
アウグスブルクはパワースポット?
南ドイツにあるアウグスブルクはドイツの中で、ケルン、トリーアに次ぎ、三番目に古い都市です。名前はローマの初代皇帝アウグストゥスに由来します。
街のワッペンには松の実が使われていて、市役所の中央てっぺんにも松の実がちょこんと立ってますね。

このワッペンのシンボルには色々変遷があって、昔はヒノキ系の木が描かれていたそうです。このヒノキ系の樹木にはドイツ語でLebensbaumという木があり、直訳すると「生命の木」。それがやがて葡萄の房になり、そして松の実が描かれるようになったとのこと。つまり、この松の実は豊穣のシンボルなんだそうです。

街を歩いていると、マンホールの蓋にも松の実が! アウグスブルグにはこの豊穣のシンボルが至る所に描かれているので、旧市街全体がエネルギーで満たされ、一種のパワースポットになっているのかもしれませんね。
アウグスブルクとハプスブルグ、そしてフッガー家の隆盛
市庁舎の壁にはハプスブルクの双頭の鷲が描かれています。アウグスブルクはハプスブルク家との関係が強いそうです。街の中心を南北に貫通する大通りはマキシミリアン通りといって、ハプスブルク家の中興の祖「マキシミリアン一世」に由来します。

なぜ彼の名前が街路の名前になっているのかというと、アウグスブルグ出身の大富豪、フッガー家のウルリヒ・フッガーが、マキシミリアン公がブルゴーニュ公女マリアに結婚を申し込んだ際に、衣装代などを支出したからなんだそうです。この時からフッガー家とハプスブルク家との強い絆が芽生え、そしてフッガー家の財産も次第に大きくなっていきました。
その後も、教皇や皇帝にお金を融資して、その見返りにどんどん特権を手に入れてフッガー家は成長していきました。ウルリヒの息子、ヤコブ・フッガーは後のカール5世(ハプスブルク家)が皇帝になるための選挙資金を融通し、スペインの水銀鉱脈などを手に入れ、フッガー家は最盛期を迎えます。
世界初の社会福祉住宅「フッゲライ」
大富豪に成長したフッガー家の長、ヤコブ・フッガーは、地元アウグスブルクで生活に困窮する住民のために約140戸からなる世界初の社会福祉住宅群「フッゲライ」を1521年に建てました。このフッゲライではガイドツアーが行われていて、今回、このツアーに参加してきました。
なんとこの福祉住宅は現在もフッガー家によって運営されていて、家賃は一年で88セント、約10円(光熱費は別途必要)という安さ!

住宅は都市壁のような壁に囲われていて、都市の中の小さな都市のようです。かつては夜になると門が閉ざされてしまい、雄牛という名のついた門からしかフッゲライに入る事はできなかったそうです。扉の外には今でもその名残が。Nachtklingelというのは、夜用の呼び鈴という意味ですが、このベルを鳴らして夜警さんにドアを開けてもらったそうです。

玄関の呼び鈴がかわいすぎる!
各住戸には専用の玄関があり、呼び鈴の形も様々。鋳物職人の技が光ってますね! 写真は渦巻き状の取っ手。

街灯などのない時代、夜、暗闇でも取っ手を握れば自分の家かどうかすぐ分かるように色んな形になっているそうです。引っ張るとかわいい音が鳴るんですが、現在も住民に使われているので、絶対に引かないでくださいね。

1521年に創建されたフッゲライは2021年には500周年を迎えるので、おそらく大規模なイベントが予定されているのではないかと思います。壁を伝うツタが、夏には瑞々しく、秋には素晴らしい赤に色づきます。

長い歴史と松の実パワー、そして中世に大富豪になったフッガー家のマネーパワーを随所に感じることのできるアウグスブルグ、そして世界初の福祉住宅で現在も運営されているフッゲライ。ロマンティック街道上にあるので、是非立ち寄ってみて下さい。
[All photos by 川合英介]

Eisuke Kawai
ドイツ、ミュンヘンで設計事務所に勤務。 週末と休暇を利用して旅に出る。海にいくと一緒に来る妻はケーキマイスター(ドイツでマイスター号を取得)。彼女はシティートリップには乗り気ではないので、イヤイヤついて来る二人の息子と男三人でヨーロッパと日本を駆け巡る。
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