(C)Masato Abe
草津温泉を語ることなくして
草津温泉へは多くの人が訪ねたことがあるでしょう。西の別府か東の草津か。旅のプロが選ぶ温泉ランキング(「にっぽんの温泉100選」観光経済新聞社 主催)では16年連続日本一。温泉街は散策や買い物、足湯も楽しむことができ、いつも大勢の観光客で賑わっています。
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草津は秘湯ではありませんが、温泉を語る時に草津温泉を抜きに語ることはできません。温泉の自然湧出量日本一、万病にも効くという湯力。しかも草津は雪景色が似合います。そして心も体も癒してくれるのです。
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草津温泉へは東京から直行バスがあります。また上野発の特急「草津1号」あるいは「草津3号」に乗り長野原草津口駅でバスに乗り換えて向かうルートもあります。個人的には特急列車とバスを使って行くルートが好きです。
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国道292号を草津方面へ向かう途上、道路に設置されたメロディーラインから、民謡「草津節」が流れます。「草津よいとこ一度はおいで お湯の中にもコリャ花が咲くョ」。浅間山の雪景色を遠くに見ながら、温泉への思いが高まりますね。
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30分もかからずに草津温泉バスターミナルに到着。そこから坂道を6,7分下っていけば湯畑に行きつきます。
岡本太郎がデザイン 草津のシンボル・湯畑
毎分4000リットルもの温泉が湧き出す「湯畑」に到着。草津の中央にある、草津温泉のシンボルです。周囲は旅館や土産物の売店が立ち並び、いつも観光客で賑わっています。
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湯畑とは、温泉の成分である湯の花の採取や湯温を調節する施設なのです。高温の源泉を地表や木製の樋に掛け流して冷ますことで各宿へ提供したり、樋に沈殿した湯の花を採集しています。さらに温泉は融雪にも使われます。冬は積雪も多いため町内の通行量の多い主要道路では温水の流れるパイプが地中に通り、その熱で雪を解かす「融雪道路」となっています。
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湯畑を上空から見ると可愛らしい瓢箪の形をしています。もともとの形は長方形だったとのことですが、あの芸術家・岡本太郎さんがデザインし、1973年に観光客が歩いて楽しめるスポットに生まれ変わりました。直線的な木樋と対照的な曲線を描く瓢箪型の形や、湯畑を周回出来る遊歩道などは、岡本さんのアイデアなのだそうです。
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草津温泉は「源泉主義」を謳います。加水することなく浴槽へ湯を送り、沸かしたり、循環させることはありません。源泉に入浴するので、温泉効果が直接体に取り込まれるのです。美肌効果も高いといいます。湯畑の泉質は酸性の強い含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型)。これが万病に効くという泉質なのですね。
創業420年 女性に優しい宿 望雲
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旅館 望雲は湯畑を見下ろす高台にあります。湯畑から西の河原に向かう途中の坂を上っていきます。創業は慶長4年、1599年といいますから江戸時代以前、420年前の創業になります。現在のご主人でなんと15代目だといいます。
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もともと望雲は湯畑に面して建っていたのだそうです。下の写真の湯けむりの向こうに見えるのが望雲です。戦争を超えて、先代の時に高台に移ったのだといいます。
(C)望雲
江戸時代の俳人・小林一茶に「湯けむりにふすぼりもせぬ月の貌」という句があるのだそうです。この句は望雲の七代目のもとを一茶が訪ね、再会を喜び詠んだ句だといい、七代目は雲嶺庵露白と号して草津の文化を支えた俳人だったのだそうです。
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また「弥次喜多珍道中」で知られる江戸時代の流行作家・十返舎一九も望雲を訪れ、その様子を「上州草津温泉道中」に記しているそうです。
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明るい建物ですが、佇まいがキリっとしているとでもいいましょうか、どこかしら重厚感があって歴史を感じさせる宿です。廊下にはきれいな花々が飾られていました。
(C)望雲
望雲には露天風呂を含め6つの湯舟があり2つの源泉を引いています。すべて掛け流しの温泉です。上の写真は「万代の湯」。万代鉱から源泉を引いています。
(C)望雲
上の写真は「遊山の湯」という浴室。向かって右側の湯舟と露天風呂が西の河原源泉。左が万代鉱源泉とふたつのお湯を交互に楽しめます。
(C)望雲
西の河原源泉は草津の名所である西の河原から引いている温泉です。 湯畑とともに草津を代表する古い歴史を持つ源泉。PHは2.08でお肌へのあたりがやわらかく、 お湯がなじみやすいのが特徴です。
(C)望雲
万代鉱は本白根山の奥深くで、噴出している温泉です。草津温泉の中でもマグマに近い源泉で、 そのPHは1.70とパワフルな温泉。草津の6つの源泉の中でも特に酸性で殺菌・抗炎症作用があり、肌の弱い方はピリピリするかもしれません。
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夕食は客室で頂きました。盛りつけも上品できれいです。そしてメインはすき焼き。
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温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに配膳されます。大満足でした。
おススメ 草津の湯めぐり
ちなみに草津温泉には大きなもので6つの源泉があります。湯畑、白旗、西の河原、地蔵、煮川、万代鉱。1970年に硫黄坑道から噴出した万代鉱以外は江戸時代以前から湧き出しているといいます。
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旅館やホテルを始め、共同浴場や日帰りの入浴施設など多種多様な温泉があるので、立ち寄り入浴も楽しいのです。こちらは地蔵の湯。白旗の湯と千代の湯ともに、無料で入浴できます。
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地蔵の湯のpHは2.2でほかの草津のお湯に比べてとてもまろやかでやさしいお湯の印象があります。古くから眼病に効くといわれています。
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そして上の写真は、6年前に湯畑「白旗源泉」の脇に建てられた「御座之湯」。御座之湯という名は源頼朝公が三原野に狩りに出かけた際に腰をかけた石があったことから名付けられたともいいます。入浴600円。2階の座敷で休むこともできます。
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また望雲など老舗の宿に宿泊された方におすすめなのが、宿で購入した入浴手形を使っての「和風村内湯めぐり」。手形は1000円、2年間有効です。加盟する15の老舗旅館の温泉をそれぞれ700円で楽しむことができるのです。
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こちらはその15軒の老舗のひとつ、湯畑から徒歩1分、創業明治10年の奈良屋です。伝統の湯守さんが常駐し、日々刻々とお湯の管理をしているのだといいます。
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そして草津温泉、冬場のオススメは湯畑のライトアップ。冬は空気が澄んでいる上に、お湯と外気の温度差から湧き上がる湯気もダイナミックなのです。湯気が刻々と変化していくのが見どころ。ぜひ宿に泊まって、夜の湯畑も散策してみてください。