ドイツの空の玄関口、フランクフルト。「フランクフルトには観光スポットが少ない」といわれることもありますが、フランクフルトの近郊に多数の観光地があるのをご存じでしょうか。そのひとつが「ドイツ木組みの家街道」の町、イトシュタイン。日本のガイドブックには載らない、小さなおとぎの国を訪ねてみました。
ドイツ木組みの家街道の町、イトシュタイン
フランクフルトと同じヘッセン州に位置するイトシュタイン(Idstein)は、人口2万3000~2万4000人ほどの小さな町。ロマンティック街道などと同様、ドイツの観光街道である「ドイツ木組みの家街道」に属しており、メルヘンチックな木組みの町並みが魅力です。
日本のガイドブックには載っておらず、ドイツ人観光客がポツポツと訪れる程度。フランクフルトの近くでありながら、古き良きドイツの雰囲気が残る穴場的観光スポットです。
フランクフルトからのアクセスは、フランクフルト中央駅からローカル線で40分弱。イトシュタイン駅から旧市街の中心までは歩いて12分ほどで、徒歩での観光が可能です。
絵のようなケーニヒ・アドルフ広場
イトシュタインに到着したら、まずはケーニヒ・アドルフ広場を目指します。ドイツの広場は、「マルクト広場」の名が付いていることが多いのですが、イトシュタインの広場は、この地を納めたナッサウ家出身の神聖ローマ皇帝アドルフ・フォン・ナッサウにちなんで名付けられています。
ケーニヒ・アドルフ広場は、周囲をぐるりと豪華な建物に囲まれた絵のような広場。正面には、鮮やかなオレンジ色の外壁の市庁舎が建ち、その背後に傾いた青い家とお城へとつながる建物が並んでいます。小さな町には似つかわしくないほど、立派な建物が並ぶ様子に驚かされます。フランクフルトのこんなに近くに、こんなに可愛い町並みがあったなんて!
ここで注目してほしいのが、「傾いた家」といった意味をもつ「シーフェス・ハウス」。黒と青の外壁と、オレンジ色の窓枠の組み合わせが目を引く建物で、ぱっと見ただけでも傾いているのがわかります。建築時の資材不足によって、徐々に現在の姿になっていったのだとか。このいびつな形がまた可愛らしく、旧市街ファンの心をくすぐってやみません。
イトシュタインで最も美しい「キリンガーハウス」
イトシュタインの旧市街には、15~18世紀に建てられた豪華な木組みの家が多数残っています。なかでも装飾性に富んでいるのが、市庁舎の斜め向かいにある「キリンガーハウス」。
当時の書記官夫妻によって1615年に建てられた家で、壁や柱、梁には色とりどりの木彫り細工が施されています。細やかな装飾の美しさはもちろんのこと、どこかミステリアスな色使いも印象的で、いつまでも眺めていたくなります。隣の赤い木組みの家とのコントラストがまた素敵ですね。
現在、キリンガーハウスは市の所有となっており、観光案内所と市の博物館として使われています。
中世の雰囲気が残る「魔女の塔」
カラフルな木組みの建物が並ぶイトシュタインの旧市街に、アクセントを添えているのが「魔女の塔」。1170年建造のイトシュタインで最も古い建造物で、町のあちこちからその姿を見ることができます。
気になる名前の由来は・・・19~20世紀ごろ、塔と見ると「魔女の塔」と名付ける風潮があったため。イトシュタインでも一時魔女狩りが行われていた時代がありましたが、「魔女の塔」と魔女狩りの歴史は直接関係ありません。
それでも、「魔女の塔」と聞くと、「非日常のおとぎの世界」の雰囲気が増すような気がしませんか。観光案内所で鍵を借りれば、塔に上ることもできます。
日常の空気が漂う木組みの町
レストランやホテルなどとして使われている建物もありますが、イトシュタインに残る木組みの家の多くは民家。観光のためのアトラクションではなく、地元の人々が生活を営むイトシュタインの木組みの町には、静かで優しい時間が流れています。
時とともに歪んだ木組みの建物が多いのもご愛嬌。建物の一軒一軒に、人々の愛情がたっぷりと込められているような気がします。
今回は、意外と知られていない、ドイツ郊外の穴場的観光スポットをご紹介しました。ドイツに行く際には、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。
[All photos by Haruna]
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Haruna ライター
和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。
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