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監獄がコンテンポラリーアートの館へ!何度でも泊まりたくなる「刑務所ホテル」を現地ルポ【オランダ・ルーモント】

Posted by: 鈴木幸子
掲載日: Nov 29th, 2019.

世界でもっとも独創的なリノベーション文化が根付くオランダ。まずは、首都アムステルダムから南部オランダへ足を延ばして、2011年の創業以来人気を博す「刑務所ホテル」に泊まってみたら、オランダ人の奔放な発想の転換に驚かされっぱなしでした。

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生まれて初めての刑務所ホテル、ドキドキ感が募る

ホテルの正面玄関
「うぅぅっ・・・刑務所リノベホテル・・・怖いかも」。

取材スケジュールを手にした時の正直な感想です。ちょうど出発前に、テレビ番組『世界ふしぎ発見』でも紹介されていた、オランダ南部ルーモントにある今話題の刑務所ホテルの「ヘット・アレストハウス」。夜、変な夢にうなされないだろうかと、ドキドキしながらオランダ初日にそのホテルに泊まってみました。

アムステルダム空港到着は夕方
アムステルダムから電車で約2時間、ドイツ国境にほど近いオランダ南部の街ルーモントは、ヨーロッパ最大級のデザイナーズアウトレット(別記事で紹介)がある街としても知られています。


到着したのは夜。駅を出て7~8分ほど歩くと、左手にムンスターケルク教会が見えてきます。その少し先にある、ひときわ目立つ白とグレーのモダンな建物、これがヘット・アレストハウスです。


1863年に建てられた刑務所が1997年に一度閉鎖され、2002年にドラッグ密輸業者の留置場として再オープン。しかし再び2007年に完全閉鎖されました。その後、大規模な改装を終え、2011年4月にラグジュラリーホテルとして生まれ変わりました。

中に入って一瞬で虜に!

青色のキャンディに白いピストル
一歩ロビーへ足を踏み入れると、そこはモダンアートの世界。ホテルとは思えないギャラリー風のフロントや、アーチを描く天井の柱、サービスのキャンディ皿の真ん中に、白いピストルを置くなどオシャレな演出が! 監獄風のデザインやモチーフを最大限に生かしながら、館内すべてがユーモアのセンスに満ちています。


まず客室に入って目に飛び込んできたのは、黒人の囚人が横を向いてにっこりと微笑む巨大なモノクロ写真。各部屋にひとり一人違う囚人の写真が掲げられています。これがまた、美術館かと見紛うような味わいのある写真ばかり。もちろん著名な写真家によるものです。


客室は、元囚人の監房3つを繋げて1室にしてあり、広々サイズ。筆者が泊ったのはコンフォートセルで、広さは30平米。ドアを開けると、まずはリビング、寝室、奥はバスルームとシンク、と仕切りで分かれており、3つの部屋を有している感覚で、大変使い勝手の良いレイアウトでした。リビングと寝室それぞれに液晶テレビも備わっていました。

プリズナーモチーフの遊び心にワクワク


白と黒のモノトーンで統一された客室は、囚人の監房だったとは思えないほど美しく、とにかくシンプルでシックにまとまり、清潔感に溢れています。ベッドのクッションも固すぎず、柔らかすぎず、ベッドに入るや否や、数十秒で熟睡できたことは言うまでもありません。


布団に入ろうとすると、何やら、小さなビニール袋に入った怪しげな2つの白い塊が。そしてその袋には「This is Legal(これは合法です)」の文字・・食べてみるとなんとハッカキャンディでした。館内のそこここに、囚人の身長を測るメモリボードや、入獄時に撮る証明写真用の手持ちカード、囚人服を着たフィギュアなど、クスッと笑える小ネタがたくさん詰まっているではないですか!

鉄格子から望む教会の灯り
監獄らしい鉄格子の窓がまた雰囲気たっぷりでした。最初の夜は、格子の窓からこのホテルに来る途中で見かけた、オレンジ色にライトアップされた教会が見えて、この部屋で過ごした囚人たちもあの教会の灯りを見て何を思っていたのだろう、などシンパシーを感じたりもしました。

ホテルのアイコン的シャンデリアに魅せられて

自宅のインテリアに欲しかった大好きな証明
このホテルに2泊して、もっとも魅了されたのは、宿泊棟内の中央通路のインテリアです。
陽の光がうっすらと入る日中、そして夜は間接照明が、時間と共に黄色、紫、青などに変化し、時間帯によって雰囲気がガラリと変わるのです。
筆者は、とくに通路の中央に取り付けられた白い木製のシャンデリア風照明が大変気に入って、朝、夜、これでもかというほど、写真を夢中で撮り続けました。
最後の夜は、なんと、この通路の中で地元の人たちによるパーティが開かれており、地元の人のお気に入りのホテルであることも分かりました。

こんな壁ペイントも!
ホテル内のポスターもポリス

公共の場にアートがあふれるオランダの街

なぜ、このようなオシャレなホテルに生まれ変われたのでしょうか。
資料を見てみると、最初の刑務所を設計するとき、きちんとアラード・ピアソンというプロの建築家にデザイン依頼をしていました。それも1864年という年に。

オランダでは、市役所や病院、図書館、刑務所ほか、すべての公共建築費用の5%はアートに使わなければならないという法律が定められているそうです。

レストラン・ダミアンツ
夜の雰囲気も最高
レストランやバーのセンスの良さは言うまでもなく、料理の盛り付けもアーティスティック。モダンオランダ料理も満喫できて、大満足。

悪い夢を見るかもしれない・・・そんな予想を覆して、この監獄ホテルにハマってしまいました。監獄をこんなエンターテインメント性溢れるブティックホテルに仕上げるとは、オランダ人のリノベーション術にあっぱれです。読者の皆さまにも是非一度宿泊していただきたい類稀なる粋なホテルですよ。
※客室カテゴリーは、コンフォート、デラックス、スイート4種の全6種。全40室。

欧州30カ国をお得に回れるユーレイルパス
※オランダの旅なら、オランダ・ベルギー・ルクセンブルクの3カ国で鉄道が乗り放題となる「ユーレイルパスのユーレイルベネルクスパス」を使うと便利。3、4、5、8日間のパスから選ぶことができます。こちらを利用されるのも、いいかもしれませんね!

ヘット・アレストハウス HET ARRESTHUIS
住所:Pollartstraat 7, 6041 GC Roermond, The Netherlands
電話:+31(0)475 870 870 
HP:https://www.hetarresthuis.nl/en

取材協力:
KLMオランダ航空
オランダ政府観光局

鈴木幸子

sachikosuzuki 旅行記者、エディトリアル・ディレクター
出版社勤務や地球の歩き方編集を経て2001年に独立。世界60か国以上を頻繁に取材し、一期一会のハッピーな記事を書いています。JTBるるぶ「アンコールワットとカンボジア」初版制作。著書『もち歩きイラスト会話集タイ/池田書店』、『みやざきの自然災害』ほか。有限会社らきカンパニー主宰。「らき」はギリシャ・クレタ島の地酒の名前です。


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