
海に浮かぶ酪農場

その牧場は、オランダ南部の港町、ロッテルダムに存在します。こちらが、海に浮かぶ「フローティング・ファーム」(Floating Farm)です。


現在このファームでは、32頭の乳牛が暮らしています。「動物福祉、循環性、持続可能性を重視し、消費者に近い都市で健康食品を生産すること」を目指して作られたのだそう。確かに都市に近いところで食物を生産出来たら、輸送にかかるエネルギー(ガソリンや輸送中の保冷に必要な電力)を削減できるので良いことばかりですよね。オランダの、こういう発想力は素晴らしいです。

ちなみに、牛たちはずっと水上に閉じ込められている訳ではありません。定期的に、目の前の野原に放牧してもらえています。さすが「動物福祉を重視する」と宣言しているだけあり、乳牛たちの生活の質にも配慮があるようです。自由があって良かったですね。
自然エネルギーで稼働するファーム

ファームのすぐ横には、このファームの電力をまかなうソーラーパネルが浮かんでいます。ここで、搾乳機や排泄物処理、1階の事務所で必要な電力を賄っているのです。環境にも配慮していることが伺えます。

乳牛たちがいるフロアの下には、スタッフたちの事務所が。

ここに、フローティング・ファームにまつわる様々な情報が公開されています。
誕生ストーリーとしては、発起人がアメリカで発生した深刻な洪水をニュースで見て、この海上の牧場のアイディアを思いついたのだそう。そのアメリカの洪水は物流の混乱をもたらし、市内のスーパーマーケットの棚は2日で空になりました。それが多くの人に大きなパニックを引き起こしたのだとか。食べ物ではなくマスクやトイレットペーパーでしたが、最近はコロナウィルスが引き起こす買い物パニックで、日本でも似たような光景が目撃されましたね。
けれど海上に農場を作れば、都市の近くでの生産を可能にすると考えたのだそう。

ちなみにこの事務所を訪れるだけなら無料で入れますが、上の乳牛たちのスペースを見学する場合はここで入場料を支払います。入場券代わりのリストバンドも可愛いです。
新鮮で美味しいミルクの販売

ファームの事務所では、乳牛たちのミルクとヨーグルトも販売されています。どれも濃厚で美味しいんです! 特にミルクの甘さに、きっと驚きますよ。ちなみに1本750mlで1.50ユーロ(2020年3月現在、約178円)です。試飲や試食も、気軽にお願いできます。このミルクは、ロッテルダム市内のスーパーにも卸しているのだとか。

敷地内には、ミルクサーバーの設置も。近所に住んでいたら、定期的にここのミルクを購入できるんですね。羨ましいです!

この海上ファームの成功次第では、同じく海上養鶏場や海上農園などの計画も控えているのだとか。流石、オランダはチャレンジングです! これからも、この海上プロジェクトの発展を楽しみに見守りたいと思います。
[All photos by Naoko Kurata]
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