【世界ひとり飯(13)】マラケシュの「羊の脳入り壺焼き」は銭湯で調理される!

Posted by: 石黒アツシ

掲載日: Apr 29th, 2020

世界50カ国以上を一人旅した筆者が、世界で出会い心に残った料理をご紹介。今回はモロッコの古都マラケシュで食べた、羊肉の料理「タンジーヤ」です。

マラケシュへの行き方

モロッコの正式名称は「モロッコ王国」。その首都は大西洋に面したラバト。そこから南西60㎞程の海沿いに、最大都市のカサブランカがあります。カサブランカから南に200㎞の内陸に位置するのが、11世紀後半にムラービト王朝の都となったマラケシュです。

マラケシュ旧市街は1985年に世界文化遺産に登録されてます。写真は、その中心となるジャマ・エル・フナ広場、通称フナ広場。ここから入り込んでいく迷路のような旧市街は「メディナ」と呼ばれます。メディナの中には小さなお店が無数にひしめき合う巨大なマーケット「スーク」があります。

モロッコに行くには、日本からの直行便はないので、どこかで乗り継がなければなりません。この旅ではイスタンブールを経由して、カサブランカのムハンマド5世国際空港に到着し、電車に乗って6時間かけてマラケシュへ。カサブランカから国内線に乗り換える方法もあり、ヨーロッパの都市によってはマラケシュへの便もあります。

フナ広場にあるハマスの裏には・・・

フナ広場には、夕方になれば大道芸人たちが集まり、様々な食べ物や飲み物、雑貨などの屋台が建ち並んで遅くまで盛り上がります。広場の北の端、スークへの入り口わきにはハマスと呼ばれる大衆浴場があります。

ハマスのちょうど裏にあたるような路地に、こんな食堂が連なっています。ずらりと並んだ壺。何だろうなと地元の人に聞いてみると「マラケシュ名物のタンジーヤだよ」と。羊の肉を壺に入れて、それをハマスの湯を沸かすために炊く火のそばに放置して数時間調理するのだそう。地元の人は朝、自分の壺を預けて調理してもらって、夕方に受け取るのだとか。

その食堂の一軒が「Chez Lamine Hadj Mustapha」です。表には大小の壺が並び、その一つには、どうも羊のものと思われる頭部が乗っていました。

実食!羊好きにはたまらない旨味たっぷり

お店に入ろうかな、どうしようかなと、とりあえず他のお客さんの様子を見てみると、なかなかおいしそう。メニューには、「Tangia Marrakchia」と書かれていて、1kgで150MAD(モロッコディルハム)で1,600円位。500gで半額だから800円ほど。これは食べるしかないでしょうということで、入ってみました。

オーダーしてほどなく、テーブルに壺が運ばれてきました。壺には紙の蓋がついているので、それを取って目の前の皿にどっと盛ってくれます。これで500g。なかなかの量です。

店員さんが「羊のいろんな部位が入っているよ」と教えてくれました。肩肉やモモ肉のようなしっかりした肉質の部分から、バラ肉の柔らかくて脂がおいしい部分までいろいろ入っています。見た目シンプルですが、口当たりが異なる様々な肉の部位が楽しめるので飽きません。

食べ終わって、店員さんが皿を下げに来た時、「羊の脳も入ってたんだよ」とにっこり。初めて食べました。そして思い返してみれば「あのふんわりしてたとこに違いないな」と。他のもっとスタイリッシュなレストランでもタンジーヤを出すお店はありますが、必ずしも脳までは使わないんだとか。なかなか本格的なお店でした。

旅に出たら食べてみよ!

誰が言ったわけでもありませんが、「旅に出たら食べてみよ!」です。地元の人たちがおいしというものなら、食べる価値があると思います。でも、好き嫌いは人それぞれですから、口に合わなければしょうがないんですけどね。知らずに食べた羊の脳でしたが、はからずも「食を巡る冒険」となりました。

Chez Lamine Hadj Mustapha
住所:Derb Semmarine, Marrakech 40000 モロッコ
電話:+212 661-344341
営業時間:月〜日 12:00-22:00
HP:

*お店の営業状況については、新型コロナウイルスの影響で、業態や時間が変更になっている可能性があります。

[All photos by Atsushi Ishiguro]

PROFILE

石黒アツシ

Atsushi Ishiguro ライター&フォトグラファー

旅するフードフォトグラファーです。そして、食生活について考えて、レシピを開発して料理もします。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現し、みなさんと一緒に食べたいというのが、私のビジョンです。

旅するフードフォトグラファーです。そして、食生活について考えて、レシピを開発して料理もします。「おいしいものをおいしく伝えたい」をテーマに、世界のおいしいものを食べ歩き、写真におさめて、日本で再現し、みなさんと一緒に食べたいというのが、私のビジョンです。

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