過去の空撮写真からヒントを得て、仏ロワール河畔の古城をイメージ
世界最大の貿易港として知られるオランダ第二の都市ロッテルダム。ドルトレヒトの街は、そこから南東へ約20㎞、電車に20分も乗ればアクセスできます。ホテル「ヴィラ・オーガスタス」が建つエリアは1850年頃から1900年にかけて発展した工業地帯です。1865年にコレラが大流行した後、水の浄化のために建てられた給水塔は1965年まで利用され、その後は倉庫として使われていました。
ドルトレヒト市が、この建物をなんとか再生できないものかと3人のディベロッパー(土地開発業者)に打診したところ、最初は「ノー」の返事。しかし1930年代の建物の空撮写真を見せると、フランスのロワール川の古城のようではないか! とディベロッパーたちの中にアイディアが閃き、再開発が始まりました。
もともと浄水場だった建物の周りには水路がありましたが、土が埋められていました。しかし、市にお願いして、そこにもう一度水路を作ってもらったそうです。館内には、その閃きのヒントとなった1930年代の空撮写真が飾られていました。
そして、ミッションである「外観は工業遺産のインダストリアルなイメージを残し、中に入るとパラダイス」、そんな世界観を見事に作り上げたのです。
ピーターラビットでも出てきそうな童話の世界が広がる館内
ヴィラ・オーガスタスに到着したのは夜。泊った部屋は12月のホリデーシーズンということもあって満室で、川沿いのフローティングルームでした。
全45室。客室はモダンで大変使い勝手のよい設えです。
即行、お風呂のお湯をためようと浴室に入ると、ウサギや動物、花モチーフがいっぱい。客室内のそこここに「かわいい」が詰まっていました。
ロッカールームの真っ赤な色合い、ハトのデコレーション、アイランドキッチン風の仕切りの中にあるティー&コーヒーセットなど。
訪問時は12月だったので、見られませんでしたが、春になるとチューリップ、夏は果樹や野菜がたくさん実り、収穫の時期を迎えるそうです。ホテル名はこの収穫時の8月を意味しています。庭はイタリアのルネッサンス、ベローナ様式。オーガニックガーデンは4人のガーデナーによって守られています。
240人は入る広々レストラン、ガーデン、すべてがチャーミング
年間300万人来訪、というのは、ホテルゲストのみならずレストラン客も含めての数字です。ヴィラオーガスタスの周りにはオフィスも多く、地元のランチやディナー客で賑わいます。
レストランのメニューは夏と冬で変わります。冬メニューだと、メイン料理で気になったのは、アンコウ、仔牛の煮込み、鴨、ロブスターなどです。
ドリンク類も、たとえばハーブティーなどはすぐそばのオーガニックガーデンで採れた素材が使われます。ジンジャーティーも、生姜がそのまま入っていて、体も温まり生き返りました。
レストラン内は広~いオープンキッチン。給水塔の本館とは別棟になっており、配管をむき出しにした継ぎ接ぎ的な造りで、インダストリアル感を出しつつもオシャレ。日本で例えるならば、F.O.B COOPに少し似た雰囲気というと分かりやすいかもしれません。
ここで作っている無農薬野菜類、レストランの奥には生活雑貨やキッチン用品も販売していてこちらも必見です。写真は購入したポストカード。デザイン性にあふれる欲しいものに溢れています。
冬でも素敵な川景色や給水塔のある風景が楽します!
きっと春や夏の新緑の季節はもっと美しいのでしょうが、12月の冬景色も素晴らしいものでした。筆者の部屋から見える川と冬木立の景色はとくに幻想的で、旅立つ朝に何枚もシャッターを切り続けました。
もちろん、給水塔ホテルの冬のイメージも味わいがあります。給水塔はいつ見てもこの街のシンボル。外から戻ってくるたびに「愛しいわが家!」と思えてくるから不思議です。
夜も、かつて水蒸気を放出していた4つの角のような先端部分がライトアップされて綺麗。
広告宣伝は一切行わずに、クチコミだけでここまで集客できるリノベーションホテル。日本の地方再生のお手本になりそうなアイディアがたくさん詰まっていました。
ぜひとも足を延ばしてみませんか?
住所:Oranjelaan 7, 3311 DH Dordrecht, The Netherlands
電話番号:+31 (0)78 639 31 11
レストラン営業時間
月曜~木曜 7:00~24:00
金曜 7:00~深夜1:00
土曜 8:00~深夜1:00
日曜 8:00~24:00
ショップ営業時間 8:30~22:30
HP:https://villa-augustus.nl/en/