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妻の傷を治すために素人が自作した!?旅の必需品「ばんそうこう」の世界史と日本史

Posted by: 坂本正敬
掲載日: Mar 20th, 2020. 更新日: Mar 18th, 2020

旅の必需品にはいろいろとありますが、ばんそうこうを持参する人も少なくないと思います。海外でも買えますが、なんとなく日本人であれば医療機器は日本製が安心できますよね。このばんそうこう、一体どういった歴史があるのでしょうか。

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ばんそうこうの歴史は1921年に始まる


ばんそうこうと言うと、商品名は何を思い浮かべますか? 筆者はジョンソン・エンド・ジョンソンの『バンドエイド』を思い浮かべますが、筆者の母親や祖母は『サビオ』と呼んでいました。サビオとは、2002年に販売ストップとなったものの、北海道民を中心としたユーザーが強く復活を希望し、2020年4月から阿蘇製薬より復活するばんこうそうこうの商品名ですね。

他にも『リバテープ』、『カットバン』、『キズバン』など、さまざまな商品名が日本では浸透しています。これら大変な広がりを見せるばんそうこうは、そもそもどのような経緯で生まれたのでしょうか。

ばんそうこうは料理に慣れない新妻のために生まれた


ばんそうこうが生まれるまでには、人類における傷と手当ての歴史が大きく関係しています。ジョンソン・エンド・ジョンソン(米国)によると、傷と手当ての歴史はすでに古代から始まるそう。

古代エジプトでははちみつを傷にぬったり、ギリシャでは酢で傷を洗ったり、ローマでは鉛、銀、香辛料を混ぜた軟こうが使われたりしてきました。

傷の手当てに使う道具としては、後にガーゼも誕生します。傷ができれば何かを当てて処置をする人間の習慣はどんどん成熟し、1860年代には例えばそのガーゼを使って、イギリスの外科医であるジョセフ・リスターという人が、画期的な治療法を思いつきます。

外科手術の際に、血液、およびリンパ管の中に病原細菌が入り込むトラブル(敗血症)の原因となっていた傷口の化膿を防ぐために、ガーゼに石炭酸(フェノール)を殺菌剤として使用し、患者の死亡率を大幅に改善させたのですね。

バンドエイドも最初は売れなかった!?


このような傷と手当ての歴史がばんそうこうを生んだ瞬間は、1920年(大正9年)でした。綿花の買い付けの仕事をしていたアール・ディクソンというアメリカ人が、身内の傷の手当てにユニークな試みを加えます。

結婚したばかりの妻が調理中に包丁で指を切る姿を見て、家庭にあった医療用テープを長く切り、その上にガーゼの切れ端を載せ、オリジナルのばんそうこうをつくって手当てをしたのですね。

この「発明」を、アール・ディクソンは自分の上司に実演します。すると「発明」を見た上司が、ジョンソン・エンド・ジョンソンの当時の社長であるジェイムス・ウッド・ジョンソンに伝えます。このとき、ばんそうこうが世の中に誕生したのですね。

早速ジョンソン・エンド・ジョンソンは、ばんそうこうを1921年(大正10年)に商品化します。そのときから、『バンドエイド』という商品名でした。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの公式ホームページによれば、最初の年は必ずしも大ヒットにはならなかったのだとか。その理由は、あまりにも斬新すぎて、一般の人々がどのように使っていいか理解できなかったからだと考えられるそう。

しかし、医師や肉屋、薬局に営業を続ける中で、徐々に売り上げは伸びていきます。1924年(大正13年)には大量生産が可能になり、社会への広がりも加速します。

1968年(昭和43年)にはアポロ8号、およびアポロ11号に医療用キットとして搭載され、月面まで向かいました。この段階で、バンドエイドは揺るぎのない地位を確保するのですね。

日本では戦後の1948年がスタート


一方で日本では、どのような歴史をたどってきたのでしょうか。ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人が、バンドエイドを日本の市場に発売し始める時期は、1959年(昭和34年)だと日本衛生材料工業連合会の情報にあります。

しかし、それ以前に国産のばんそうこうも誕生していました。リバテープ製薬(熊本県)が1948年(昭和35年)の5月に、

<国内メーカー初の救急絆創膏の開発に成功 リバテープの商品名をもって製造販売を開始>(リバテープ製薬のホームページより引用)

とあります。同年の11月にはニチバン(東京都)も『OQ絆創膏』をリリースしています。

熊本に本社を置くリバテープ製薬のばんそうこう『リバテープ』は、今でも九州各県、沖縄の人たちにとって、ばんそうこうの呼び名として広く浸透しています。

「黒船」であるジョンソン・エンド・ジョンソンのバンドエイドが日本に入ってきて、大都市を中心に大いに市場を切り取りましたが、日本全国でばんそうこうの呼び名がこれほど異なっている理由は、日本のメーカーが先行して国内で走り出していて、そのシェアを守ったからなのですね。

以上が、ばんそうこうの歴史です。旅先で出会った人にばんそうこうをあげる・もらう際には、「ばんそうこう」を相手が何と表現するかに注目してみるといいかもしれません。その際に、呼び名の違いやばんそうこうの歴史を一緒に振り返ってみると、会話が弾むかもしれませんよ。

[参考]
サビオブランド絆創膏を復活。北海道エリアで発売開始 – 阿蘇製薬
絆創膏について – 日本衛生材料工業連合会
無菌外科手術の開拓者 ジョセフ・リスター – BD
沿革 – ニチバン
沿革・概要 – リバテープ製薬
Stick With It: 18 Fun Facts About the History of BAND-AID® Brand Adhesive Bandages – ジョンソン】エンドジョンソン

[All photos by Shutterstock.com]

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。


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