「神泉」と呼ばれる瓜割の滝とは
皆さんの暮らす町には、名水百選に入る美しい水源がありますか? 今回紹介する瓜割の滝は福井県の若狭町にあって、この滝は昭和版の名水百選に入っています。目と鼻の先にある隣町の小浜市には、同じく名水100選の鵜の瀬がありますから、一体は水の美しいエリアなのです。
そもそも若狭町や小浜市とは、福井県の嶺南と呼ばれる県南部になります。瓜割の滝から国道303号線(若狭街道)を行けば、すぐに滋賀県、すぐに琵琶湖という立地ですから、北陸でありながらほぼ関西に属していると考えても良さそう。
その若狭町には若狭瓜割名水公園があり、森林の一角には古くから「神泉」と尊ばれ、
<五穀成熟諸病退散の効あり>(瓜割の滝に掲示された案内板より引用)
と地元の人に信じられている瓜割の滝があります。
「うりわり」とは北陸では比較的聞く清水の名前。例えば同じ北陸の富山には昭和の名水百選「瓜裂清水 (うりわりしょうず)」があり、同じ福井県でも越前市には「赤谷瓜割清水」があります。若狭町の瓜割の滝は、そうした北陸の「うりわり」清水の中でも、代表格の名水なのですね。
ちなみに越前生まれで、日本三霊山の1つ白山の開創者として伝えられる泰澄(たいちょう)大師の時代から尊ばれているとされます。泰澄大師は7世紀末から8世紀に生きた偉人ですから、1000年以上前から特別な水と考えられてきたのですね。
囲いの先にある水源は立ち入り禁止の聖域
この瓜割の滝は、千石山(標高682m)のふもとにあります。国道27号線から天徳寺の方へ曲がると駐車場があり、その駐車場から散策道を歩くと滝にたどり着きます。
駐車場付近には飲食店やお土産物屋を兼ねた、2016年にリニューアルの『名水の里』、1万株のあじさいで有名な若狭瓜割名水公園、先ほど名前を出した泰澄大師が開いたとされる天徳寺の88体の石仏もあります。
滝までの道のりは、緩やかな上りで7~8分ほど。途中、舗装道路が切れる場所もありますが、特別なトレッキングの装備は必要ありません。駐車場から普段着で散歩がてらに「神泉」と言われる滝まで行ける気軽さも魅力的ですよね。
滝というより清流
森がわずかに深くなったと思ったら、木々の根っこが山の傾斜に沿って盛り上がる一角が見えてきます。その隆起したエリアには竹囲いがめぐらされていると気づくはず。まさにこの囲いの先が、立ち入り禁止の聖域で、瓜割の滝になるのですね。
滝というと富山県の称名滝 や栃木県の華厳の滝 、和歌山県の那智の滝 のように、巨大な水流が滝つぼにむかって激しく落下するスポットを想像するかもしれません。正直、そのイメージで訪れると、予想と違う滝の姿に拍子抜けする人も出てくるはず。
むしろ、清らかな水源が古くから守られてきた、神々しさや神聖さを感じながら、こけむした岩間をはうように流れ下る清流を心静かに眺めたいところです。
秋は周囲の広葉樹も色づきます。周辺の植生は針葉樹が主体のため、劇的な色彩の変化が楽しめるわけではありませんが、アクセントのように鮮やかに色づく木もあって美しいです。清らかな水の気配に満ちた空間で見る秋の森は、独特の見ごたえと気持ち良さがありますよ。
もちろん、瓜割の滝では水の流れに手を差し込める場所もあります。水を専用のポリタンクに入れて持ち帰れる水くみ場もあります。ポリタンク自体も、先ほど紹介した名水の里で販売されています。
水くみ場で地元の人に声をかけると、
「お米をたいてもおいしい」
「そのまま飲んでもおいしい」
「ここは日本のおいしい水ランキングで2位に入った」
などと、土地の名水に胸を張る人ばかりでした。
滝に隣接した若狭瓜割名水公園 には駐車場も完備され、滝まで散策道も整備されています。
同じ若狭町には安賀里銀杏観音 、隣町の小浜市には萬徳寺 の枯山水の庭園、神宮寺 の紅葉と、紅葉スポットも密集しています。それらの名所を周る一環で、瓜割の滝にも立ち寄ってみてくださいね。
若狭瓜割名水公園
住所:福井県若狭町天徳寺37-1-3
開館(利用)時間:入園は自由
駐車場:有
料金:入園は無料、水を持ち帰る際には清掃協力費として300円が必要
[All photos by Masayoshi Sakamoto]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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