂シーン

ー山の上で『愛の讃歌』をアカペラで歌い上げるシーンも、かなりハードだったのでは?

前田:7〜8時間バスに揺られて行くような遠いところで、プライベートで行こうと思っても、多分一生行けないような場所なんです。こんなところで歌えて贅沢だなぁと思う反面、「標高が高い場所で歌を歌うのは、こんなに大変なんだ!」って思い知らされました。

ー歌を卒業して女優の道に進んで、映画の中でまた歌を歌うことになるとは……?

前田:いや、黒沢監督じゃなかったらやっていないと思います。監督から「歌って欲しい」って当たり前のように言われたんです。しかも曲が『愛の讃歌』。「なんでそんな難しい歌をあえて選ぶの?」って思ったんですけど、この映画の醍醐味なんだなっていうのはわかっていたし、黒沢監督がそこまで言ってくださるなら、やってみる価値はあるのかなって。でもいざフタを開けてみたらすごく大変で……。これが最初で最後かな。

ーどんな準備をして撮影に臨まれましたか?

前田:普段は割と「とりあえずやってみよう!」っていうタイプなんですが、今回はさすがにそうはいかないなぁと思っていたので、自分ができる限りのことはやりたくて、撮影前に沢山トレーニングをさせてもらいました。歌いやすいように監督がキーをアレンジしてくださったり、ものすごくこだわってくださったので、今までにない『愛の讃歌』の曲調になってるなと思います。でも、「どうやったら自分らしく表現できるのかな」って考えるうちに、どんどんプレッシャーにもなってきましたね。

ー『愛の讃歌』はオリジナル版の歌詞で歌われていますね。

前田:和訳が何バージョンかあるんですが、今回は、エディット・ピアフのフランス語の歌詞により近いものを歌わせていただいています。最初練習してる時は全然思わなかったんですけど、本番になったときにその歌のすごさに気づいてしまって、一瞬「どうしよう……」って、パニックになっちゃいました。歌っている間も、歌の持つパワーに負けそうになりましたね。「名曲って言うのは、それ自体が魂を持ってるんだなぁ」って。どちらかと言うと、私はこれまでポップな歌をずっと歌ってきたので、歌詞が「命持ってます」って言うのは初めての経験でした。

ー実際に何回くらい歌われたんですか?

前田:1曲フルで歌ったのは、確か8テイクだったと思います。あっという間に時間が経っていて、ホテルに帰ったら「ウソでしょ!」っていうくらい真っ黒に日焼けしていて……。「山はすごいな」って、肌で感じましたね(笑)。

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ー歴史あるナボイ劇場の舞台で歌った感想は?

前田:ナボイ劇場って、ものすごく広いんですよ。彫刻を日本人の方たちが彫っているんですが、全部にちゃんと意味があるんです。そんな場所で歌わせていただけるなんて感慨深いなと思いましたし、オペラ専用に作られている場所なので、ものすごく歌いやすくて。ナボイ劇場のシーンがすべての撮影の最後だったので、気持ちよく終えることができました。

加瀬亮さんがあしながおじさん!? 素顔の前田さん&共演者の皆さん

前田さんと行動を共にする番組クルーを演じているのは、どこか黒沢監督を思わせるディレクター役の染谷将太さんと、優秀ながらもちょっと陰のあるカメラマン役の加瀬亮さん、そしてフットワークの軽いAD役の柄本時生さんという、個性豊かな演技派の3人。本物の撮影スタッフと見紛うほどのリアルさで、絶妙のチームワークを見せています。

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ー映画の中で、葉子が街を一人でさまよい歩くシーンが印象的でした。前田さんご自身はきっちり計画を立ててから旅をしたい慎重派ですか? それとも行き当たりばったり派ですか?

前田:行き当たりばったり派だと思いますね。私自身、特に何のこだわりもないんです。だから同じタイプの人と一緒に旅行すると、大変なことになるパターンが多いんです(笑)。以前、高畑充希ちゃんと2人で台湾に行ったときに、みっちゃんは「ことりっぷ」と、さらにもう一冊ガイドブックを持って来てて、両方見比べながら「私、ここ行きたい!」「今日はまずここに行って、これとこれをやって……」ってどんどん決めてくれて。「そっか、旅ってこうやって楽しむものなんだ!」って、初めて気づきました。私はそれにただ「ありがとう!」って思いながらついて行くだけで……(笑)。

ーそうなんですね! 今回の撮影中、特に印象に残っているエピソードはありますか?

前田:基本的に(柄本)時生がずっと付き合ってくれたので、撮影の合間もすごく楽しめました。移動時間が結構長かったので、新しい街に着くたびに1回休憩が入るんですよ。ある日、時生と2人で「ウズベキスタン料理を食べに行こう!」って張り切って出かけたら、ロシア料理のお店だったんです。なかなかウズベキスタン料理にたどり着けなくて、「(高畑)みっちゃん調べて〜」って感じでしたね(笑)。

ーハハハ(笑)。その様子が目に浮かびます。

前田:そういう意味では、加瀬さんがすごく頼りになりました。1人でいろいろ調べて、みんなに「ここがいいよ!」って教えてくれて。しかも「監督にはこれ」「前田さんにはこれ」みたいな感じで、みんなにお土産まで買ってきてくれるんですよ! まるで「あしながおじさん」みたいでしたね(笑)。

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ー染谷さんはどうでした?

前田:染谷さんには意外な一面があって、可愛らしかったです。出発した直後から「早く帰りたい」って、ホームシックになってしまって……(笑)。毎日娘さんとテレビ電話をするのが1番楽しいって、ホテルにこもり気味でした。監督はご夫婦で現場にいらしてたので、奥様と街をお散歩されているのを遠目から見てました(笑)。

ーこの作品を通して新たに気づいたことや発見したことはありますか?

前田:「何も知らない場所に行っていろいろ考える」っていう意味では、私自身も擬似体験したような感じでしたね。自分がそれまでに挑戦したことがないことを一つでもやってみると、確実に成長につながるっていうことに後から気づいたり……。

前田敦子さん『旅のおわり世界のはじまり』インタビュー

ーいま前田さんが挑戦されていることは?

前田:最近子どもが生まれて、すべてが初挑戦ばかりです。本当に子どもに感謝だなって思いますね。何かに気づいたら成長できるって、本当なんだなって実感させてもらってます。

ーちなみに、前田さんの旅の必需品は?

前田:カメラですね。子どもが生まれる時に新調したんです。一眼レフまではいかないけど、いろんなモードが楽しめて。「動画も撮れるし、すごく使い勝手がいいですよ」って、店員さんからオススメされて(笑)。

ー普段、どんなところを旅することが多いですか?

前田:最近、国内でも行ったことないところが結構いっぱいあるなぁと改めて思って、「3カ月に1回ぐらいは家族で温泉に行こうね」って、いろんなところを旅行してるんです。

ーいま一番行きたいところは?

前田:沖縄の離島ですね。島でゆっくりしたいなぁって思ってます。

旅のおわり世界のはじまり_本ビジュアル

インタビュー中、ハッピーオーラ全開の弾ける笑顔でお話ししてくださる前田敦子さんの姿から、公私ともに充実した日々を送られている様子が手に取るように伝わってきました。異国情緒あふれるウズベキスタンの地で放たれる“女優・前田敦子”の圧倒的な存在感と、「いまの自分の全てを出し切った」という迫力ある歌声を、ぜひ劇場で確かめてみてください!

映画『旅のおわり世界のはじまり』公式サイト
https://tabisekamovie.com

[Interview Photos by Masataka Kawamura]
Do not use images without permission.

PROFILE

渡邊玲子

REICO WATANABE ライター

映画配給会社、新聞社、WEB編集部勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動中。国内外で活躍するクリエイターや起業家のインタビュー記事を中心に、WEB、雑誌、パンフレットなどで執筆するほか、書家として、映画タイトルや商品ロゴの筆文字デザインを手掛けている。イベントMC、ラジオ出演なども。

映画配給会社、新聞社、WEB編集部勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動中。国内外で活躍するクリエイターや起業家のインタビュー記事を中心に、WEB、雑誌、パンフレットなどで執筆するほか、書家として、映画タイトルや商品ロゴの筆文字デザインを手掛けている。イベントMC、ラジオ出演なども。

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